人手不足に対する企業の動向調査
人手不足企業、5カ月連続で5割超え 「旅館・ホテル」は約8割で過去最高水準
~ 2023年注目の「賃上げ」、人手不足企業ほど注力する傾向 ~
出口の見えない人手不足状態が続いている。2023年1月時点で人手不足を感じている企業の割合は、正社員では51.7%、非正社員では31.0%で、それぞれ5カ月連続で5割超、3割超の高水準。特に個人向けサービス業の代表格「旅館・ホテル」「飲食店」は群を抜いた高い割合となった。
物価上昇が続くなか注目される「賃上げ」は、人手不足の解消に向けても無視できない大きなファクターとなり得る。2023年1月に帝国データバンクが実施したアンケート調査では、2023年度に賃上げを行う意向がある企業のなかで、約7割が「労働力の定着・確保」を理由とした。しかし、「赤字でも賃上げを実施しないと人材が流出してしまう」という苦痛の声が聞かれる。今後も続くと予想される激しい人材獲得競争に向けて、企業は大きな岐路に立たされている。
調査結果
- 正社員の人手不足企業の割合は51.7%、非正社員では31.0%と高水準。それぞれ「旅館・ホテル」がトップで、「情報サービス」や「飲食店」も高水準となっている
- 「賃上げ」に関する2023年度見込みでは、全体と比較して人手不足を感じている企業は、賃上げの実施に積極的に取り組んでいる傾向がみられる
1.正社員
人手不足割合は 51.7% 1 月としては過去 2 番目の高水準、前年同月比 3.9 ポイント増
2023 年 1 月時点における従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」と感じている企業は 51.7%だった。前年同月から3.9 ポイント増加しており、1月としては 2019 年(53.0%)に次いで2番目の高さとなった。月次ベースにおいても5カ月連続の 5 割超となり、上昇傾向が顕著となっている。特に大企業では 62.1%と高水準で、全体(51.7%)を大きく上回る結果となった。
2.非正社員
人手不足企業の割合は 31.0% 1 月としては 4 年ぶりの 3 割超、前年同月比 3.0 ポイント増
非正社員について「不足」と感じている企業は 31.0%となった。1月としては 2019 年以来4年ぶりの3割超となり、当時の水準に迫っている。月次においても5カ月連続の3割超だった。規模別では、大企業では 33.4%、中小企業では 30.6%、小規模企業では29.2%となり、各規模でそれぞれ3割前後の人手不足となっている。なお、非正社員の人手を「適正」と感じている企業は 61.5%と大半を占めた。
3. 非正社員において「旅館・ホテル」は過去最高を記録 「飲食店」はコロナ禍以降で最も高い状況
旧来から人手不足が目立つ「旅館・ホテル」と「飲食店」は、一層深刻さを増している。2023年1月時点では、特に「旅館・ホテル」に関して正社員は 77.8%で8割に迫り、非正社員は 81.1%で過去最高を記録。また、「飲食店」の正社員も 60.9%と高水準で、さらに非正社員では 80.4%と8割を超え、コロナ禍以降(2020年4月)で最も高くなった。
4. 2023 年度の「賃上げ」見込み、人手不足企業は全体より実施する傾向が強い
早くも 2023 年のキーワードとして重要視されている「賃上げ」は、人材の獲得や定着に向けて避けては通れない要素となり得る。実際に、2023 年度の見込みでは人手不足企業(63.1%)は全体(56.5%)より高く、6.6pt の差が開いた。また、従業員数区分でみると「6~20 人」「21~50 人」「51~100 人」のような中小企業で特に賃上げ意識が高い。しかし、規模が小さい「5 人以下」では賃上げを実施する見込みは弱く、人手不足企業においても 51.4%で全体より低位となった。そうしたなかでも、企業からは“賃上げやむなし” との声が相次ぎ、「現状の資金繰りは厳しいが、人材確保のために賃金アップは仕方 ない」 (飲食料品小売、長野県)などの意見があがっている。
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◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社帝国データバンク/2月17日発表・同社プレスリリースより転載)