転職者に関する調査
「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に 業種や職種を越えた「越境転職」が加速
株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:北村 吉弘、以下リクルート)は、転職支援サービス『リクルートエージェント』の転職者分析(2013年度~2022年度)を行いました。雇用の流動化に注目が集まる今、どのような転職が起きているのかを分析し、「越境」を軸に転職市場の動向をまとめましたのでご報告いたします。
解説 HR 統括編集長 藤井 薫
今回、ここ10年間の『リクルートエージェント』の転職者分析から、業種・職種の越境状況を見つめました。見えてきたのは、転職市場の構造的な変化です。特に注目したいのは、以下の3点です。
【全体傾向】「異業種×異職種」への転職が最多パターンに(過去最高値:39.3%)
【年齢傾向】年齢が上がるにつれ、職種は変えず異業種にチャレンジする人が増加
【職種傾向】企画系職種は、「異業種×異職種」転職の割合が高い(経営企画・事業企画・業務企画(60.5%))
いまや越境転職が主流となっている転職市場。そこには二つの背景があります。
一つは、全ての産業・企業がビジネスの在り方を変革するIX、CX、GX、DX(*)の動きです。全ての産業が、自らの事業を再定義する時代。それに呼応して、社内には居ない異業種・異職種の人材を積極的に中途採用しているのです。そして、もう一つの背景は、個人のキャリア観の変容です。人生100年時代を生きる働き手は、企業寿命と個人寿命の逆転で、一社で働き続ける「終身雇用」よりも、自分の望む働き方に合わせて自由自在に会社を移動する「終身自在」を望み出しています。これまでの業種や職種にとらわれず、自らの成長機会を提供してくれる成長産業や企業に越境し出しているのです。
今後、企業は、即戦力人材の定義を見直すと同時に、業種・職種経験の有無に左右されていた採用基準も、より粒度の細かい、適応スキルや汎用スキルの評価へと再定義を余儀なくされるでしょう。
個人も、前職の業種・職種にとらわれず、より広い選択肢で才能開花の機会を求めるためにも、自らのスキルの棚卸しをし、業種・職種を越えて持ち運べるポータブルスキルを整理することが重要になります。
転職市場の変化の時代こそ、企業も個人も、新たな採用戦略、新たなキャリア戦略が求められています。
*IX=インダストリアル・トランスフォーメーション(産業変容)、CX=コーポレート・トランスフォーメーション(企業の根幹からの変革)、GX=グリーン・トランスフォーメーション(クリーンエネルギー変革)、DX=デジタル・トランスフォーメーション(デジタルによる顧客体験とビジネスモデル変革)
2022年度の転職パターンは「異業種×異職種」が約4割、前年度よりさらに増加
2022年度の転職決定者の業種・職種の異同パターンを分析したところ、「異業種×異職種」が39.3%で最多となりました。2021年度の37.1%より2.2pt増加し、過去10年間で最も高い割合を占めています。
【年齢別】「異業種×異職種」は20~24歳で最高、年齢が上がると同職種への転職が増える
年齢別で見ると「異業種×異職種」は20~24歳で最も高くなっています。年齢が上がるにつれて同職種への転職割合が高くなり、25歳以上では「異業種×同職種」が3割を超えています。年齢が上がるとともに、培った経験やスキルを生かして職種は変えずに、新たな業種へチャレンジする転職者が増えるようです。
【転職先職種別】企画系で「異業種×異職種」の転職が顕著に高い
転職先の職種別に「異業種×異職種」の2022年度の状況を見ると、「経営企画・事業企画・業務企画(60.5%)」が特に高い割合を示しています。また、「オフィスワーク事務職(52.6%)」、「マーケティング(49.4%)」、「インターネット専門職(Webエンジニア含む)(44.4%)」もそれぞれ約半数が「異業種×異職種」の転職であることが分かります。一方で「建設エンジニア」「SE」「機械エンジニア」「電気エンジニア」といった技術系職種は、比較的「同業種×同職種」の割合が高く、それぞれ30%前後が「同業種×同職種」の転職であることを示しています。
<調査概要>
調査方法:リクルートエージェントの転職データ分析
調査対象:リクルートエージェントを利用して転職した方
有効回答数:非公開
調査実施期間:2023年8月~10月
調査機関:リクルート
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルート/ 11月29日発表・同社プレスリリースより転載)