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企業による積極的な取り組みが増加中!
「障がい者雇用」をめぐる最新動向と採用&労務管理上のポイント

社会保険労務士

松山 純子

4.「精神障がい者の雇用義務化」に関する動向

現在、障がい者として雇用義務の対象になっているのは身体障がい者と知的障がい者で、精神障がい者は対象となっていません。厚生労働省は、この精神障がい者について、新たに雇用を義務付けることを目指しています。

改正が行われれば、身体障がい者に加え、知的障がい者の雇用を義務化した1997年以来の対象拡大になり、躁うつ病や統合失調症などの精神障がい者が加わることになります。

5. 精神障がい者の採用方法

精神障がい者の就職件数が毎年増加傾向にあります。次に、精神障がい者を採用するうえでの労務管理上の留意点などを確認していきましょう。

精神障がいを引き起こす主な疾患には、統合失調症、うつ病、躁うつ病、精神作用物質(アルコールなど)による精神疾患などがあります。

病気を抱えながら就労するには、本人も周囲も病気の特性や症状および配慮すべき事項をしっかり理解していなければ、定着につながりません。

個々の状況を的確に把握して、通院時間を保障したり、短時間勤務から始めたり、納期が厳しい仕事は避けたりするなど、個別対応を行うべきポイントがたくさんあります。必要に応じて医療機関との連携も図りましょう。

(1)採用方法

ハローワークの専門援助部門に相談して求人票を出し、仕事内容や職場環境を説明して、ミスマッチを防ぎます。

また、ハローワークの他に就労支援機関や医療機関、職業訓練校等を訪問し、企業が求める人材のイメージに合った方を採用する方法もあります。

就労支援機関には、例えば、就労移行支援事業(企業等への就労を希望する障がい者を対象に、計画的なプログラムに基づき、施設での作業や企業での実習、職場探し、就職後の職場定着などの支援を行うところ)などがあります。

(2)労務管理上の留意点

精神障がい者を雇用した場合、定期的な通院や残業規制が必要になるケースがほとんどです。障がいのあることを周囲の従業員に伝えて、周囲の従業員の 協力や理解を得ておかないと、「なぜあの人は忙しいのに定期的に休むのか」「なぜあの人は残業しないのか」という声が上がってくることになりかねません。

精神障がい者雇用を行っている多くの企業では、他の従業員に就業にあたり配慮すべき事項等について説明を行い、協力や理解をしてもらうところがほとんどです。

定期的な通院や残業の制限、仕事内容の設定の仕方など配慮すべき事項を周囲が理解していないと、雇用された方が組織に居づらくなってしまいます。説明の仕方は、本人の意向を確認しながら決めることが大切です。また、支援機関に相談してみるとよいかもしれません。

精神障がい者を雇用するには、周囲の理解や多くの配慮が必要になります。どのような配慮を行うとよいのかは、本人と話合いの中で決めていくとよいでしょう。また、本人が困ったときに気軽に相談できる窓口を設けておくことも必要です。

また、企業側も、困ったときに内部で抱え込まずに外部の専門家と連携できるよう相談窓口を持っておくことが、精神障がい者の継続雇用につながっていきますので、大切です。

障がいに関することは、主治医、精神保健福祉センター、地域生活支援センターなどと連携するとよいでしょう。また、採用や就労に関することは、ハ ローワークや地域障害者職業センターなどと連携します。上手に外部機関を活用しながら、精神障がい者雇用を行っていくとよいでしょう。

【就業にあたり配慮すべき事項の具体例】

・通院に関する配慮
精神障がい者の場合、2週間~1ヵ月に1回の定期的な通院を必要とする方がほとんどです。体調が悪いときは、もっと頻繁に通院することもあります。通院は、働くうえで必要となりますので、周囲の理解を得られるようにしてください。

また、休暇(年次有給休暇)を時間単位で取得できるようにしたり、別途通院休暇を付与している企業もあります。取得しなかった年次有給休暇で繰り越しできない分を特別休暇としてプールし、通院や体調不調による欠勤の際、使用できる仕組みをとっている企業もあります。

・勤務時間に関する配慮
精神障がい者の特性の一つに、疲れやすい・集中力の低下・思考の低下などがあります。そのため、フルタイム勤務は難しいケースも珍しくありません。最初の2~3ヵ月間は短時間勤務から始め、状態を見ながら徐々に勤務時間を延長していくという方法もあります。

1日の勤務時間を短縮する方法や1週間の勤務日数を減らす方法など、本人に無理のない勤務時間の設定から始めてみて、慣れてきたら徐々に勤務時間を増やしていくとよいでしょう。

6. 働くこと、仕事をすることは「社会とのつながり」を感じること

以上、企業側の取組みについて説明してきましたが、今回の改正により、より多くの障がい者が働く機会を得ることにつながります。

私たちは社会とのつながりの中で、自分の存在を確認しています。働くこと、仕事をすることは、「社会とのつながり」を最も感じられるものと言えます。「収入を得るために働く」ということも重要なことですが、それだけではありません。

今回の改正で、一人でも多くの方が社会とのつながりを持ち、希望を持って働ける機会を得られることを嬉しく思っています。

企業・障がい者本人両者にとって、今回の改正が素晴らしいものであるようお互いが努力していきたいですね。

『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人 事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法 改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。 ここでは、同誌のご協力により、2013年4月号の記事「『障がい者雇用』をめぐる最新動向と採用&労務管理上のポイント」を掲載します。 『ビジネスガイド』の詳細は、日本法令ホームページへ。

まつやま・じゅんこ ● 2006年6月に松山純子社会保険労務士事務所開業。当時700名のうち約半数が障がい者という身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の福祉施設に人事総務およびケースワーカーとして、14年間勤務。障がいがあっても、働きやすい環境整備と周囲の理解があれば、就労は可能であることをこの施設で学ぶ。現在、事務所は障害年金に力を入れて活動中。

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この記事ジャンル 障がい者雇用

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パタハラ
介護離職
就労継続支援A・B型事業所
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