『日本企業の経営課題2021』 調査結果速報【第7弾】 研修・人材育成において重視しているテーマ
新入・若手、中堅社員、課長層向けの階層別研修がトップ3。ハラスメント研修も8割超
大企業では「女性リーダーの育成」「ダイバーシティの理解」を重視する比率が高めに
一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。今年は2021年7~8月に実施し、517社からの回答を得ました。
今回は第7弾として、研修・人材育成において重視しているテーマについての調査結果をご報告します。なお、KAIKA研究所所長の近田による「調査結果を受けてのコメント」(本調査のまとめ)を最後に掲載しています。
■トピックス
- 研修・人材育成において重視しているテーマのトップ3は、階層別研修
第1位:「中堅社員の業務遂行能力の向上」(87.8%)
第2位:「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」(86.3%)
第3位:「課長層のマネジメント力の向上」(85.9%)
「ハラスメント研修」「コンプライアンス研修」を重視する比率も8割を超える - 大企業でより重視度の高いテーマは、「女性リーダーの育成」「ダイバーシティの理解」
■「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」概要
調査時期 :2021年7月20日~8月20日
調査対象 :JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,000社)
調査方法 :郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数517社・回答率10.3%
■調査結果
1.研修・人材育成において重視しているテーマのトップ3は、階層別研修
第1位:「中堅社員の業務遂行能力の向上」(87.8%)
第2位:「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」(86.3%)
第3位:「課長層のマネジメント力の向上」(85.9%)
「ハラスメント研修」「コンプライアンス研修」を重視する比率も8割を超える
- 本調査では、18項目の研修・人材育成テーマを挙げて、それぞれについての重視度を尋ねました。結果、「重視している」との比率(「非常に」~「やや」の合計)が高い順に、第1位:「中堅社員の業務遂行能力の向上」(87.8%)、第2位:「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」(86.3%)、第3位:「課長層のマネジメント力の向上」(85.9%)となり、いわゆる階層別研修がトップ3を占めました。そのほか、「部長層のマネジメント力の向上」の比率も8割を超えています。
- 本調査の経営全般の課題において、今年は「人材の強化」の比率が上昇するという結果が見られていましたが、組織の中核をなす若手・中堅社員~課長層を対象とした人材育成が重視されていることがうかがえます。
- また、「ハラスメント研修」を重視している比率が80.2%と高めになっています。2020年6月施行された法改正によって義務化されたことが、如実に表れていると言えるでしょう。「コンプライアンス研修」も81.4%となっており、法令順守に関わる研修が重視されていることがわかります。
2.大企業でより重視度の高いテーマは、「女性リーダーの育成」「ダイバーシティの理解」
- 項目1の研修・人材育成テーマの重視度に関する設問への回答結果について、「非常に重視している」=6点、「重視している」=5点、「やや重視している」=4点、「あまり重視していない」=3点、「重視していない」=2点、「まったく重視していない」=1点として、従業員規模ごとの平均点を算出し、比較をしたところ、全般的に大企業の方が、重視度が高くなっている結果が見られました。
- 全体でも重視度が高かった新入・若手社員から中堅社員、部課長層を対象とした階層別研修については、大企業だけではなく、中堅・中小企業でも、重視する比率が高めになっていることがわかります。
- 特に、大企業と中小企業の重視度の差異に着目すると、「女性リーダーの育成」「ダイバーシティの理解」について、乖離が大きくなっています。大企業においては、女性登用比率や活躍推進に向けた取り組みについての情報開示が求められるなど、女性リーダーの育成やダイバーシティの促進が課題となっていることがうかがえます。
■調査結果を受けてのコメント(一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志
)
- 今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2021年度の調査結果速報の第7弾として、重視する研修・人材育成のテーマについての調査結果をご紹介しています。
- ご覧いただいたとおり、全体としては、新入・若手社員~中堅社員~部課長層を対象とした、いわゆる階層別研修の重視度が高くなっていることがわかりました。
- 本調査の第1弾のリリース※1でご紹介したとおり、経営全般の課題において、今年は「人材の強化」の比率が上昇するという結果が見られ、また、組織・人事領域の課題では、「管理職層(ミドル)のマネジメント能力向上」が第1位の課題となっていました。
- 今回の研修・人材育成テーマにおける重視度の結果には、こうした経営課題認識が表れていると言えるでしょう。ジョブ型雇用が議論される昨今ではありますが、組織の中核を担う社員の業務遂行力やマネジメント力の向上が、引き続き重要視されているということも興味深い結果です。
- また、リリース本文では触れませんでしたが、「若手社員を対象としたキャリア研修」を重視する比率も高めになっていることに着目したいと思います。「中高年齢層を対象としたキャリア研修」よりも高くなっています。人生100年時代と言われるなか、早い段階からキャリア意識を醸成するとともに、自らの成長を意識づけることで、定着を図りたいという狙いがあると考えられます。
- 従業員規模別の比較として、大企業において、「女性リーダーの育成」や「ダイバーシティの理解」の比率が中堅・中小企業よりも高めになっているという結果も見られました。多くの大企業において、女性管理職比率など、女性活躍促進に関する情報開示がされていますが、ESG投資が広がるなか、さらなる強化が求められているという背景があると思われます。加えて、LGBTQや障がいのある方々と共生する社会に向けた取り組みも求められており、ダイバーシティの促進に向けた研修が、一層、重要となってくるでしょう。そうした、多様性が活かされる職場をつくることによって、新たな発想が広がり、イノベーションの実現に結び付くことが、大いに期待されます。
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(一般社団法人日本能率協会/10月18日発表・協会プレスリリースより転載)