DX推進に関する企業の意識調査(2022年9月)
DXに取り組んでいる企業は15.5%、人材不足が課題
~兼業・副業人材の受け入れ、2割で前向きに検討~
はじめに
2021年9月にデジタル庁が発足し、1年が経過。データとデジタル技術を活用し自社の製品、サービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立するDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が企業に求められている。
そうしたなか、岸田首相は「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「GX」「DX」の四分野に官民の投資を加速させるとし、さらに、個人のリスキリング(成長分野に移動するための学び直し)に対し、5年間で1兆円規模の公的支援を実施すると表明した。
そこで、帝国データバンクは企業のDX、リスキリングへの取り組みについて調査を実施した。
※調査期間は2022年9月15日~9月30日、調査対象は全国2万6,494社で、有効回答企業数は1万1,621社(回答率43.9%)
調査結果
1.DXに取り組んでいる企業は15.5%。企業規模、従業員数で取り組み状況が二極化
DXについてどの程度理解し取り組んでいるか尋ねたところ、「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業は15.5%となった。また、「意味を理解し取り組みたいと思っている」は24.2%となり、「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」とあわせて企業の4割近くで、DXへの取り組みに対し前向きな見解となった。
取り組んでいる企業からは、「DX推進部署を新設し社内人材を配置転換。成果も上がっている」(一般貨物自動車運送、東京都)、「DX推進については外部専門企業との連携にて進めている。先々を見据えて社内人材も増やす必要性を感じている」(電気配線工事、熊本県)などの声があがった。
他方、「言葉の意味を理解しているが、取り組んでいない」(35.3%)、「言葉は知っているが意味を理解できない」(12.4%)、「言葉も知らない」(5.4%)と、依然として半数超の企業ではDXへの取り組みが進んでいない。
「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業を規模別にみると、「大企業」は26.6%で取り組んでいた。特に、従業員数が多い企業ほどDXへの取り組みが積極的な傾向があり、1,000人超では企業の47.8%と半数近くに及んでいる。
一方、「小規模企業」(8.8%)、「5人以下」(9.1%)と、小規模企業や従業員数が少ない企業では、DXに取り組む企業の割合が低い。「小規模事業所では人材が不足し、当面対応できない」(内装工事、宮城県)など、厳しい声が寄せられた。
2.DXに取り組むうえで、4割以上の企業が人材、スキル・ノウハウ不足を課題にあげる
DXに取り組むうえでの課題を尋ねたところ、「対応できる人材がいない」(47.4%)や「必要なスキルやノウハウがない」(43.6%)など、4割以上の企業で人材やスキル・ノウハウの不足に関する課題があがった。また、「対応する時間が確保できない」(33.3%)、「対応する費用が確保できない」(27.5%)など、時間・金銭面における制約を課題にあげる企業も多くみられる。
企業からは、「社内に導入しようとしても、その実務を進められる人材がいないことが最大のネック」(洋紙製造、静岡県)、「従業員にDXの考え方を定着させることが難しい」(配管冷暖房装置等卸売、熊本県)、「職員の高齢化が進み、対応できる人材が少ない」(一般乗用旅客自動車運送、北海道)といった声が寄せられた。
3.リスキリングに取り組んでいる企業は48.1%、新しいデジタルツールなどの学習が進む
リスキリングについて、何らかの取り組みを1つ以上実施している企業(「取り組んでいる」企業)は、48.1%と半数近くに及んだ。一方、「特に取り組んでいない」企業は41.5%となった。
「取り組んでいる」企業でその取り組み内容をみると、オンライン会議システムやBIツールなどの「新しいデジタルツールの学習」が48.4%でトップ。次いで、「経営層による新しいスキルの学習、把握」(38.6%)、「従業員のデジタルスキルの把握、可視化」(32.3%)、「経営層から従業員に学習が必要なスキルを伝達」(29.5%)、「eラーニング、オンライン学習サービスの活用」(28.2%)が続いた。
企業からは、「必要最低限のITスキルを身につけるべく、ITパスポート資格取得を義務化した」(医薬品・化粧品小売、東京都)、「DXに対応する知識・技術を教育するのが困難で、効果があると見込まれるIT関連資格をいくつか提示し、社員に資格取得を奨励している」(電子応用装置製造、大阪府)、「スキルマップの整備」(機械同部品製造修理、新潟県)、「現在いる従業員をDX学校へ受講させIT導入士の資格を取得。外部のDXに詳しい人材と毎月打合せをしている」(織物卸売、北海道)といった声が寄せられた。
また、「リスキングについては、従業員ではなく経営者に対する教育の機会による補助金制度を創設してほしい」(土地売買、愛知県)や、「政府からのリスキリングに関する補助政策が欲しい」(ソフト受託開発、神奈川県)など、政府にリスキリングへの支援を求める声もあがっている。
4.兼業・副業人材の外部からの受け入れ、2割の企業で前向きに検討
デジタルスキルなどを有する兼業・副業人材の外部からの受け入れについて、「現在、外部から兼業・副業人材を受け入れている」企業は3.3%、「現在、外部から兼業・副業人材を募集している」は1.2%と、あわせて4.5%の企業が兼業・副業人材の受け入れ、募集を実施していた。
兼業・副業人材の受け入れ、募集している企業からは、「副業の人材を受け入れている。広く情報を入手でき、また本業にも十分役立つ。視野が広がり、お互いにwin-winの関係で面白い」(代理商仲立業、北海道)、「副業人材は首都圏から受け入れている。圧倒的に首都圏人材の経験値が高い一方、地方では経験値が豊富な人材が探せない」(ソフト受託開発、大分県)といった声があがった。
また、「現在受け入れていないが、今後、受け入れを検討している」企業は17.4%となり、兼業・副業人材の受け入れ、募集している企業と合わせ21.9%と、5社に1社の割合で兼業・副業人材の活用へ前向きな見解となっていた。
他方、「現在受け入れておらず、今後も予定していない」は62.7%と、6割の企業では兼業・副業人材の活用に消極的な姿勢となっている。「副業人材はスキルが期待できるが、データをみせる勇気がない。情報漏洩が気になる」(内装工事、大阪府)、「兼業・副業については関心はあるものの、兼業・副業先との間で時間外勤務部分の扱いなどで導入の障壁がある」(樹脂製品加工、埼玉県)など、情報漏洩リスクや兼業・副業人員に対する労働時間の管理を懸念する声があがった。
まとめ
DXについて、「言葉の意味を理解し、取り組んでいる」企業は15.5%と、帝国データバンクが2021年12月に実施した調査(15.7%)から大きな変化はみられなかった。また、DXの取り組みに対する課題では、「対応できる人材がいない」(47.4%)や「必要なスキルやノウハウがない」(43.6%)など、半数近くの企業で人材やスキル・ノウハウの不足に関する課題があがった。
多くの企業で人材面の課題が浮き彫りになるなか、リスキリングに取り組んでいる企業が48.1%、外部からの兼業・副業人材の活用に前向きな企業が21.9%となった。一方、リスキリングに取り組んでいない企業は41.5%、兼業・副業人材を「現在受け入れておらず、今後も予定していない」企業は62.7%と、慎重に捉えている企業も多くみられる。
「専門分野に長けた副業人材の必要性は十二分に感じているが、これまでに事例がなく経営判断を行う代表の理解が得られないことが課題。好事例などを積極的に発信してほしい」(西洋料理店、静岡県)との声にあるように、リスキリング、兼業・副業人材の活用の推進に向けては、具体的な好事例を社会全体で共有する仕組みが必要であろう。
また、企業の人手不足割合も高水準で推移するなか、現在の自社において人手が不足していると認識している企業ほど、兼業・副業人材の活用に前向きな傾向がみられた。人手不足解消に向けた施策としても、リスキリングや兼業・副業人材の活用に向けた取り組みは今後重要となろう。
【内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 情報統括部
担当:池田 直紀、杉原 翔太
TEL:03-5919-9343
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◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社帝国データバンク / 10月28日発表・同社プレスリリースより転載)