人事システムが人材マネジメントの基盤を作る!
~株式会社常陽銀行の「POSITIVE」導入に見る、人材力「可視化」の狙い
株式会社常陽銀行 人事部 人事グループ 調査役
横田 貴之さん

近年、地方は少子高齢化が一段と進み、地方の企業は人材不足の状況に置かれ、厳しい経営環境にあります。そのような中で地域経済をけん引する地方銀行は、顧客の課題を解決するために、きめ細かなコンサルタント営業を行う必要があり、そのためにも効果的な人事施策によって人材を活用していかなければなりません。その際にカギを握るのが、人材マネジメントの基盤となる人事システムです。茨城県に本店を置く常陽銀行では、従業員の持つ能力・スキルを可視化し、適材適所の人事管理を行うため、2015年より、人事・給与・就業管理だけでなく、タレントマネジメント支援など広範な機能を網羅した人事システム「POSITIVE(ポジティブ)」を導入しました。導入の背景や経緯、活用の状況などについて、同行の人事情報システム担当者である横田貴之さんに、詳しいお話を伺いました。

「適材適所」を実現するために、人事システムの更改が不可欠だった

―― 地方銀行を取り巻く市場環境や地方銀行が抱える課題を、どのように捉えていますか。

現在、アベノミクスの下、国を挙げて金融財政、産業、地域の成長に取り組んでいます。その中で地方銀行には、「地域経済を支え、リードすること」が求められています。当行は「健全・協創・地域と共に」という経営理念の下、「目指す姿」として「地域の未来を協創するベストパートナーバンク」をスローガンとして掲げ、2014年から第12次中期経営計画を展開しています。近年、「地方創生」というフレーズを耳にされると思いますが、これこそがまさに今、地方銀行に求められているテーマ。そして、少子高齢化の進展、地域経済の衰退などの影響を直に受け、活力が減退した地方企業をいかに活性化させるかが、私たちのミッションなのです。

地方銀行は預金や貸出金だけではなく、総合金融サービス業としてのさまざまな機能を地域のお客様に提供・還元することにより、社会構造や経済構造などの環境変化に伴う「地域の課題」を解決していく必要があります。その「地域の課題」が今、変化しています。

以前は茨城県で高い「ポテンシャル」を持った都市が北部から南部まで平均的に存在していましたが、現在、それは特定の地域に集中する傾向にあります。本来なら、全ての地域に活力があることが望ましいのですが、交通インフラの整備状況や主要都市へのアクセスのしやすさ等、生活基盤として魅力が高い特定の地域・都市に人や企業が集中してしまい、結果として活力ある地域が一部の地域に限定されるといった傾向はどの地方でも同様であり、似た課題を抱えています。

―― そのような社会状況の中で、常陽銀行としてどのような人事戦略・人材活用をお考えですか。

基本戦略の一つに「人材ポートフォリオの再構築」を掲げています。戦略遂行に必要な人材像やスキルを明確にし、組織的な人材育成の強化と、総合金融サービスを展開していく上での人材の活躍機会の拡大を図り、必要な人材の確保を図ろうとするものです。

具体的な施策として、営業プロフェッショナルの育成や女性役付者の増加、自発的に自己啓発を行う仕組み作りなどに取り組み、性別や世代を問わず、従業員の活躍機会を拡大していこうとしています。その結果、金融機関として地域のお客様により密着したきめ細かいコンサルティング営業が実現できると考えています。

そのための課題が、今いる従業員の力がどのようなものか、具体的に把握することです。個々人が持っている能力・スキルを分かりやすく表現することによって、現在、当行にとってどういう人材が不足しているのか、または過剰なのかを明確にしようと考えています。また現在は人員が非常に限られた状況にあるので、一人ひとりが持つ能力・スキルを把握し、最大限に生かせるような、人材育成・活用の枠組みを検討する必要があります。

横田貴之さん インタビューの様子

―― 能力・スキルの可視化を行うようになる具体的なきっかけがあったのでしょうか。

「自分の能力・スキル、強みと実際の担当業務とのミスマッチ」を訴える従業員が増えてきたことが一つの要因として挙げられます。このミスマッチの発生により「仕事に対するモチベーションの低下」を招き、最悪の場合「退職」という結果に繋がってしまうことは、企業にとって大きな損失であり大きな問題であると言えます。

会社としては担当業務や異動歴などの「履歴」、あるいは研修の受講状況や保有する資格などの情報を元に人事異動を行っていますが、具体的に人としての能力を把握する指標はありません。その結果、当行においても本人の保有する能力やスキルと実際の業務とのミスマッチが発生するようになり、仕事に対するモチベーションの低下を招いていました。こうした現実を踏まえ、今後は各人が保有する強み・弱み、能力・スキルなど具体的に把握して、会社全体で適材適所を考え、実現する必要性を強く感じました。

当行では、1990年代のバブル崩壊後、採用を控えた時期もあり、人員が潤沢にいるわけではありません。限られたマンパワーの中で、生産性を高めていくことが求められています。そのような意味からも、適材適所を実現しなければなりません。

課題解決のために、能力・スキルの可視化を標準仕様で実装した「POSITIVE」を導入

―― その課題を解決するために、人事システムを更改することになったのでしょうか。

更改の理由としては、業務効率化、システムとしての汎用性の確保、老朽化対策などもありましたが、「人事情報の共有化」や「人材力の可視化」の実現といった課題を解決するためには、人事システムの更改が必要だったのです。2011年9月から検討を開始し、約1年半の期間をかけていろいろな人事システムを比較検討したうえで、2013年2月に「POSITIVE」の導入を決定、4月から具体的な要件定義の作業に入りました。

以前の人事システムは当行が独自に開発したもので、1996年にカットオーバーし、その後、10数年使い続けてきたシステムです。問題は、あくまで人事部内で限定して使われるものであり、全社的に開かれたシステムでなかったことです。支店長など本来、人事管理を行う人たちが利用できるシステムではなかったため、人事情報の活用は限定的であり、有効活用できているとは言えませんでした。

また、パートタイマーは別のシステムで管理していたこともあり、従業員の人事情報が、一元的になされておらず、人事情報の確認に時間がかかるという問題もありました。

さらに各部署からの申請類は全て紙ベースで行われていたため、各部署から人事関連の事務作業が負担だとの声が数多く寄せられていました。しかし、システム自体が閉鎖されていたので、どうしようもない状態だったのです。

保守体制と老朽化の観点からは、旧システムは独自のシステムとして構築したもので、保守メンテナンスを行う専属要員を確保せざるを得ず、10数年前のシステムということもあって、保守ベンダー側の専属要員確保も困難になる見通しがありました。

横田貴之さん インタビューの様子

―― 更改するに当たり、人事システムにはどのような要件を求めたのでしょうか。

まずは開かれたシステムにしなければならないということが要件でした。ネットワークを介して、全ての従業員が利用できること。そして、利便性が高いこと、汎用性や将来性のあるシステムであることを求め、システム導入を検討しました。

とはいえ、現在販売されている人事関連のシステムはほぼ全てがパッケージ化され、ネットワークを介しての申請や情報閲覧などは可能になっています。ですから当行としては、多くの従業員にとって、操作性やメニュー項目のデザイン性など、ユーザー側の利便性を重視しました。それと、今後の機能の拡張を踏まえた汎用性が高いかどうかという点。また、法改正などを含め、新たなシステム開発の都度発生する開発コストを抑えたいという思いもあり、できる限りパッケージの基本部分のみで課題を解決できるシステムを求めていました。

―― そうした中で、なぜ「POSITIVE」を選定されたのですか。

7社のシステムを比較検討しましたが、その中で「POSITIVE」を選んだのは、まず画面設計が他社と比較してシンプルで分かりやすかったこと。情報の閲覧や申請までのルートが分かりやすいことは、利用者側の利便性向上につながります。

そして、能力やスキルを可視化できるツールが、「標準仕様で実装」されていたことが大きかった。今後、当行として必要となるであろうと思われる機能を保有しており、システムとして先を見据えた対応を行っていると思ったわけです。このような機能を「標準仕様で実装」している製品は他社に少なく、将来性に大きな期待が持てたことが選定のポイントとなりました。

また、ほかの地方銀行の担当者と情報交換をする中で、「システムを入れてからが問題だ」ということをよく聞きました。要は、将来的にシステムの仕様を理解している保守要員がいなくなることがリスクである、ということです。ですからパッケージの基本部分には手を入れたくないと考えていました。パッケージの標準機能だけで希望する要件を満たせることができるかが、選定の中で大きなウエートを占めていたのです。人事部にシステムの専属要員がいないことが望ましいわけで、その点、既に「POSITIVE」を導入している他行では、カスタマイズしているケースが少なく、電通国際情報サービスさんには組織としてのサポート体制面も安心して任せられると感じました。
また法改正についても新たなコストが発生することなく対応いただけることも魅力でした。

「人材力」を可視化することで、PDCAが機能する

―― 「POSITIVE」の導入により、人材マネジメントのPDCAサイクルがどのように変わっているのでしょうか。

現在、導入して約1年半が過ぎたところです。システムが大きく変わったことで、今までは操作方法の把握やそれまで委託していた給与計算などのルーティン業務の対応に追われていました。そのため、次のステップになかなか踏み出せていないのですが、人材マネジメントのPDCAサイクルについては、これから大きく変化していく部分だと思っています。

例えば、PDCAの「P(PLAN)」について言うと、今まで委託していた給与計算業務では、委託先から断片的な情報しかもらえていませんでした。それが今回の「POSITIVE」導入により、人件費が非常に見えやすくなりました。何かを計画しようとした時、人件費面での施策の立てやすさが、以前と比べて格段に向上し、ある施策を行った結果、人件費というコスト面での変化についてデータを用いた分析が非常に容易になったのです。

横田貴之さん インタビューの様子

―― 費用対効果が、はっきりわかるようになったわけですね。

今までは、何か施策を実施しても、結果の分析には難しい面がありました。PDCAの「P(Plan)」「D(Do)」まではできても、「C(Check)」と「A(Action)」が満足に行えていなかったのです。特に、Checkするためのデータには課題を抱えていました。
今のところは人件費に関する部分で「POSITIVE」導入の効果を感じていますが、それだけにとどまらせるつもりはありません。例えば、ある施策を展開したことによる、人の能力の変化を見るということもできるはずです。人の能力を開発するために、実施した施策がどう機能したのか、それをチェック・確認して、次の展開に結び付ける。これが本来あるべき人事部としてのPDCAです。今は新しいシステムに慣れる段階なのでそこまでは進んでいませんが、これから「POSITIVE」」を有効に活用し、PDCAサイクルをよい方向に変化させていきたいと考えています。

そのためにも、人の頭の中にある知見だけではなく、いろいろな施策を実行して得られた「人材力」データ(成果を出す人材の要件・評価点など)を積み上げて、それを明確な言葉で定義し、指標化していく作業が欠かせません。特に金融機関の場合、人と人とのつながり・関係性で行われる仕事が多く、この部分をいかに人材要件として可視化していくかがポイントです。

確かな戦略遂行のために、人事システムには「柔軟性」が不可欠

―― 今後、具体的には「POSITIVE」をどのように活用し、人事戦略全体に生かしていこうとお考えですか。

まずは、まだ電子化されていない申請書類を全て電子化し、完全なペーパーレス化を実現すること。これによって、業務効率化を推し進めていきたいと考えています。そして、先ほどから述べている能力・スキルの可視化。これについての要件定義を実施し、人事システム上でレーダーグラフやマッピング機能を用いた可視化を実現し、人員配置上の参考指標として活用していく考えです。

今後、地方では更なる人口減少が見込まれます。少子高齢化の進展はもちろんのこと、地方に戻って就職しようとする若者の減少により、地方の企業にとって有力な人員を確保することは今後更に厳しさを増すことと思います。その意味でも、現有の限られた人材資源(能力・スキル)をフル活用していくためには、「POSITIVE」のような人事システムが必要です。

金融機関の場合、人がいないと支店が回りません。経営上、一定の採用人数の確保は必須ですが、従業員の質を落とすわけにはいきません。量を確保し、質を担保した採用を実現するためには、自社が求める人材像として、漠然とした要件ではなく、人事システムを活用し、より具体的な要件(人材スペック)を打ち出すことで、採用する側とされる側が共に理解し、合意できる採用選考が必要となります。そうすることで、求める人材との精度の高いマッチングが図られ、採用力の向上につながるように思います。

―― では、今後、人事システムにどのようなことを期待しますか。

今後の人事システムには、より「柔軟性」が求められると思います。各事業所、地域でどういう能力・スキルを持った人が不足しているのか、または過剰なのかを把握するためには、各事業所・地域といった母集団を一つの単位として考えなくてはならないのです。その上で、そこに投入すべき人員数や人材力がどの程度必要なのか、視覚的に表示させるような機能を実現する必要があります。これが的確にできていないと、本当に必要とされる人がその事業所・地域に赴任できているかどうかが分かりません。

そのためには、地域の特性やお客様の属性、取引先数や来店客数など、人事以外の部署が保有するさまざまなデータが必要となります。このように考えると、人事システムはどのような形式のデータが、どのような部署から来たとしても、簡単に投入できる「柔軟性」を、ほかのどのシステムよりも保持していなければなりません。あらゆるデータを吸収し、あらゆる角度から一元的にデータを閲覧・活用できて、初めて人事戦略上において、利用価値のある人事システムになり得るのではないでしょうか。そのことを、今後の人事システムに期待しています。

経営者や人事部は「従業員の持つ能力」を見極めたいと思っています。そして、正しい人事評価や適材適所の人事異動をしたいと考えているわけです。ただ、誰が見ても納得できるものは難しいでしょう。そして、最終的に判断を下すのはシステムではなく、あくまで人なのです。その意味でも、人が判断をする際に有用となる「参考指標」が必要です。その精度を高めていくことが、これからの人事システムの大きな課題だと思います。

これまで、組織内で人から人へと脈々と受け継がれてきた“あうん”の判断基準(暗黙知)があったのかもしれませんが、環境変化の激しい現在では、もはやそれだけでは不十分です。人事システムに、判断の根拠になる情報(形式知)を組み込まないと、適切な選択ができません。これからの人事には、可視化・指標化するツールとして、人事システムの活用が必要不可欠なのです。

―― 今回、導入した「POSITIVE」は、まさにその期待に応えようとしているわけですね。人事システムが、今後さらに人事戦略上の重要なインフラになることが、よく分かりました。本日はありがとうございました。

株式会社常陽銀行 本社
■ 会社情報
社名 株式会社常陽銀行
代表者 取締役頭取 寺門 一義
本店所在地 茨城県水戸市南町2丁目5番5号
URL http://www.joyobank.co.jp/
設立 1935年7月30日
預金 7兆7,836億円
貸出金 5兆7,762億円
資本金 851億円
従業員数 3,744人

(平成27年9月30日現在)

協賛企業
株式会社電通国際情報サービス
株式会社電通国際情報サービス ロゴ
1975 年の設立当初から顧客企業のビジネスパートナーとして、コンサルティングからシステムの企画・設計・開発・運用・メンテナンスまで一貫したトータルソリューションを提供してきました。IT Solution Innovator をビジョンとし、人事ソリューションをはじめ、グループ経営・連結会計、ERP、金融機関向けや製品開発、マーケティングソリューション、クラウドサービスなど、幅広い分野で積極的な事業展開を図っております。
POSITIVEの製品サイトはこちら

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