産労総合研究所、『2014年人事のあり方に関する調査』
~HRMのIn-Diモデル~
産労総合研究所とJSHRMリサーチプロジェクトとの共同調査「2014年 人事のあり方に関する調査」の結果分析によると、イノベーションへの貢献や人材の多様性が求められていない企業群ほど、人材の統合に対する方針が明確でなく、人事部門への期待度が低い、などの傾向がみられた。
「2014年人事のあり方に関する調査」
~HRMのIn-Diモデル~
本調査は、実務家および研究者からなJSHRMリサーチプロジェクト(日本人材マネジメント協会)のメンバーが、「人事部とは何か」を議論するなかで開発した「HRMのIn-Diモデル」をもとに調査票を設計し、産労総合研究所と共同で実施した。
「In-Diモデル」のInはイノベーション、Diはダイバーシティの略であり、まずイノベーションとダイバーシティの2つを軸に置いた4つのIn-Diタイプに回答企業をわけ、次いで、このタイプ別に人事管理のあり方や人事部門のあり方について考察している。
◆In-Diモデルとは
人事部門の役割は経営と連動しているという観点から、日本の企業における主要な経営課題である「イノベーションの推進」と「多様な人材の活用(ダイバーシティ)」の2つを軸として置く独自のHRMモデル(In-Diモデル)をベースにしている。このモデルでは、「経営・事業のイノベーションへの貢献度」と「多様な人材の活用度」の大きさから、企業を4つのIn-Diタイプに分類し、それぞれの特性を考えて、「タレント型」「体育会系型」「企業内熟練型」「マニュアル型」と称することとした。
[タレント型]
オープン化した先端的市場、激しい国際競争下に置かれるIT系企業に代表されるような、イノベーションが非常に重視され、多様な人材の活用度が高い企業群を想定し、その人材活用のあり方の象徴的な意味合いを込めて「タレント型」と命名した。
[体育会系型]
事業の性格上、イノベーションが非常に重視される一方で、多様な人材で事業を運営する必然性は相対的に低く、むしろ同質の人材による、暗黙知も含めた統制された価値観によって組織される企業群であり、国際的に事業を展開する重工系の製造業や総合商社などを想定し、「体育会系型」と命名した。
[企業内熟練型]
イノベーションが相対的には重視されず、また多様な人材活用の要請の度合いも低い企業群であり、市場を国内に絞って事業を展開している製造業、あるいは規制の下で激しい競争にさらされていない産業などを想定した。これらは、基本的には業界や企業のなかに蓄積された技術・ノウハウを重視して事業が運営されていることから「企業内熟練型」と命名した。
[マニュアル型]
多数のチェーン店をもち価格を競争優位性の大きな要素とする外食産業等は、事業そのもののイノベーションはさほど重視されず、一方で人件費の抑制が鍵となることから、主婦層や外国人労働者等の多様な人材の活用を重視している。その結果として運営はマニュアル化され、統一性を保ったオペレーションを行う枠組みが整備されていると考えられるので、このタイプを「マニュアル型」と命名した。
■調査要項
【調査名】 「2014年人事のあり方に関する調査」
【調査対象】当社会員企業から任意に抽出した3,000社およびJSHRM会員320社
【調査時期】2014年10月初旬~11月初旬
【調査方法】郵送によるアンケート方式
【回答状況】締切日までに回答のあった 193 社について集計
■調査結果の概要
(1)人事管理のスタイルや方針
組織の目標達成に向けた人材の統合 ~VBPスタイル~
In-Diモデルでは、人事管理のあり方や人事の役割を捉える視点として、「組織の目標達成に向けて、企業は社員をどのように統合するか」(人材の統合)という点に注目した。この人材の統合スタイルを検討するにあたり、「経営理念・組織文化(Vision)」「業務プロセス・ルール(Behavior)」「成果・パフォーマンス(Performance)」の3つの要素をどの程度重視するかを尋ねた。
In-Diタイプ別に重視している割合と重視している程度をみると、タレント型は「経営理念・組織文化」と「成果・パフォーマンス」が他のタイプより高い。マニュアル型は、「経営理念・組織文化」、「業務プロセス・ルール」、「成果・パフォーマンス」のすべてが高い。多様な人材の活用が求められているこれら2タイプでは、「経営理念・組織文化」が重視されている。
一方、企業内熟練型は、すべての統合スタイルの数値が他のタイプよりも低い。体育会系型は、4つのタイプのなかで中間的な傾向がみられるが、「経営・理念・組織文化」と「業務プロセス・ルール」の数値はやや高い。
(2)人事部門の機能
人事部門の機能として、何が求められているのか(「経営理念を組織に浸透させること」「経営戦略の実現につながる人事戦略を策定すること」「他部門に対して、人事コンサルティング(育成計画の策定等)を提供すること」「個々の社員の個別事情に配慮すること」「事務手続き等の面で、現場をサポートすること」)を尋ねた。
各項目について、求められている程度をIn-Diタイプ別にみると、タレント型は、ほとんどすべての項目において、求められている程度が高い。また、タレント型とマニュアル型は、「経営理念を組織に浸透させること」「経営戦略の実現につながる人事戦略を策定すること」が顕著に高い。逆に、企業内熟練型は、全項目にわたってこれらの数値が顕著に低くなっている。
※詳細データは「人事実務」2015年3月号に掲載している。また、2015年3月7日(土)に学習院大学において行われるシンポジウム「HRMのIn-Diモデル~イノベーションとダイバーシティからの提言~」において、成果報告が行われる。詳細は、日本人材マネジメント協会(JSHRM)HPを参照のこと。
◆本調査の図表・詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社産労総合研究所 http://www.e-sanro.net/ /2月26日発表・同社プレスリリースより転載)