2015年7月11日、東京ビックサイトでインターンシップイベント「キャリタス就活フォーラム インターンシップ&仕事研究」が開催されました。当日は官公庁のほか、多種多様な業界から60社を超える企業が出展。多くの学生が会場に詰め掛けました。イベント当日、『日本の人事部』編集部では、出展企業や参加した学生を取材。「今、どのようなインターンシップが行われているのか?」「2017年度採用に向けた企業の現状と課題とは何か?」「学生はどのような視点でインターンシップを選ぶのか?」など、新卒採用に関する“生の声”を聞きました。
イベントに出展することで、企業は何をつかんだのか?
数多くの出展企業の中から、業種・業態が異なる日清食品ホールディングス、安川電機、マルイチ産商という3社の担当者の方々に、イベントに参加した感想をうかがいました。それぞれのお話から、企業が直面している採用に関する課題と、そのための対策を知ることができました。
5日間に及ぶマーケティングの仕事を経験することで、日清食品を知ってもらう
日清食品ホールディングス株式会社 人事部 主任 土居 仁さん
日清食品ホールディングスのインターンシップは、5日間をかけて行う「Work as a Creator」。マーケティング職として当社グループの商品開発メソッドを知った上で、商品企画、戦略立案を体験してもらうというものです。まずは日清食品グループのマーケティングとは何たるかを知った上でグループワークを行い、最終的に役員に対してプレゼンテーションをしてもらいます。このような内容にしたのは、日清食品グループの商品開発においてマーケティング部が重要な役割を果たすからです。
インターンシップの5日間は、2週間程度の間で1日、3日、1日と三つのプロセスに分かれます。
初日はインプットの日。東京本社でマーケティング部長をはじめ、ブランドマネージャーから日清食品グループの商品開発メソッドを注入、商品企画に役立つフレームワークの伝授も行います。それを一旦持ち帰って、各自で商品企画、戦略をまとめた上で、次の3日間に備えます。3日間は長野県にある当社の研修施設に合宿してグループワークを行います。合宿には現在活躍中のグループ各社のマーケターがアドバイザーとして参加し、学生とともに商品企画、戦略を練り上げていきます。そして最終日は東京本社で、役員への企画提案プレゼンに臨みます。
学生にとっては商品開発の現場で奮闘している現場社員から直接厳しい指摘を受けることができるという点で刺激があり、私たちにとっては学生の自由な発想への驚きがあり、双方にとって大きな成長の機会と言えます。
2016年度新卒の採用活動は選考のタイミングが変更になり、優秀な学生に対して当社をどうブランディングしていくのかは大変重要な課題でした。その上でインターンシップは非常に有効な手段と言えます。実際、当社のマーケティング担当者に会ってもらった学生からは「こういう人と一緒に働きたい」という感想を多く聞くことができました。
5日間のインターンシップは多くの人数を対象にすることはできませんが、それだけに私たちも集中して学生に接する事ができます。優秀な学生であるほど情報発信力も高く、間接的に当社のインターンシップのブランディングにつながると考えています。
今回のようなイベントで、学生が熱心に企業を研究することは、非常にいいことだと思います。いろいろな企業や業界を見ていく中で、面白い発見や気づきを得ることが大切だからです。学生にとって、食品業界は人気のある業界の一つですが、会社によってカラーも違います。表面的な部分ではなく、対面で企業の深い部分を知ってもらったり、これまで知らなかった側面に気づいてもらうことができるのが、こうしたイベントの良さだと思います。
目的に合わせて、「1Dayインターン」と「長期インターン」を二本立てで実施
株式会社安川電機 東京支社 管理部 総務グループ 主任 小野塚 岳文さん
安川電機では、「1Dayインターン」と「長期インターン」との二本立てでインターンシップを実施しています。
「1Dayインターン」は業界説明会と事業所見学会を行い、仕事を進める基本的な考え方を学んだ後にグループワークを行うことで、会社の新規ビジネス展開を考えてもらうという内容。
「長期インターン」は、まず当社製品や技術について学び、技術系は実際に開発を担当している現場で技術開発を体感してもらい、事務系は事業戦略などを担当している現場でのビジネスを体感するというプログラムです。
1Dayインターンの目的は、学生に幅広く当社のことを知ってもらうことです。できるだけ、当社の雰囲気を感じてほしいと考えています。
一方、長期インターンの目的は、仕事への理解をより深めてもらうこと。学生がやりたい仕事に合わせて職場体験をしてもらっています。
2016年度卒採用では、学生と大学の動き、競合他社の動きが、以前にもまして不透明になりました。「いつ、どういう手を打てば、優秀な学生にアプローチできるのか」をしっかりと計画を立てなくてはなりません。そうした中でインターンシップは早期の段階で当社に目を向けてもらい、企業理解を深めてもらうために非常に有効であり、必要な場であると位置づけています。
今回、イベントに参加してみて改めて実感したのは、学生には二つのタイプがあることです。既に当社のことを知っている学生と、全く知らない学生です。既に知っている学生には、当社のことをさらに深く知ってもらう。一方、当社を全く知らなかった学生に、イベントで出会うことができる。そういったところが、イベントに参加する大きなメリットだと考えています。当社はB to B企業なので学生にはあまり知名度が高くありませんが、イベントで初めて当社を知り、興味・関心を持ってくれた学生がかなりいました。
なじみのない業界のため、参加しやすい1日でのプログラムを実施
株式会社マルイチ産商 総務人事部 人材開発チーム 須永 岳さん
マルイチ産商の提案型営業体感インターンシップでは、食品流通業界の面白さを1日で体験することができます。食品流通業界は学生にはなじみのない業界なので、参加しやすい1日でのプログラムを考えました。最初は、講義形式で業界や仕事内容を説明。その後、ワークを体験してもらいます。具体的には、スーパーへの売り方の提案、商品開発です。売り方の提案で題材に使うのは自社ブランドの『ぶり』。今までのスーパーの鮮魚売り場ではなかったような新しい売り方を考え、企画書にまとめて、提案してもらいます。次の商品開発では、題材を『ケーキ』に変えて行います。どこが良くて、どこが悪いのかを皆で言い合いながら、もっと売れる商品へと改善してもらうというワークを行っています。
インターンシップを経験した学生が選考へと進み、最終的に内定までたどり着いたケースもあります。インターン生の方が会社理解の面で進んでいるので、自然と選考の通過率も高くなっています。ただし、インターン生と他の応募者とで選考のフェーズを変えることはありません。
今年の採用活動は、模索しながら進めているのが実情です。当社は毎年、総合職を30人前後採用していますが、例年と比べると当社に決め切れないで悩む学生が増えています。これまでは、大手企業が先に選考を行い、その後に当社の選考に来るというパターンが多かったのですが、今年はそれが逆転したような形ですね。
前回もこのイベントに参加したのですが、当社のことを全く知らなくても話を聞いてくれる学生が非常に多く、大変嬉しく思います。「とにかく、いろいろな業界の話を聞いてみよう」という、積極的な学生が多い印象があります。学生には、卸業という仕事がなかなか分からないでしょうが、イベントではフェース・トゥ・フェースで説明できるので、企業理解、仕事理解に大変効果的であるのは間違いありません。
学生はイベントをどう評価したのか?
■多くの学生が「満足度が高い」と回答
今回のイベントに参加した学生に、イベントに参加した目的や感想を聞きました。学生たちはどんな目的でイベントに参加し、どのような成果を残せたのでしょうか?
Q. イベントに参加した目的は?
- 就活に向けて、自分にはどの職業が向いているのか、選択肢を絞りたいと思って参加しました。実際、話を聞いて企業のことがよく分かりました。
- 就職活動というものがよく分かっていないので、そのことを理解するために参加しました。
- まだ知らない企業が多く、いろいろな企業を見て、どういう業界がどういう仕事をしているのかを調べに来ました。HPで調べることもいいのでしょうが、それよりも説明会で現場のリアルな声が聞けたらいいと思いました。
- 今後の就職活動に向けての業界研究をするためです。
Q. インターンシップについて、どう考えていますか?
- できれば参加してみたいです。1日だけだと、その会社のことがよく分からないので、何日間かかけてじっくりと行うタイプのものがいいですね。
- 企業がどういうことを行っているのかを、直接学べる点が大きいと思います。
- 参加する場合、日程的には短期の方がいいのですが、経験を積むという意味では長期の方が理想のように感じます。
- 自分がどの業界に行きたいのかまだ絞れていないので、リアルな体験を積む場として、インターンシップは非常に魅力を感じます。
Q. イベントに参加した感想は?
- 来年の就職活動に向けて、企業の方から詳しい説明が聞くことができ、いい成果が得られました。
- いろいろな企業について知ることができましたが、それ以上に、自分が将来、社会に出て何をするのか考えることの重要性を教えてもらい、非常に良かったです。
- ブースよりもセミナーを中心に回りましたが、いろいろと質問をした中で、社会人の先輩から大変ためになる話を聞けて良かったです。
イベント主催:ディスコが語る、インターンシップの現状と課題
「キャリタス就活フォーラム インターンシップ&仕事研究」の主催者であるディスコの企画担当者に、インターンシップの現状と課題に関するお話をうかがいました。
「グループワーク」や「就活Bar」「ソーシャルパーティー」で
参加型、双方向のコミュニケーションを実現していく
株式会社ディスコ イベントオペレーション部 部長 中村洋介さん
現在は採用難の状況ですが、特に中小企業ではインターンシップの段階から企業広報を行い、一定数の母集団を抱え込みたいという意識が高いように思います。一方で大手企業でもそうした問題意識を持つところは多く、インターンシップを行う企業が増えています。8月に採用選考(面接)が始まりますが、8月の段階で採用予定数の全てが確保できるわけではありません。内定辞退なども含めると、9月くらいまでは採用活動が行われます。そのため夏だけでなく、秋から冬にかけて大手企業のインターンシップが集中すると思います。当社でもそれに合わせて、イベントを10月から2月まで、順次行っていきます。
当社が実施した「インターンシップに関する調査」によると、インターンシップに対する満足度は、参加期間が長期のものほど満足度が高くなっています。
プログラム別で見ても、講義タイプよりも実践タイプのインターンシップのほうが満足度が高い。ビジネスインターンシップと言われる、業務を体験するタイプのものですね。
一方、1~2日間のインターンシップは業界研究や企業理解という点では有効です。そして、興味が湧いた企業の長期のインターンシップに参加するのが、学生にとっては理想的だと言えるでしょう。
原則から言えば、学生にとって2週間以上の就業体験を積むことのできるインターンシップが望ましいと考えられます。しかし、受け入れ側の企業も数に限りがあります。当然、人気の高い大手企業ではかなりの競争倍率となって、実際に参加できる学生は少ない。一方、秋口以降の1Dayのインターンシップなら、体験できるチャンスは広がっていきます。本当にその会社を受けてみたいなら、1週間以上のインターンシップが非常に勉強になることでしょう。しかし、その会社が考えていたのと違った場合、その期間拘束されることがデメリットになってしまう。そういう意味でも、短期と長期のインターンシップを企業・学生双方がうまく使い分けていくことが大切だと思います。
当社のインターンシップイベントは、いろいろと工夫を凝らしています。一般的な合同説明会では、企業が学生に対して一方的に説明するパターンが目立ちますが、一方的に聞いているだけでは、自宅で企業のHPを見るのと大きな違いはありません。しかし、学生は参加型であったり、双方向でのコミュニケーションがあった方がいいと思っているはず。そこで当社では、「グループワーク」を主宰して行っています。多くの学生にとって、グループワークは初めての体験だと思います。仲間と協働で作業することをいち早く体験することによって、インターンシップの選考や参加した時に、非常に役立つ経験を得ることができると考えます。
また、体育会系の学生を対象とした「就活Bar」も行っています。体育会系の学生は部活動に割かれる期間が長いため、一般の学生と比べると就活に対する心構えやノウハウ、知識などを得るタイミングが遅れがちだからです。学生同士が集まっていろいろと意見を交わし、アドバイスを行うことによって、埋め合わせをしようというものです。
そして、イベントの最後には、出展している企業と学生による懇親会である「ソーシャルパーティー」を行います。通常のイベントでは、企業と学生の出会いはブースの中だけで完結してしまいます。ブースの中で学生は企業からの話は聞けますが、質問できるケースは限られているし、ざっくばらんな話を聞くことも難しい。しかし、「ソーシャルパーティー」では企業名を全面的に出すわけではないので、個人的に聞きたい話をしてみたり、先輩社会人としてのアドバイスなどを気軽に聞いたりできます。企業にとっても、ブースでは会えなかった学生との新たな接点を持つことができます。2年前から実施していますが、新たな出会いや発見が生まれる場所として、大変好評を博しています。
現在は「売り手市場」の様相を呈しています。学生はついつい企業研究がおろそかになりがちですが、よく分からないまま会社に入ってしまうと、その後のミスマッチへとつながりかねません。それを防ぐための有効な方法が、インターンシップです。学生は有名企業であるなど、ブランドで入社する企業を選ぶ傾向がありますが、本イベントをはじめ、いろいろなコンテンツを通して、企業やその仕事内容を分かってもらえる場を提供していきたいと考えています。
出展企業と学生が気軽にコミュニケーション
合同説明会が終了した17時からは、出展企業の方と学生とがコミュニケーションを図ることを目的に「ソーシャルパーティー」を開催。軽食と飲み物が用意された会場の至る所で、気軽な本音トークが交わされました。出展企業、学生の“生の声”が聞けた今回のイベント。出展企業、学生ともに最新の採用・就職活動の情報を多く得ることができたようです。
次回の「キャリタス就活フォーラム インターンシップ&仕事研究」は10月に開催!
「日経就職ナビ」や「キャリタス就活」をはじめ、企業や学校のリクルーティング活動を支援する各種サービスを提供。“人々の「学ぶ・働く」を考える”企業として、人と組織の成長のための付加価値の高い事業展開を行っています。