企業が求める人材像アンケート
企業が求める人材像、「コミュニケーション能力が高い」がトップ
~ 中途採用では「専門性」をのぞむ声 ~
はじめに
7月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は前月比で7カ月連続して上昇したことに加え、2年3カ月ぶりにすべての都道府県で1倍を超えた。企業の人手不足感は再び高まっており、人手不足が顕著となっていた新型コロナ禍前の水準に近づきつつある。
こうしたなか、9月5日には高校生の求人応募書類の提出がスタートしたほか、10月は大手企業を中心に大卒学生の内定通知が行われるなど、新卒者の来年度入社に向けた動きが活発化している。
そこで、帝国データバンクは、企業が求める人材像についてアンケートを行った。
■アンケート期間は2022年9月2日~5日、有効回答企業数は1,550社(インターネット調査)
調査結果
- 採用活動においてどのような人材像を求めているかを尋ねたところ(3つまでの複数回答)、「コミュニケーション能力が高い」(42.3%)と「意欲的である」(42.2%)が4割超となった。採用形態については、大企業の48.8%が「新卒採用がメイン」、中小企業の60.0%が「中途採用がメイン」と回答した
- 採用形態別で比較すると、新卒採用をメインとする企業では「コミュニケーション能力が高い」「精神的にたくましい」を望む割合が高い傾向にある一方、中途採用をメインとする企業では「真面目、または誠実な人柄である」「専門的なスキルを持っている」を望む割合が高い傾向がある
1.「コミュニケーション能力」と「意欲的」が 4 割超、大企業は新卒、中小企業は中途をメインに採用
採用活動において、どのような人材像を求めているかを尋ねたところ、「コミュニケーション能力が高い」(42.3%)と「意欲的である」(42.2%)が 4 割超となった(3 つまでの複数回答、以下同)。次いで、以下、「素直である」(35.0%)、「真面目、または誠実な人柄である」(31.8%)、「明るい性格である」(21.9%)が上位となった。
主に採用するのは新規卒業者か、既に就業経験のある中途入社者かを尋ねたところ、「新卒採用がメイン」は 21.3%、「中途採用がメイン」は 56.6%となった。ただし企業規模別でみると、大企業の 48.8%が「新卒採用がメイン」と回答した一方、中小企業では「新卒採用がメイン」とした企業は 16.9%にとどまり、60.0%が「中途採用がメイン」と回答している。さらに小規模企業ではおよそ 3 社に 2 社の企業が「中途採用がメイン」(63.5%)としており、企業規模が小さいほど即戦力として期待できる中途採用の割合が高まっている。
2.新卒は「育成するうえで必要な基本的資質」、中途では「専門的スキルと誠実さ」
求める人材像について、採用形態別の新卒と中途で 5 ポイント以上の差がある項目をみると、新卒採用をメインとする企業では、「コミュニケーション能力が高い」「精神的にたくましい」の割合が高くなった。他方、中途採用をメインとする企業では「真面目、または誠実な人柄である」「専門的なスキルを持っている」の割合が高くなっている。
「技術職として資格取得や現場での経験を積んでいくためには、専門的なスキル以上に、年配者や有資格者とのコミュニケーション能力などが求められる」(一般土木建築工事、北海道)、「肉体的にも精神的にもタフな人であれば、仕事に修練できると考える」(麺類製造、大阪)といった声が企業から聞かれるように、新卒者に対しては、将来的にどのような職種に進むとしても、入社後に業務を教え育てていくうえで必要となる基本的な能力・資質が求められている。
一方で、中途入社者に対しては「ソフトウエア開発技術者を求めているが、未経験者を雇用すると生産性が出せるようになるまでの期間が長くなってしまうため、どうしても専門的スキルを有している人材となる」(ソフト受託開発、東京)、「顧客の秘められたニーズを掘り出し解決するためには、話が上手いかよりも、根底にある人柄をもとにした信頼関係が一番大事となる」(工業薬品製造、群馬)との声があるように、即戦力として業務に従事できる能力や、誠実で信頼できる人柄が求められていることが明らかとなった。
まとめ
本アンケートの結果、採用活動において企業が求めている人材像は、「コミュニケーション能力が高い」や「意欲的である」が 4 割超となった。企業規模別にみると、大企業で新卒採用メインの割合が高く、企業規模が小さくになるにしたがい中途採用メインの割合が増えている。
また採用形態別では、新卒採用は入社後に仕事を覚えていくうえで必要な基本的な能力・資質が求められる傾向にある一方、中途採用では即戦力として必要な専門性が重要視されている。
人手不足を要因とした倒産が一部で発生するなど、人材不足による企業経営への悪影響が懸念される。少子化などによって若者を中心に人材の絶対数が減るなかで、優秀な人材を確保することは容易でないが、経営上の重要度は高い。そのため企業を安定的に運営し成長させていくうえで重要な資産である人材を、適切に採用し育成することがこれまで以上に肝要といえる。
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(株式会社帝国データバンク/9月12日発表・同社プレスリリースより転載)