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【議員秘書】
国民と議員の間に立って関係を維持し
政策実現のために議員をサポート

先日行われた、衆議院議員総選挙。短期決戦に挑む、国会議員の姿は記憶に新しい。地元と東京、二つの拠点を行き来する多忙な国会議員にとって、仕事をサポートしてくれる優秀な秘書の存在は欠かせない。ある時は議員本人の代理として、またある時は政策実現のブレーンとして、議員活動を支援する議員秘書。知力・体力・気力すべてを要求されるその仕事とは――。

国会議員一人につき、公設秘書は3名。中でも「政策担当秘書資格」は超難関だった!

日本の「議員」には国会議員、都道府県議会議員、市町村議員があるが、この中で公設秘書が付くのは国会議員だけだ。公設秘書は国会法に基づき、議員が国費によって雇うことができる秘書であり、身分としては「国家公務員特別職」となる。国会議員一人につき3名まで雇うことができ、政策担当秘書を含めた3名の公設秘書(「公設第一秘書」「公設第二秘書」「政策担当秘書」)が国会議員を支えている。なお、公設秘書は65歳以上の者、または当該国会議員の配偶者はなることができない。

このうち資格が必要となるのは「政策担当秘書」だ。1993年に新たに認められた職種で、脱官僚の議員主体による政策立案を目指すために設けられた。政策の調査や研究、委員会での質問案の作成など、政策や法案を専門に扱うことが仕事だ。

政策担当秘書になるには、以下のいずれかに該当していなければならない。

  • 年1回行われる「国会議員政策担当秘書資格試験」の合格者
  • 司法試験・公認会計士または国家公務員・外務公務員一種試験の合格者で、国会議員の推薦を受けた者
  • 公設秘書経験が10年以上、あるいは私設秘書経験が5年以上で、会社員・公務員・労働組合・政党職員などとして政策の立案や調査研究に従事した経験をもち、その経験年数が合計で10年以上の者で、研修を受けた者
議員秘書 イメージ

政策の立案から、地元とのパイプ作りまで――。知力・体力ともに消耗するハードな仕事だ。

「国会議員政策担当秘書資格試験」の合格率は4~7%と難関で、合格者の出自は弁護士、公認会計士、博士号取得者、新聞記者、政党議員など多岐に渡る。現場で実際に活躍しているのは資格のみを取得した新参組よりも、政策に精通して物事の機知に富む、議員秘書歴の長いベテラン勢が多い。机上の勉強だけではなく、自らの頭と足で国民と政治の橋渡しをすることをいとわないタイプが重用されるのだ。

公設秘書に対して、議員が自費を払って自由に採用できるのが私設秘書だ。人数に制限はなく、採用の条件も自由。事務所によっては私設秘書が100人もいるところもあるといわれる。

東京事務所と地元の選挙区事務所に分かれて役割を分担

公設秘書、私設秘書を含め、議員活動で必要となるさまざまな役割を配分することになる。政党に所属する国会議員の場合には、おおよそ次のような役割の秘書が必要とされる。

(1) 政務秘書(立法調査、政治活動の補佐など)
(2) 党務秘書(政党が議員に課す任務の代行。市民相談の窓口、他党との協議、労働団体や市民団体等との関係処理、選挙対策など)
(3) 財務秘書(資金集め、支出管理など)
(4) 選挙区対応秘書(選挙区でのさまざまな世話、組織活動など)
(5) 事務秘書(議員会館及び選挙区の事務所事務員)
(6) 選挙担当秘書(選挙対策)

秘書の所属は、東京事務所と地元の選挙区事務所に分かれる。東京事務所の秘書は、国会や所属する政党の議員活動を支え、事務所を維持することが仕事。国会質問の案をつくったり、法案について調査したり、政党の活動を手助けしたりするほか、企業や業界団体の集まりにも顔を出す。

一方、地元の選挙区事務所の秘書は、選挙に向けた活動を中心に行う。地元の有権者との接点を絶やさないよう、つながりを維持することが仕事だ。具体的には地元のイベントへの出席、冠婚葬祭への出席、後援会活動、選挙活動などを行う。常に地元に顔を出しているので、議員以上に信頼を得ている秘書もいる。

議員秘書にとって、最も大きな仕事となるのが選挙活動だ。選挙前にはビラやポスター、選挙カー、事務所などの手配をはじめ、選挙運動のスケジュール管理や訪問先の作成、講演会の時間調整などを行う。選挙が近く行われそうであれば準備を始め、情勢をみながら、どうすれば一票でも多くの票を獲得できるかを考える。

また、議員秘書には「政界入りへの登竜門」といった一面もある。二世議員も、まずは親の秘書を務めてから議員となる場合が多く、議員秘書の仕事をとおして「地盤・看板・カバン」を固め、選挙での当選を目指す。地元で顔を売るには、議員に寄り添い常に行動を共にする秘書の仕事がうってつけなのである。

落選すれば秘書も失職。議員と一蓮托生の密度濃い間柄

国会議員の議員秘書のやりがいは、国を動かす現場に直接携われることにある。例えば議員の地元から寄せられた課題に関する情報を集め、その対策を法案化したのちに成立した時。議員が地元から認められて当選し、社会から高く評価された時。また、将来的には議員に代わって地元とのパイプをつなぎ、有権者から支援を受けて当選することも大きなやりがいの一つといえるだろう。

議員秘書 イメージ

議員が落選すれば即失職。選挙での勝利に向けたサポートが、議員秘書の最大の責務でもある。

実際の仕事は大変ハードで、仕事の性格上、長時間労働で休日返上になることも多い。また、さまざまな人との関わりをつくることが仕事であるだけに、雑務も多く、各方面への気づかいが必要となる。

議員秘書の給与は、公設秘書は国から支払われ、政策担当秘書で月42万円~60万円程度、第一秘書で月36万円~55万円程度、第二秘書で月27万円~40万円程度となっている。私設秘書は各事務所から支払われ金額に決まりはないが、月15万円~25万円程度が多いようだ。

ただし、議員秘書の立場は非常に不安定であり、議員が落選すればただちに失職する運命にある。2009年の政権交代時には、自民党の議員が多数落選したため、数千人もの秘書が失職した。だからといって新たな政権政党の議員に雇われることは、機密を多く知る立場からなかなか難しい。

議員が国民の声を聞くことで成り立つ仕事だとするなら、その国民との関係性を維持し、声を聞くポジションをつくっているのが議員秘書だ。その意味では、議員以上に日々国民の本音に敏感にならなければならない仕事といえるだろう。

この仕事のポイント

やりがい国を動かす現場に直接携われること。支持者の声を聞き、その要望を形にできた時などは、社会的評価も高まり、大きなやりがいにつながる。
就く方法公設秘書である「政策担当秘書」になるためには、相応のキャリアに加え、難関の国会議員政策担当秘書資格試験に合格する必要があるが、その他の秘書業務については特別な資格は必要ない。
必要な適性・能力東京と地元のパイプ役として、地元の支持者との関係を維持拡大しつつ、政策や選挙の準備や立案を行うなど、フットワークや対人スキル、政策に関する知識など、多くを求められる。このような理由から、総じてベテランが重用されていることが多い。
収入<公設秘書>政策担当/月42万円~60万円程度、第一秘書/月36万円~55万円程度、第二秘書/月27万円~40万円程度 <私設秘書>月15万円~25万円程度

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 中途採用

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