ダニング=クルーガー効果
ダニング=クルーガー効果とは?
「ダニング=クルーガー効果」とは、認知バイアスの一種で、能力の低い人ほど自らを過大評価してしまう傾向のこと。自分の能力をメタ認知できず、全体のなかでの自らの適格性を正しく査定できないことにより生じるもので、米国コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって定義されました。二人の論文は、2000年のイグノーベル賞(ノーベル賞のパロディーで、人々を笑わせ、考えさせる業績に与えられる賞)で心理学賞を受賞しました。
ダニング=クルーガー効果にならないためには
客観性と批判的思考でメタ認知の強化を
ダニング=クルーガー効果が定義されたのはつい最近のことですが、優越の錯覚についての言及は歴史の中でもたびたびありました。古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、自分に知恵があると思い込んでいる人よりも、自分が知らないことを自覚している人のほうに知恵がある「無知の知」を説いています。また、古代中国の孔子も「知るということは、知っていることを知っている、知らないことを知らないと認めることだ」と、論語のなかで述べています。
能力が低い人ほど自らを過大評価してしまうという現象は、ダニングとクルーガーの二人が行った実験のなかからもわかります。二人は学生たちに「自分のユーモアのセンスや論理的思考は同世代の人と比べて、どのあたりのポジションにいると思うか」と聞きました。すると、成績がよい学生ほど自分の順位を正しく、もしくはわずかに低く見積もり、成績が悪い学生ほど高く見積もるという傾向が出ました。メタ認知ができる人は、自分ができることは他人もある程度できるだろうと、俯瞰して判断しているのです。
職場に思い当たる人はいるでしょうか。あるいは、あなた自身がこの傾向に当てはまるでしょうか。しかし、ダニング=クルーガー効果は悪いことばかりではありません。いわば「根拠のない自信」は、自己肯定感や自己効力感を保ち、行動に対してよい結果が生じやすくなります。
それでも、メタ認知ができずに痛々しい言動をしてしまうことは避けたいもの。そのためには、客観的なデータや評価に触れる機会を増やして、認知のゆがみを正し、的確なスタート地点を把握することが大切です。また、クリティカルシンキング(批判的思考)を学ぶことも有効です。一つの考え方に対して、他の視点はないだろうかと疑いの目を持つことで、ダニング=クルーガー効果のような認知バイアスを是正させることができます。
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