世界中のチームワークを良くしたい――
“経営の神様”の言葉を胸に日本一から世界一へ
サイボウズ株式会社代表取締役社長
青野慶久さん
世界中のコンペティターに「真似できない」と言わせたい
青野社長はチームに最適なコラボレーションサービスを生み出し、日本企業のチームワークに革新的な進化をもたらした「イノベーター」です。イノベーティブな仕事を可能にする秘訣はありますか。
僕が今までやってきたことより、新しいサイボウズがこれからやろうとしていることのほうがはるかにイノベーティブだと思いますよ。楽しみな人材も育ってきていますしね。今弊社では、クラウド上にチームワークのプラットフォームを構築しようとしています。今までなら会社の中でチームを組むしかなかったのが、クラウドに上がった瞬間、企業や組織の枠を超えて、チームを最適構成することができます。クラウドを使ったチームワークで、たとえば介護ビジネスを進化させようというプロジェクトもあります。介護サービスを受ける患者さんを中心に、施設スタッフだけでなく、家族や病院、自治体、地域のボランティアまでがチームを組んでケアにあたれば、より効果的なサービスを提供することができるでしょう。
組織を超えた人のつながり、それも「チーム」なんですね。
「患者さんにいきいきと過ごしてもらう」という共通の目標で結ばれたチームです。まず目標ありき――それが本来のチームのあり方なんですよ。このクラウドプラットフォームは間もなく完成する予定ですが、じゃあ、なぜ僕たちみたいな小さな企業にこういうイノベーティブなことができるのかというと、一つだけ言えるのは、やはり志をグループウェアに“絞りこんだ”からだと思いますね。ダイソンという掃除機で有名な会社があるでしょう。僕、大好きなんですけどね。掃除機へのこだわりが“異常”じゃないですか(笑)。ダイソンの社員にはきっと「世界一の掃除機を創る」と志を立てた人が多いんじゃないでしょうか。
絞りこんで、絞りこんで、世界一を目指す。イノベーティブな仕事には、そういうこだわりが絶対に欠かせないと思います。僕たちもすごいものを創りたい、世界中のコンペティターに絶対にまねできないと言わせたいんです。5年ほど前まではとても勝てないと思っていたアメリカの業界でも、今、僕たちと同じレベルのソフトを創っている会社はないでしょう。気がついたら、技術的にはいつの間にか抜いていたんです。
国内グループウェア市場で、御社は、欧米の強豪を抑えて6年連続でトップシェアを維持しています。ビジネスソフト業界をどう見ていらっしゃいますか。
基本、この市場は欧米企業に席巻されています。ゲームソフトならともかく、ビジネスソフトで世界的に有名な日本の企業や製品は皆無でしょう。なぜ日本が勝てないのかというと簡単な話で、彼我の差はそのまま人の差なんです。欧米では、トップ・オブ・トップの天才が真剣に、徹底的に、圧倒的な世界一を目指して、ソフトウェアビジネスに取り組んでいる。野球で言うとエースで4番ばかりがこの業界に集まって、しのぎを削っているんですよ。日本でエースや4番はどこへ行くかというと、やっぱりトヨタや松下でしょう。悔しいけれど現段階では、人材の差は否めませんね。
それでも青野社長は、明確な目標を掲げて社内のチーム力を引き出し、次のイノベーションが生まれやすい環境を絶えず整えていらっしゃいますね。イノベーターたるゆえんと拝察いたしました。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
製品の開発にせよ、プロモーションにせよ、あるいは社内のさまざまな制度設計にせよ、サイボウズで新しく行われることは、基本的にすべて社員の発案なんです。たとえば誰かが「こういう人事制度があればいいのに」と言い出す。するとその声を人事部が拾い、興味のあるメンバーとワークショップをくり返しながら固めて、最終的に僕が「行け」という。本当に「行け」と言うだけなんですよ。自分ではあまり考えないし、逆に考えて提案すると却下されるんです。「青野さん、現場が見えていませんね」なんて言われて(笑)。結局、答えはみんなが知っているんです。どうすれば会社がもっと良くなるか、楽しく働けるようになるか、チームのメンバーに聞いて、答えを出してもらえばいい。面白いことは、周りのみんなが知っていると思いますよ。
社名 | サイボウズ株式会社(Cybozu, Inc.) |
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本社所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽1-4-14 後楽森ビル12F |
事業内容 | インターネット/イントラネット用ソフトウェアの開発、販売 |
設立 | 1997年8月8日 |
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。