新型コロナ下における人材確保に関する企業の現状
コロナ病床などでは医療関係者の人手が不足
~ 人材派遣業26.2%の企業で売り上げ伸長も業界内で明暗 ~
オミクロン株の出現で新型コロナウイルス(以下、「新型コロナ」)の新規感染者数が全国各地で過去最多を更新、2022年1月26日には初めて1日の感染者数が7万人を超えました。そのようななか、2021年の年末から現在にかけて、様々な場面で人材確保に関して影響が表れています。そこで、帝国データバンクは、新型コロナ下における人材派遣・紹介業の現状について分析しました。本調査は、「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2021年12月)」と帝国データバンクの企業概要ファイル「COSMOS2」をもとに分析を行いました。
※新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2021年12月)は2021年12月16日~2022年1月5日、調査対象は全国2万3,826社で、有効回答企業数は1万769社(回答率45.2%)。なお、分析に活用した人材派遣・紹介業は調査対象164社で有効回答企業数は65社(回答率39.6%)
<調査結果>
1.新型コロナ下における人材派遣・紹介業への影響
2021 年の年末から年始にかけて各地で人出が増加、消費活動も活発化し、企業の人手不足感も高まっていました。そこで、人材派遣・紹介業に着目して新型コロナの業績への影響をみると、人流が大きく制限されていた2020年4月にマイナスの影響を見込む企業は 9 割超となっていました。しかし、それ以降は濃淡があるものの減少傾向で推移。また、直近の 2021 年12 月では 78.5%とやや高まりをみせています。
企業からは「海外人材が入国できない」(労働者派遣、神奈川県)とあるように、2021 年 11 月 30 日から強化された水際対策の影響を受けているといった意見があがっていました。一方で、「ワクチン接種会場の案内業務やコールセンター業務の受注が増えている」(労働者派遣、兵庫県)といった、新型コロナの影響で拡大した需要を掴んでいる声も聞かれました。
2.新型コロナ前後の売上高、企業の専門分野などにより明暗分かれる
新型コロナの流行前の 2019 年度と 2021 年度の各社の売上高を比較すると、減少となった企業は 61.5%となり、増加(26.2%)または横ばい(12.3%)の企業は 38.5%でした。とりわけ、技術系人材を専門とする企業で増加がみられていました。
また、昨今新型コロナの感染者数が急増するなかで、医療関係者の確保は喫緊の課題となっています。医療や介護関係などの専門人材を扱う企業に焦点を当てると 3 割超の企業で増加となっていました。
派遣元企業の専門分野や得意分野、企業規模などによって明暗が分かれている様子がうかがえます。
加えて、医療人材を専門とする人材派遣・紹介業界の企業に取材をしたところ、新型コロナ下における医療現場の人材確保について以下の声が聞こえてきました。
・新型コロナの流行初期の頃は、外来控えやオンライン診療の発達などもあって医療関係者が過剰となった状況が生じていた
・一方で、現在は新規感染者数や濃厚接触者数の増加も重なり、「新型コロナ病床に関係する医師や看護師の確保が困難になっている」
<まとめ>
2021 年の年末までの状況は、緊急事態宣言などが解除され、街の賑わいが徐々に戻るなか、人手不足感が高まっていました。しかし現在、各業界における人材確保や適正な人員配置は、難しい状況と言えそうです。例えば、旅館・ホテルなどをはじめとする観光や飲食に関連する業界においては、急なキャンセルなどで人余りの状況が生じている企業もあります。一方で、前述したとおり一部では医療関係者が不足している事態も生じています。
ただし、4 月以降は現在の状況からある程度落ち着くとみている企業もあり、ホテルや飲食に関連する業種では調理をはじめとする専門的な技術を持つ人材が再び求められると予想されます。
人材の確保は、企業単独の取り組みでは対応しきれない部分も多くあるため、国や行政などからの迅速な支援の実行や既存制度の拡充、見直しなどが必要です。
■お問い合わせ先
株式会社帝国データバンク 東京支社 情報統括部 産業情報分析課
TEL:03-5919-9344 E-mail: keiki@mail.tdb.co.jp
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社帝国データバンク/1月27日発表・同社プレスリリースより転載)