高校新卒採用についての企業動向調査21年(9月)
22卒「増やす・昨年同様・新たにはじめる」が8割と採用意欲高まる
21年入社「半年未満で離職」が35%と入社後の離職防止に課題
高校生の就職を支援するジョブドラフトの運営と企業の高校新卒採用支援を行う株式会社ジンジブ(本社:大阪府大阪市、代表取締役:佐々木 満秀)は、新卒採用担当者向けに2022年卒の採用活動や採用後のフォロー、就職活動のあり方に関する調査を実施いたしました。(調査期間:2021年8月27日~9月6日、有効回答数:638人、うち高卒採用実施は398人)
<調査結果サマリー>
- 高卒22卒採用計画「増やした」「昨年同様」「新たにはじめる」が80%と採用意欲高まる。理由1位は「若手採用」。
- 高卒に期待するのは「長期戦力」、一方、高卒採用する上での課題点は「入社後の離職防止」が53%と最多。
- 高卒社員の定着に向けた取り組みの1位は「入社後の研修制度の充実」、2位は「定期的な面談」。
調査背景
高校生の就職活動は一人一社ずつの応募や短期間での応募先確定など学校を介して行われる「学校斡旋」が一般的です。高い内定率を誇る一方、リクルートワークス研究所の調査によると高校生は「1社だけを調べ見て、1社だけを受けて、1社に内定した人」が55.4%と、半数以上が1社だけを見て就職活動をする状況があり(※1)、採用時のミスマッチや、入社後の早期離職が課題視されています。
2022年3月に卒業する高卒採用では、2021年7月末時点の求人数が約34万6千件(昨年同期比2.9%増加)、求人倍率は2.38倍(同0.30ポイントの上昇)(※2)と、求人数・求人倍率は昨年同時期と比較し回復しましたが、新型コロナウイルス感拡大以前の一昨年の求人数と比較すれば22.1%減少しております。一方で、求職者は14万4935人(同10.3%減少)と長引くコロナの影響で大幅に減少しています。2021年3月卒の内定率は例年並みと高い水準でしたがコロナの影響を受け、希望の業種・職種・エリアの変更、職場見学をせずに就職先を決めざるを得ない実態がありました。また当社で6月末に行った調査では「入社3か月以内で既に離職者が出た企業」の割合は36.8%に上り(※3)、コロナ禍での情報収集不足が引き起こす入社後のミスマッチを懸念しています。
本調査では、新卒採用担当者に対して、22年3月卒の高校新卒採用の採用計画や採用活動、定着率を高めるための取り組み、これからの高卒採用の在り方についてのアンケートを行い、22卒の動向と就職活動時のミスマッチの軽減について考察いたします。
※1 「高校卒就職当事者に関する定量調査」リクルートワークス研究所
※2 「令和4年3月高校・中学新卒者のハローワーク求人における求人・求職状況(7月末時)」 厚生労働省
※3 高校新卒採用についての動向調査21年(6月)ジンジブ調べ
調査概要
【調査期間】 1.2021年9月2日~9月6日 2.2021年8月27日~9月3日
【調査方法】 1.インターネット調査法 2.メールによるアンケート回収
【調査対象】 企業の新卒採用ご担当者
【有効回答】 N=638人(うち高卒採用実施は398人)
<主な調査結果>
■22年卒の高卒採用活動について
1.22卒の高卒の採用計画にて昨年と比較し求人募集人数の増減はありますか。(n=397)
高卒採用を行っていると回答した方に2022年卒の高卒採用の募集人数の増減について質問したところ、「増やした」が27.5%、「変わらない」が46.9%、「減らした」が15.1%、「新たにはじめる」が5.5%、「採用を辞める」が0.3%、「未定・分からない」が4.8%でした。「増やす」「変わらない」の回答が74.4%と、昨年同時期の調査(2020年9月)と比較し5.4ポイント上昇、前回調査(2021年6月)と比較し6.1ポイント上昇しました。
「新たにはじめる」の回答を合わせ、約8割が採用意欲の高い状況であることが分かります。
2. 22卒の大卒・短大・専門卒の採用計画にて昨年と比較し求人募集人数の増減はありますか。(n=543)
2022年卒の大学・大学院・短大・専門卒採用の募集人数の増減について質問したところ、「増やした」が23.9%、「変わらない」が49.5%、「減らした」が16.2%、「新たにはじめる」が3.7%、「採用を辞める」が1.5%、「未定・分からない」が5.2%でした。「増やした」「変わらない」の回答が73.4%と、前年同時期の調査(2020年9月)と比較し14.4ポイントの上昇、前回調査(2021年6月)とはほぼ横ばいの結果となりました。
3.コロナ禍2年目の高卒採用活動で、例年と違った点はありますか。【複数回答可】(n=397)
高卒採用を行っていると回答した方に(以下問4~8まで同様)コロナ禍2年目の高卒採用活動において、例年と違う点について質問したところ、「高校訪問できる数が少なくなった」が40.3%、「職場見学の数が減った」が27%、「高校生に直接情報が届けられなかった」22.2%、「エリア外・県外への採用活動ができなかった」21.4%、「業績予測が見通せず採用計画が立てにくかった」が19.1%、「オンライン職場見学・面接の対応が増えた」」17.1%、「コロナ禍での影響は特にない」14.6%でした。
緊急事態宣言下での22卒採用活動では、学校訪問や職場見学など、対面を重視する活動の機会が減ったことへの回答が多くありました。
4.22卒の高卒採用ではどんな採用活動を行いましたか。【複数回答可】(n=397)
2022年卒の高卒採用活動について質問したところ、「ハローワークでの求人票取得」が79.6%、「学校訪問」が68.8%、「求人票発送」が62.7%、「職場見学の実施」が62%、続いて「求人ナビサイトへの掲載」、「会社説明会の開催」、「インターンシップの受入れ」、「民間企業による合同企業説明会への参加」、「ハローワークによる合同企業説明会への参加」でした。
コロナの影響で対面での採用活動が減ったことにより、前年の調査(2020年12月)と比較し「求人サイトへの掲載」が増加しており、民間支援を利用する企業が増えた可能性があります。
5.22卒の高卒採用では職場見学の受入は実施しましたか。(n=397)
2022年卒の高卒採用活動において、職場見学の受入について質問したところ、「対面・オンラインで実施した」が25.4%、「対面で実施した」が42.8%、「オンラインで実施した」が9.1%、「希望はあったが実施できなかった」が3.8%、「希望がなかった」が9.8%、「実施していない」が8.6%でした。
コロナ禍での対応として、34.5%の企業がオンライン職場見学を実施しています。一方で対面での職場見学の良さを求める高校生、企業も多数いることが分かります。
6.22卒の高卒採用では面接でのオンライン導入は検討されていますか。(n=396)
2022年卒の高卒採用において、面接でのオンライン導入について質問したところ、「対面で実施する」が33.5%、「オンラインで実施する」が8.6%、「対面・オンラインどちらも実施する」が33%、「実施しない」が16.9%、「未定・分からない」が7.8%でした。41.6%の企業がオンラインでの面接を実施すると回答がありました。
内定までの期間で接点が少ない高卒採用では大卒採用と比較すると対面を重視する傾向がありますが、前年の調査(2020年12月)と比較しオンライン面接の実施を検討する企業は19.5ポイント上昇し、コロナ禍での面接対応や、県外などの高校生の応募などに柔軟に対応できるようにオンラインの導入を行った企業が増えたことが分かります。
■高卒採用について
7.高卒人材の魅力はどこにありますか。【複数回答可】(n=397)
高卒人材の魅力について質問したところ、1位は「長期戦力が見込める」の65%、2位は「人材の良さ(素直、熱心、飲み込みが早いなど)」の53.9%、3位は「組織構造の改善」の33.5%、続いて「既存社員の意識の向上」、「会社の社風が良くなる」、「企業文化の浸透が早い」、「会社の理念、制度などの見直しにつながる」でした。
8.高卒採用を始めた理由を教えてください。【複数回答可】(n=397)
高卒採用を始めた理由について質問したところ、「若手人材の採用のため」が74.6%、「人材不足のため」が48.4%、「高卒採用が自社に合っているため」が32.5%、「多様な人材の採用活動を行いたいため」が28.5%、「業績が向上し人員拡大が必要なため」が22.2%、「社風改善・文化形成のため」が19.6%、「採用費が抑えられるため」が16.6%、「コロナ禍が採用のチャンスだと感じたため」が9.1%でした。
長期的な人材育成・開発のために高卒採用を行っている企業が多いことが伺えます。
9.高卒社会人の第二新卒人材の採用に興味はありますか。(n=638)
新卒採用の担当者全体に、機会があれば卒業後も進路が未決定の高校生や、入社半年以内に離職した高卒人材の採用に興味があるかを質問したところ、「ある」が67.9%、「ない」が19%、「分からない」が13.2%と回答しました。3分の2以上が高卒社会人の第二新卒に興味があると回答があり、若手採用への関心の高さが伺えます。
10.高卒採用をする上での課題点はどこにありますか。【複数回答可】(n=397)
高卒採用を行っていると回答した方に(以下問11~17まで同様)高卒採用をする上での課題点ついて質問したところ、「入社後の離職防止」が52.9%と最も多く、次いで「生徒との関係構築」が50.4%、「高校生へ直接アプローチする手段がない」が47.9%、「育成・研修制度」が42.1%、「採用戦略」30.7%、「オンラインの活用」が23.2%、「採用にかかる工数」が15.1%でした。
■高卒人材の離職と定着の取組について
11.21年入社の高卒社員の中で、すでに離職した人はいますか。(n=308)
所属する会社で2021年卒に入社した高卒人材の中ですでに離職した人がいるか質問したところ、「いる」が35.1%、「いない」が62.7%、「答えられない」が2.3%でした。前回調査(2021年6月)では「いる」の回答が36.8%でした。 ※就職者全体の離職率ではございません。
12.離職の時期はいつ頃ですか。【複数回答可】(n=108)
問9で「すでに離職した人がいる」と回答した方に離職の時期について質問したところ、「4月」が19.4%、「5月」が37%、「6月」が43.5%、「7月」が32.4%、「8月」が28.7%、「9月」が17.6%でした。特に入社3か月以内の離職率が高いことが分かります。
13.離職の理由について教えてください。【複数回答可】(n=108)
問9で「すでに離職した人がいる」と回答した方に離職の理由について質問したところ、1位「業務内容でのミスマッチ」の50%、2位「人間関係によるストレス」の48.1%、3位「他にやりたいことが見つかったため」の27.8%、続いて「病気や怪我などによる健康状態の悪化」、「長時間労働のため」、「待遇や福利厚生に対する不満」、「家庭の事情」、「キャリア形成が望めないため」でした。
14.高卒人材が定着するためにどんな対策を行っていますか。【複数回答可(n=397)
高卒人材が定着するための対策について質問したところ、1位が「入社後の研修制度の拡充」、2位が「定期的な面談」、3位が「給与・手当」、4位が「入社前のフォロー」、5位が「福利厚生の充実」、続いて「メンター制度の導入」、「評価制度」、「外部研修の参加」、「懇親会などのイベント」、「休暇制度」でした。
15.高卒人材が定着するための具体的な取組み・制度があれば教えてください。(n=134)
回答より一部抜粋
- 面談やカウンセリングを頻繁に実施し、悩み事や仕事の上での困った事が無いか聞き取りをしている。
- 定期的な面談と目標を設定する育成計画。
- 外部の企業に委託したカウンセリング制度。
- 新卒向けのフォローアップ研修の実施。
- 同じ学校の卒業生を指導員として配置している。
- 歳が近い社員が教育を行うブラザー制度。
- 給与の見直し(大卒社員と同じ給与形態にする)
- 資格取得支援制度、借上げ寮・社宅制度の導入。
- 評価による報奨金や決算賞与の支給など、やりがいを感じる制度を積極的に実施
- 評価と処遇(昇給賞与)がリンクし全社員にオープンになっている人事制度の運用
- 保護者向けの説明会の実施。
- 家庭訪問の実施。
- 同期入社者同士のつながりを強化し、仲間意識を醸成する。
- 高卒内定式や社内成人式などのイベントを開催。
- 店舗間でのコミュニケーションを取るための懇親会などのイベントを実施。
■高校新卒採用の仕組みについて
16.和歌山県で複数応募が開始されました。お勤めの都道府県でも始まるべきでしょうか。(n=397)
高校生の就職活動での複数応募について質問したところ、「応募開始から複数社応募を導入した方が良いと思う」が43.6%、「応募開始時期は一人一社応募が良いと思うが、複数社応募できる時期を早めた方が良いと思う」が28.7%、「応募開始時期は一人一社応募が良いと思うし、スケジュールも今のままが良いと思う」が15.4%、「分からない・答えられない」が11.1%でした。
応募開始から複数社応募を導入した方が良いかは意見が分かれた形となるものの、7割を超える採用担当者が、従来の一人一社制の仕組みを見直した方が良いと回答がありました。
17.学校あっせん(先生が就職活動の仲介をする)の仕組みをどうお考えでしょうか。近いものをお選びください。(n=382)
高校生の就職活動での、学校あっせんの仕組みについて質問したところ、「高校生に直接求人情報提供し、高校生が企業に直接応募できるようにした方が良いと思う」が22.5%、「高校生の直接求人情報提供し、高校生が学校斡旋でも直接でも企業に応募できるようにした方が良いと思う」が34.8%、「高校生へ直接求人情報提供するが、企業への応募は学校斡旋が良いと思う」が21.2%、「求人情報提供も、企業への応募も学校斡旋が良いと思う」が11.5%、「分からない・答えられない」が8.4%でした。高校生が直接応募できる
仕組みを求める回答が半数を上回りました。
<アンケート調査結果を受けて>
本アンケート調査によると、22卒の高校新卒採用の募集増減は「増やした」27.5%、「変わらない」46.9%、「新たにはじめる」5.5%を合わせて79.9%と、昨年同時期や前回調査時期と比較しても22卒の高卒採用意欲は高まっていると言えます。高卒採用の募集人数を「増やす・変わらない・新たに始める」理由を「若手採用のため」74.6%と回答した点や、3分の2以上の新卒採用担当者が高卒社会人の第二新卒人材の採用に興味があるとの回答した点からも、コロナ禍であっても「長期戦力」と期待して若手人材を求める企業が多いことが分かります。
採用意欲の高まりと反して22卒の高卒採用活動では、「高校訪問できる数が少なくなった」40.3%、「職場見学の数が減った」27%、「高校生に直接情報が届けられなかった」22.2%と、特に対面での接点を重視した採用活動の機会がコロナ禍の影響で減ったという声が多く上がりました。
また、ミスマッチを防ぐためにも一人一社制の仕組みについては7割以上が見直しを、学校斡旋の仕組みについては半数を上回る方が、直接高校生が企業に応募できる仕組みを求めていることも分かりました。
つまり、企業は若手人材を求める一方で、従前から続く制度に加え、コロナ禍の中で限られた採用活動を強いられていることが伺えます。これは同時に、今後のwithコロナの日本において、現在の課題を解決する方法が広まれば、若手人材採用市場は一層の伸長を見せる可能性を秘めているということでもあります。
高校新卒入社後において課題を感じている点は、「入社後の離職防止」が52.9%と最多でした。また21年卒の高卒人材を採用した企業の約35%が入社6か月未満、特に5、6月にかけて多くの離職者が出ていることが分かり、入社前の採用活動と同時に、入社後の受け入れ体制についても課題を感じている方が多いことが分かります。離職の理由で最も多かったのは「業務内容でのミスマッチ」、続いて「人間関係によるストレス」でした。企業は、採用活動の段階で一層自社を理解してもらう動きを加速させる必要があると言えます。
一方で、企業は入社後の早期離職を防ぐために「フォローアップ研修」の実施など、育成のための制度の充実や、メンタルケアを目的とした「定期的な面談の実施」「メンター制度の導入」、「福利厚生や評価制度の見直し」を行っています。このような改善行動からも、企業は高校新卒を含む若手人材が将来を創る人財としてとらえていることが見て取れます。
以上のことを踏まえて、企業は若年層人財不足の解決として高卒採用に着目しており、課題である1年未満の早期離職を軽減するために採用活動時にオンラインや民間サービスを活用し高校生との接点を増やし会社の理解を深めミスマッチの軽減に努めています。また、入社後の教育や丁寧なメンタルケアでの入社後のフォローを行い、長期的な人財として期待していることが分かります。特に高卒市場においても、今までの慣習や常識にとらわれない採用活動や、実際の入社後の受入体制の整備、など、過去例を見ない市場の成長が見込まれています。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社ジンジブ/9月29日発表・同社プレスリリースより転載)