公認会計士
超難関試験を突破しても年収900万円で頭打ちに
繁忙期には3時間睡眠で数字とにらめっこの地獄!
公認会計士といえば、医師、弁護士に並ぶ超難関の国家試験を突破して手に入れる資格です。会社勤めを辞めてまで挑戦する人もあるようですが、企業会計の監 査という仕事柄、一般にはあまり実態を知られていません。最近では粉飾決算の手ほどきをする人まで現れましたが、公認会計士って、そんなことまで公認され ているの?(コラムニスト・石田修大)
合コンでは医者や弁護士ほどの人気はない?
小中学生時代、書記や会計といえば地味な脇役だったが、大人の社会で書記といえば、共産圏では国家のトップクラス。会計士だって大企業の億単位の金の流れをチェックする、大切なお目付役である。ところが、一般には税理士の親戚程度の認識しかなく、はやりの合コンでも青年実業家や医者、弁護士ほどの人気はなさそうだ。
実際どんなことをやっているのか。最大の仕事は企業の財務内容や経営成績に対する監査である。大企業では公認会計士や監査法人を会計監査人にすることを義務づけられており、公認会計士は決算期ごとに企業の作成する財務諸表の内容が適正であるかどうかをチェックし、監査報告書を監査役や取締役に提出する。公正な第三者である公認会計士が、財務内容を監視することで、企業の社会的信用を担保するわけだ。
監査は国家試験を合格した公認会計士だけに認められた仕事だが、公認会計士の業務はそれだけではない。会計全般に対する調査・立案などの会計業務、税務書類の作成、税務相談などの税理士の業務、経営コンサルティング業務、さらにM&Aや株式公開など、企業活動全般についての指南役的な仕事もこなしている。
「さおだけ屋」でも「カネボウ」でも話題に
公認会計士は現在全国で約1万6000人おり、その多くは160の監査法人に属して、チームを組んで仕事をしている。監査法人は5人以上の公認会計士が集まって設立した特別法人だが、トーマツ、中央青山、新日本、あずさの4大監査法人のように1000人を超える会計士を抱える組織がある一方、大多数は十数人程度の小規模法人である。ビッグ4は上場企業の9割ほどの監査を請け負っており、2004年度(3月期)売上は計2012億円。その大半は上場企業に対する監査の報酬だ。
企業のトップクラス以外、日常的にはほとんどおつきあいする機会もない公認会計士。どんな人たちなのかイメージを結びにくいが、最近は『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)という100万部を超えるベストセラーを出す会計士が現れた。
会計士だけでもよさそうなものを、わざわざ「公認」とつけるあたり、何やら怪しげな職業と思っていたのだが、タイトルに惹かれて『さおだけ』の本を読み、公認会計士にもこんな才能のある人がいたのかと感心させられた。と思った矢先、やはりとんでもない怪しげな連中が暴かれた。カネボウの粉飾決算事件に関与した中央青山の4人の公認会計士である。カネボウの社長らと共謀して2年間、それぞれ800億円を超える粉飾をした証券取引法違反の容疑で逮捕され、うち3人が起訴された。
2018年に会計士を5万人に増やす計画
しかも年収900万円くらいで、ほぼ頭打ちになるようだ。法人の社員(一般企業の部長、役員)や代表社員になれば1000万円を超えるが、そこまでたどり着くのはほんの一握りにすぎないのは、ほかの企業と変わらない。
途中で独立して会計事務所を開き、若くして年収5000万、所得1500万などという例もあるそうだが、独立しても大企業の監査業務など個人事務所では請け負えず、公認会計士なら登録するだけで可能な税理士業務で凌いでいるケースが目立つという。
金融庁は2018年に会計士を5万人に増やす計画で、会計士試験も来年から簡素化され、試験は1度となる。このため来年度以降さらに会計士は増える見込みだが、一方で4大監査法人は不景気を理由に会計士の採用を手控える傾向にあり、すでに2次試験に合格しながら、就職できない会計士補が増えてきている。会計士の狭き門は多少広がっても、職に就けないのでは「公認」の肩書きも価値が薄まりそうだ。
※数字や記録などは2005年10月現在のものです
あまり実情が知られていない仕事をピックアップし、やりがいや収入、その仕事に就く方法などを、エピソードとともに紹介します。