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インタビュー

健康経営を加速する「コラボヘルス」という新発想
企業と健保が強みを活かしあう協働の仕組みとは[ 2/2ページ ]

グラクソ・スミスクライン健康保険組合 常務理事 鵜飼 雅信氏 / グラクソ・スミスクライン健康保険組合 事務長 住田 規行氏

費用対効果の高い保健事業は“身の丈”に応じた計画から

―― 健保側は健診データに基づくエビデンスを持っているのに対して、企業側は上司・部下のライン機能や産業保健スタッフといった人的資源を持っており、互いに連携・協働することが重要なのですね。

鵜飼:そのとおりです。一般的に、大企業と、その母体企業の従業員と家族が加入している単一型健康保険組合とは、従業員と健保の距離感が近く、お互いの顔が見えやすいので、連携には都合がいい。特に当社のように従業員が約3000人強で、その家族が5000人弱ぐらいの規模だとすごくやりやすいんですよ。一方で、同業・同種の事業所によって組織された総合型健康保険組合や中小企業の加入が多い協会けんぽの場合は、どうしても母体企業との関係が薄くなり、連携・協働の範囲は限定されがちです。企業側も、各社が同じ健保に対して「うちはこういうルールでやっているので、健保もそれに合わせてください」と、個別に要請するわけにはいきませんからね。

住田:確かに、単一型健保は母体企業との距離が近く、何かと連携しやすいというメリットがありますが、コラボヘルスにおける企業と健保との距離感は、遠くてもよくないし、逆にあまり近すぎてもよくないと言われます。その背景としては、企業と健保とでは、健康に関する立場に少し違いがあることが影響しているのかもしれません。健保側は社員とその家族への視点が強いのではないでしょうか。

鵜飼雅信さん 住田規行さん インタビューPhoto

鵜飼:確かにそうですね。健保は健康の維持・増進を目的とし、それに特化している組織ですが、人事部の方は労務管理やその他幅広いテーマを業務で扱っています。そこはお互い背景を理解しあって議論を進めていかなければならないと思います。健保にはこんなデータがあって、分析の結果、こういうことがわかりましたという情報を、人事部の労務担当者に伝えて活用を促すのはいいのですが、なるべく相手にとって“重く”なりすぎないよう、適切な形で提供する配慮が求められます。企業と健保の距離感というのは、そういうことだと思います。

―― 産業医をはじめ、産業保健スタッフの役割についてはいかがですか。

鵜飼:安衛法によって、従業員50人以上の事業所には産業医を設置することが義務付けられていますが、“義務だから置いている”というだけでは、「健康経営」に取り組む体制・機能として十分ではありません。各地の事業所の産業医や産業保健スタッフを統括する司令塔的なポジションとして、本社に「統括産業医」を設置することが必要だと、私たちは考えています。「統括産業医」に求められるのは、健康経営に関する意思決定者、つまり経営陣との緊密なコミュニケーションや、企業の健康管理方針・ルール策定への参画、全社産業保健スタッフの採用・育成・意思疎通を主導するなどの機能です。メリットの一つとして、全国各地に散らばる有所見者への産業医面談がとてもやりやすくなり、健保から統括産業医を通じて、各地の産業医にアプローチする手法ができるわけです。

住田:このことも「コラボヘルス」の一つのあり方でしょうね。とはいえ、こうした専門職スタッフの整備においても、あるいはデータの分析・活用においても、企業や健保の規模によって、取り組みの差が生じることはやむをえません。政府も、費用対効果の高い保健事業を実施するためには、各企業、各健保が「身の丈」にあわせた計画を策定することが大切だとしています。健保においてはデータヘルス計画の“松・竹・梅”のどこを目指すのか。さまざまなモデル事業なども紹介されており、各社健保が適切な目標を設定する事になります。

健康な社員こそが健全な会社や社会をつくる

―― グラクソ・スミスクライン健康保険組合では、具体的にどのような取り組みを行われているのでしょうか。

鵜飼:2013年から「ヘルスケアポイント」(健康ポイント)制度を導入しました。これは従業員のセルフケアを促し、支援する仕組みで、(1)成果に応じたポイント(健診結果が良かった人、健診結果が改善された人)を付与するプログラムと、(2)努力に応じたポイント(春と秋に実施するキャンペーンで課題となる生活習慣を改善できた人など)を付与するプログラムの、二つのコースからなる取り組みです。ポイントは1ポイント=1円とし、健康グッズやさまざまなレジャー用品などと交換できるようにしています。

住田:現在、積極的に利用している社員は全体の4分の1ぐらいです。利用する人はものすごく利用するけれど、利用しない人はまったく利用していません。そのような方にどのようにアプローチするかが課題であり、人事部の方とも一緒に取り組んでいきたいと考えています。

―― 企業が健保と連携して「健康経営」を取り組むうえで、人事はどのようなことに留意すべきでしょうか。アドバイスをお願いいたします。

鵜飼:健保が持っているデータを、もっともっと活用していただきたい。それに尽きますね。健保がどういう情報を持っているのか、あまり知られていないのかもしれません。もちろん一人ひとりの健康・医療情報は個人情報ですから、そのまま提供することはできませんが、たとえばある社員が病気で休んだときは健保の情報を何らかの形で共有し、復帰後の受け入れ体制や就業面の配慮に活かしてほしいと思います。

住田:人材に関わる重要なデータは、人事にもたくさんあると思います。健保が持っているデータと、会社や人事が持っているデータをつきあわせて分析してみると、プレゼンティーイズムによる損失の実態が明らかになったように、いままでは見えなかったことが次々と“見える化”していきます。企業と健保、人事と健保、お互いのもつ資源や強みを社員の健康のために「コラボヘルス」することで、組織はもっと強くなれるはずです。

鵜飼:健康な社員こそが健全な会社や社会をつくります。企業と健康保険組合が連携・協働することで、健全な社会を実現していきましょう。

鵜飼雅信さん 住田規行さん インタビューPhoto

 


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