企業年金制度
企業年金制度とは?
企業が、従業員のより豊かな老後生活に備えるために導入する私的年金制度のこと。国が管理する公的年金の補完として位置づけられ、高齢化の進展とともにその役割はますます重要になっています。企業年金は元来、退職給付の一形態であり、退職一時金(いわゆる退職金)の分割払いという側面もあるため、基本的に企業側が年金の原資となる掛け金を負担し、管理・運営・給付を行います。
積立金不足で支給額の減額も
適格年金廃止で制度の見直しが加速
社員の高齢化や運用利回りの低下によって、企業年金は苦境に立たされています。年金の運営が、業績低迷や財務の悪化に拍車をかけて経営を圧迫、支給額の減額や制度終了に踏み切る企業も増えています。経営危機に陥り、2010年1月19日に会社更生法の適用を申請した日本航空は、再建のネックになっていた企業年金の減額を断行。退職者で3割、現役社員で5割という大幅カットは、日本の企業年金史上で最大規模の減額となりました。
企業年金制度には大きく、将来支払う給付額を決めておく「確定給付型」と、掛け金を決めて給付額は運用実績によって変動する「確定拠出型」の二つのタイプがあります。
確定給付型の中心は、かつては税制適格退職年金(適格年金)と厚生年金基金でした。税制適格退職年金は、企業が国税庁の承認を得て、信託銀行や生命保険会社など社外金融機関と契約を結び、将来の退職金支払いのために掛け金を積み立てるしくみ。企業が積み立てた資金を金融機関が企業にかわって運用し、年金として給付します。掛け金に対する税制優遇を伴い、その分企業負担が軽減されるのが同制度の特徴ですが、一方で免税額に上限が設けられている上、給付に必要なだけ積立をする義務もないため、中小企業を中心に積立不足が多発するという構造的な問題が以前から指摘されていました。確定給付企業年金が2001年に新設されたのを機に、税制適格退職年金は2012年3月末での廃止が決定しています。
厚生年金基金は、企業が厚生年金基金という別法人を設立し、公的年金である厚生年金保険の一部を代行するとともに、基金独自の給付を上乗せして支給するしくみです。運用利回りの低下に伴って、企業にとってはこの代行部分の負担が重くなり、近年、他の年金制度へ移行する動きが相次いでいます。
先述した確定給付企業年金は、加入者に約束した額が支払えないということにならないよう、毎年給付に必要な積立金が準備できているかチェックするしくみになっています。適格年金からの移行も増えていますが、年金資産の運用が低調で積立に不足が生じたら、一定期間内に補てんしなければならないため、企業のリスク負担は大きくなります。
こうした確定給付型の制度と大きく異なるのが、もう一つのタイプの企業年金――確定拠出年金です。確定拠出年金では、企業が負担する一定額の掛け金を加入者自らが運用。将来の給付額は運用の結果次第で変動します。つまり運用リスクは加入者自身が負うことになり、企業の負担は軽減されるわけです。 適格年金廃止が迫るなか、喫緊の経営課題として年金制度の見直しを進めている企業も少なくないでしょう。各制度の特徴をよく理解して、慎重に移行先を検討する必要があります。
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