「プロアクティブ人材」に関する実態調査を実施
従業員のプロアクティブ化が企業価値向上に貢献
40代が最もプロアクティブ度が低く、自律型人材育成のキーはミドル層にある
株式会社日本総合研究所(代表取締役社長: 谷崎勝教、本社: 東京都品川区、以下「日本総研」)とアビームコンサルティング株式会社(代表取締役社長: 山田貴博、本社: 東京都千代田区、以下「アビームコンサルティング」)は、企業の人的資本経営推進におけるキーファクターの一つである、キャリア構築に向けて自律的に行動する「プロアクティブ人材」の実態と、従業員のプロアクティブ化を促進する環境要因を明らかにすることを目的として、企業に勤務する20,400人を対象とした大規模調査(以下「本調査」)を実施しました。
■「プロアクティブ行動」「プロアクティブ人材」の定義
日本総研およびアビームコンサルティングは、「プロアクティブ行動」の構成概念を、キャリアを自ら築いていくための自律的な行動カテゴリーとなる、「革新行動」「外部ネットワーク探索行動」「組織化行動」「キャリア開発行動」(注1)の4つと定義しています。
注1: プロアクティブ行動における各概念の定義
「革新行動」:自身および職場全体の仕事を捉え直してみたり、やり方や手続きなどを変えたりして環境を変えようとする行動
「組織化行動」:普段から職場の上司や同僚と良質な関係性を構築し、自ら関係者を巻き込みながら仕事を進める行動
「外部ネットワーク探索行動」:自身の知見向上のために、自身が所属する会社以外の人と積極的にネットワークを構築する行動
「学習と自己開発行動」:自身のキャリアを自身で描き、その実現に必要なスキル・知識を社内・社内外問わずに学習して身につけようとする行動
本調査では、これらのプロアクティブ行動の実践度合いを5段階で測定し、数字が大きいほど「プロアクティブ度」が高いとしました。今回、このプロアクティブ度が4.0以上の人を「プロアクティブ人材」、そして2.0以下の人を「非プロアクティブ人材」としています。
■TOPICS
- 【総合】 プロアクティブ人材は、自身の職務成果やキャリア実現度、仕事への意欲において、いずれも非プロアクティブ人材と比較して数値が2倍であり、プロアクティブ度はアウトカム(個人の職務成果やエンゲージメントなどに与える影響)に相関している
- 【年代別】 プロアクティブ度は20代から40代にかけて減少し、40代が最も低い値であるため、ミドル層のプロアクティブ度の維持・向上施策がキーとなる
- 【転職回数別】 プロアクティブ人材は転職回数が少なく、プロアクティブ度の向上施策は人材流出にはつながらない
- 【職場特性・職務特性】 チャレンジを認めてくれる職場や裁量・やりがいのある職務であるほどプロアクティブ行動が活発化する
■本調査の主な結果
1. 従業員自身の職務成果、キャリア実現度、仕事への意欲の3要素すべてにおいてプロアクティブ人材の数値は非プロアクティブ人材の2倍高く、プロアクティブ度はアウトカム(個人の職務成果やエンゲージメントなどに与える影響)に相関する
本調査では、プロアクティブ人材が企業にとって有益な人材であるかどうかを分析するため、プロアクティブ度とアウトカム(社会や業績に与える影響)の関係性を捉えました。
組織内における自身の評価を示す「職務成果(注2)」、自身のキャリアの実現度合いを示す「自己実現」、仕事に対する意欲・熱意などを示す「ワークエンゲージメント」の3要素をアウトカムとし、それぞれプロアクティブ人材および非プロアクティブ人材ごとに数値を調査しました。その結果、3要素すべてにおいて、プロアクティブ人材の方が、非プロアクティブ人材の2倍近くの数値を示し、プロアクティブ度の高さがアウトカムの高さに直結することが認められました。
このことは、プロアクティブ人材の育成自体が企業価値向上につながることの示唆といえます。
注2: 組織内における自身の評価
本調査では、組織内における自身の評価に対する自己認識を1~5の5段階で回答したデータを活用している。
2. プロアクティブ度は20代から40代にかけて減少し、40代が最も低い値であるため、ミドル層に対するプロアクティブ度の維持・向上施策が重要視される
また、プロアクティブ度について、年齢別および男女別の違いも調査しました。その結果、プロアクティブ度は20歳代から40歳代に向けて下がっていき、その後60歳代に向かって持ち直していく傾向があることが明らかとなりました。特に業務上中核的な存在であることが多い40代が最も低い値となっており、低下幅は男性の方が大きいことも分かりました。これは、入社当初はプロアクティブであった人材が年齢を重ねるにつれて非プロアクティブな人材に変容していってしまっていることを示しています。プロアクティブ度の減少に直面しているミドル層に対していかにプロアクティブ度を維持・向上させていくかが、今後の重要な経営課題の一つになると考えられます。
3. プロアクティブ度が高い人材は転職回数が少なく、プロアクティブ度の向上施策は人材流出にはつながらない
また、各人のこれまでの転職回数についても調査しました。その結果、転職回数が0回だった人の割合は、プロアクティブ人材で47.2%、非プロアクティブ人材で40.7%でした。反対に、転職回数が4回以上だった人の割合は、プロアクティブ人材で7.3%、非プロアクティブ人材では9.5%でした。プロアクティブ人材のイメージとして、「ドライ」「次々に転職をする」というイメージが持たれる場合もありますが、本調査結果からはむしろ逆で、定着率はプロアクティブ人材の方が高いという結果となりました。
この結果からは、プロアクティブ度の向上施策を打っても人材の流出にはつながらず、むしろ記載の通り企業価値の向上に貢献することが言えます。
4. チャレンジを認めてくれる職場や裁量・やりがいのある職務であるほどプロアクティブ行動が活発化する
最後に、プロアクティブ度は環境によって変化する可能性があるのかについても分析しました。その結果、「(その人の職場は)サポートがあり、チャレンジを認めてくれる職場であること」(職場特性)、「(その人の職務は)裁量があり、やりがいのある職務であること」(職務特性)という環境において、従業員のプロアクティブ度が高くなるという関係性が確認できました。
■まとめ
プロアクティブ人材のワークエンゲージメントは高く、企業業績への貢献と自ら思い描いたキャリアの実現を両立している傾向がみられました。企業にとっても本人にとっても理想的な「やりたいことを、業務を通じて実現し、成果が伴っている状態」にある人材と評価できます。加えて、離職という企業にとってのリスクが低い人材であることも注目したい点です。
ただし、プロアクティブ度は20代をピークに年齢と共に下がる傾向があり、「放置すると下がる」恐れがあります。一方で、プロアクティブ度は職場特性や職務特性によって数値が異なることから、マネジメント次第で維持・向上させることが可能ともいえます。
2022年3月の「人的資本経営に関する調査」(経済産業省)では、「人材投資の投資対効果の把握はまだまだ進んでいない」という経営者の問題意識が浮き彫りとなっています。人材一人ひとりのパフォーマンスの重要性が高くなる縮小社会下では、プロアクティブ人材の価値も一層高まります。今後は、プロアクティブ度を人的資本への投資対効果の測定指標として活用し、上司が一人ひとりのウィル(意志)に寄り添いながら、それぞれのプロアクティブ度を高めていくことが企業価値の向上に不可欠となると考えられます。
【本調査概要】
調査名: プロアクティブ人材の実態に関する総合調査
調査期間: 2022年1月6日(木)~12日(水)
調査方法: ウェブアンケート(選択+自由記述)
調査対象: 企業勤務の従業員
調査人数: 20,400名
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(アビームコンサルティング株式会社/ 6月6日発表・同社プレスリリースより転載)