VUCA時代の人材育成に必要な三つの要素
VUCAとは「現在の社会経済環境が極めて予測困難である」という認識を表します。先の見えない時代において、企業が生き残っていくためには、人材育成をおろそかにしてはいけません。VUCA時代の人材育成において、代表的な三つの要素を見ていきます。
レジリエンス
レジリエンス(resilience)は「復元力」や「弾力」などと訳され、具体的には「ストレスに反発する力」や、「困難な状況の中にあっても柔軟に粘り強く考え、うまく適応して乗り切る力」と定義されます。戦後、深いトラウマを負った人たちについて追跡調査することにより判明した要素です。
2013年のダボス会議では「レジリエント・ダイナミズム」が大きなテーマとなりました。2008年のリーマンショックは世界的な金融危機をもたらし、その後、各国は状況が激変した際に備え、レジリエンスをいかに高めるかを目標に取り組んできました。会議では「レジリエンスが高い国ほど、国際競争力も高い」という調査結果も発表されています。
このような背景もあり、近年、企業がレジリエンスに関する研修を行うケースが増えつつあります。レジリエンスに関する研修では、ビジネスにおいて困難に見舞われた場合を仮定し、どのように対処すべきかなどを学びます。
パーソナライズ
VUCAの時代においては、多様な人材のパフォーマンスをしっかりと発揮できる人材育成が重要です。人材育成を考えるときに、従業員を「集団」として捉えるのではなく、「個」として捉え、向き合うパーソナライズの観点が求められます。
価値観が多様化した現代において、個々人が求めるニーズや描くキャリアパスはそれぞれ異なります。個々人の持つスキルや特性を把握し、かつモチベーションを維持・向上させるために、人材育成においてもパーソナライズの視点が欠かせません。
ソニーグループでは、人材を「群」ではなく「個」として捉えています。同社では「強い意志と自主性・成長意欲を持った個性あふれる社員一人ひとりに寄り添うことで、社員の持つ力が最大限に発揮される」という、個性を尊重するメッセージを発信しています。
自社が従業員に提供する価値(EVP:Employee Value Proposition)を明確にし、ダイバーシティを推進するために、「ダイバーシティウィーク」というイベントをグローバルに展開しています。またエンゲージメント調査を年に1回開催、従業員エンゲージメントをマネジメントの評価にも取り入れています。
キャリアの視点を持つ
先行きの見えないVUCAの時代だからこそ、従業員のキャリアに対して、より一層目を向ける必要があります。終身雇用、年功序列といった旧来型の雇用スタイルは崩れつつあり、従業員自らがキャリアプランを持ち、スキルや能力を磨いていくことが重要です。
また、企業はそれを全面的に支援しなければなりません。キャリア支援室などを設置し、従業員が気軽に相談できる機会を設けたり、社内外での研修を行いスキルアップの機会を確保したりするなどの取り組みが必要になるでしょう。また、社内公募制度や社内インターンなど、従業員が公平に挑戦できる環境を整備することも重要です。
VUCA時代においては、従業員の自立的かつ継続的な成長の支援について、企業は一段と力を入れる必要があるでしょう。
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VUCA
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