離職票
離職票とは?
従業員が退職するときに必要な書類の一つに「離職票」があります。離職票とは、従業員が退職したあとに雇用保険による失業給付(基本手当)を受けるため、ハローワークから発行される書類です。雇用保険法第7条では、事業主に離職票の発行に必要な届出を行うことが義務付けられています。この手続きを怠った事業主には、雇用保険法第83条により、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
「退職証明書」や「離職証明書」といった類似書類との違い、発行手順などを把握し、円滑に手続きを進めることが大切です。
1. 離職票・離職証明書・退職証明書の関係
離職票と離職証明書の違い
離職票が会社から退職者に渡す書類であるのに対して、離職証明書は、会社からハローワークへ提出する書類です。
離職票は退職者自身が管理する書類で、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といいます。離職票には、受給決定日や失業給付金の振込先などが記載された「離職票-1」と、退職前の賃金額や退職理由が記載された「離職票-2」の2種類があり、どちらも退職者が雇用保険による失業給付を受給するときに必要となります。離職票は、退職日から最長2週間ほどで、会社から退職者に渡されるのが一般的です。一方、離職証明書は、退職者の離職票発行を依頼するために会社からハローワークに提出する書類です。
退職者が離職票を手に入れるには、離職証明書を会社経由でハローワークへ提出する必要があります。従業員の退職が決まったら、会社は離職日の翌日から10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークへ提出することが義務付けられています。喪失届提出と同じタイミングで離職証明書を一緒に提出します。
離職証明書は、事業主控・ハローワーク提出用・雇用保険被保険者離職票の3枚複写で、そのうち1枚が退職者に渡す「離職票-2」となります。ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届と離職証明書を提出すると、「離職票-1」と「離職票-2」が発行されます。ハローワークから2枚の離職票を受け取ったら、会社から退職者に送付するという流れです。
会社は、退職者から離職票の請求を目的として離職証明書の交付を求められた場合は、必ず交付する義務があります。なお、雇用保険法施行規則第7条では、退職者が離職日に59歳以上であれば、本人の意思にかかわらず離職証明書の発行が必要と定められています。
離職票と退職証明書の違い
退職証明書は、従業員が退職するときに会社が交付するもので、会社が従業員の退職を証明するための書類です。転職先の会社などに、元の会社を退職したことを証明したい場合に使用します。離職票は様式が決まっているのに対して、退職証明書は会社によって様式が異なります。
従業員から発行希望があった場合は、必ず発行しなければならない書類です。労働基準法第22条では、退職証明書の発行義務について、遅滞なく交付しなければならないことが定められています。従業員の退職が予定されているときは、事前に発行の準備をしておくとよいでしょう。
また、同条第3項では、退職者が請求しない内容を記載してはならないと定められています。解雇の事実についてのみの証明を求められた場合は、他の事項については記載しないなどの注意が必要です。
2. 離職票発行の手順
離職票の発行は、会社からハローワークに書類を提出し、ハローワークが離職票を交付する流れで進みます。
- 退職者に発行希望を聞く
- なるべく速やかに発行する
- 会社側が離職証明書を記載する
- 離職証明書をハローワークに提出する
- 離職票を退職者に渡す
退職者に発行希望を聞く
離職票の発行について適切な対応をするために、まずは退職者に発行希望の有無を確認します。会社によっては、従業員からの依頼を待たずに手続きを行う場合もあります。退職者に発行希望を聞くときには「どんな手続きが必要になるか」「どれくらいで発行できるか」を必ず伝えます。
なるべく速やかに発行する
離職票が無いと、退職者の失業給付が支給されないため、速やかに発行しなけれあなりません。退職した日の翌日から起算して10日以内に会社が申請手続きを行い、退職者に手配します。離職票の情報を基に、ハローワークが失業給付を決定します。手続きが遅れると、失業給付が途中で打ち切られてしまう場合があるため、注意が必要です。
会社側が離職証明書を記載する
離職票の発行では、2種類の書類が必要です。
- 雇用保険被保険者資格喪失届(以下、資格喪失届)
- 雇用保険被保険者離職証明書(3枚1組)(以下、離職証明書)
離職証明書には会社側が以下の項目を記載します。
- 賃金支払い状況
- 生年月日
- 被保険者であった期間
- 離職理由等
資格喪失届や離職証明書の記載内容に基づき、失業給付の受給資格・給付日額・所定給付日数・給付制限の有無などが判断されます。
離職証明書をハローワークに提出する
会社側は、速やかにハローワークへ離職証明書と資格喪失届を提出します。離職証明書には退職者が必要事項を記入する箇所があり、内容を確認したうえで署名を行う必要があります。ハローワークに提出する前に、会社が記載した「離職理由」に異議がないことを確認し、離職者氏名欄に退職者本人が署名します。
また、ハローワークに提出する際には、「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」などのほか、離職理由を確認できる資料が必要です。「解雇」の場合は、解雇予告通知書や退職証明書、就業規則などを提出します。
離職票を退職者に渡す
ハローワークに上記の書類を提出すると、「離職票-1」と「離職票-2」が発行されます。離職票2枚を受け取ったら、郵送するなど速やかに退職者に渡します。
離職票-1は資格喪失確認通知書のことで、退職者の基本情報が記載されています。離職票-2には賃金支払状況や離職理由が記載されており、いずれも公文書に該当します。
同時に交付される「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)」と「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」は会社で保管します。
3. 離職理由について
従業員の離職理由によって失業給付の支給時期が異なるため、離職理由の判定はトラブルに発展しやすくなっています。
離職理由のトラブルとして挙げられるのが、従業員が自分の意志で退職するのか、会社側の都合によるものなのか、ということです。離職証明書では「特定受給資格者又は特定理由離職者に該当する」のか、もしくは「離職者本人の判断」なのかで分かれています。二つの間では、失業給付を受け取るための資格や失業保険の待機期間で違いがあります。
本人の判断で離職した者 | 特定受給資格者又は特定理由離職者 | |
被保険者期間 (原則11日以上働いたことがある月を1ヵ月とする) |
離職前2年間で通算12ヵ月以上 | 最短離職前の1年間で通算6ヵ月以上 |
失業保険の待機期間 | 待機期間7日間 給付制限期間2ヵ月 (※災害時、一定期間内に複数回申請した場合は異なる場合がある) |
待機期間7日間 に加えて1ヵ月の給付制限期間給付制限期間なし |
失業給付の受給日数 | 90日~最長150日 | 90日~最長330日 |
※特定受給資格者とは、倒産・解雇などにより再就職の準備までの時間がないまま離職となった者
※特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約が更新されなかった、その他やむ得ない理由で離職した者
※一般的に、離職者本人の判断が理由の場合は「自己都合」、特定受給資格者又は特定理由離職者に該当する場合は「会社都合」と呼ばれます
離職証明書の離職理由について、会社と退職者の意思が相違する場合は、ハローワークで事実関係を調査し、離職理由を判定します。離職理由でトラブルが発生すれば、社内外に悪い印象を与えるため、双方よく話し合ったうえで離職理由を決定することが大切です。
- 【参考】
- 基本手当関係参考資料|厚生労働省
- 事業主の行う雇用保険の手続き |厚生労働省
- 被保険者についての諸手続き:5 被保険者が離職したとき | 厚生労働省・徳島労働局
- 雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚生労働省
- よくあるご質問(雇用保険について)|ハローワークインターネットサービス
- 雇用保険法等改正関係Q&A|厚生労働省
- 離職票・離職証明書の記入例 | 厚生労働省
- 雇用被保険者資格喪失届の記入例 | ハローワークインターネットサービス
- 退職証明書の様式|厚生労働省
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従業員離職時の手続きは慎重に
離職票は、退職する従業員にとって、失業給付を受給するために欠かせない書類です。離職票の発行を求められたら、まず「離職証明書」を作成します。退職者の収入にかかわるものなので、慎重な対応が必要です。
離職証明書の発行や離職票の交付については、早めに準備して、不備やトラブルがないように手続きを行います。「発行が遅れている」「退職理由が事実と異なる」ということがあれば、退職者にネガティブな印象を与えるだけでなく、会社の信用にもかかわります。トラブルを避けるためには、退職者に離職票について十分に説明することが必要です。
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