人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、人事・総務関連業務アウトソーシング市場を調査し、主要14分野サービスの動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
1.市場概況
2018年度の人事・総務関連業務のアウトソーシング市場規模(主要14分野計)は、前年度比6.6%増の7兆7,823億円であった。内訳を見ると、シェアードサービス市場(シェアードサービスセンター、学校法人業務アウトソーシング)が前年度比3.4%増の4,255億円、人事業務アウトソーシング市場(給与計算アウトソーシング、勤怠管理ASPサービス、企業向け研修サービス、採用アウトソーシング(RPO)、アセスメントツール)が同4.5%増の9,174億円、総務業務アウトソーシング市場(従業員支援プログラム(EAP)、健診・健康支援サービス、福利厚生アウトソーシング、オフィス向け従業員サービス)が同7.1%増の2,563億円、人材関連業務アウトソーシング市場(人材派遣、人材紹介、再就職支援)が同7.1%増の6兆1,831億円で、人材関連業務アウトソーシング市場が全体の約8割を占めている。
主要14分野のうち、経済安定期においてサービス需要が縮小する「再就職支援市場」を除いた13分野で市場規模が拡大した。特に、働き方改革を背景に時間管理を通じた生産性向上に欠かせない「勤怠管理ASPサービス市場」、就労人口減少による人材確保難を受け、若年層を中心とした優秀人材獲得手段としてサービス需要が拡大している「採用アウトソーシング(RPO)市場」や「人材紹介市場」、働き方改革や人材不足に加えて、従業員の健康維持・増進による雇用維持や生産性向上を支援する「福利厚生アウトソーシング市場」の4分野が二桁のプラス成長となり、市場全体の拡大を牽引した。
2.注目トピック
サービス需要の裾野が中小企業へ拡大
人事・総務関連業務を外部委託するユーザー企業を取り巻く環境を見ると、近年は好景気により業績が拡大し、資金的な余裕が生まれたこと、就労人口の減少により人材確保難が顕在化して貴重な社内人材をコア(中核)業務に配置する流れが生まれていること、業務に精通した熟練労働者の定年退職などから、間接業務である人事・総務系業務を外部委託する機運が高まり、アウトソーシング需要が拡大している状況にある。特に大企業では、本業に対して経営資源を集中投下する一方で、間接業務の経費をより一層圧縮する方向にあり、選択肢としてアウトソーシングの活用に踏み切るところが増加している。活用範囲も拡大しており、以前から行われてきた業務システムの外部活用に加えて、人を介した業務に関しても外部委託する動きが活発化している。さらに、大企業をターゲットとしたサービス需要の取り込みが一巡したような分野では、従来積極的にアプローチをしてこなかった中堅・中小企業に移行しており、サービス導入先であるユーザー企業の裾野が広がりを見せていることも、市場全体の拡大の追い風となっている。
3.将来展望
人事・総務関連業務アウトソーシングは近年、サービスを導入しているユーザー企業のリピート需要や提供サービスの深耕、中堅・中小企業を中心としたアウトソーシングサービス未導入企業までサービス需要の裾野が拡大している流れを受けて、サービスの高付加価値化やサービスを一括提供するワンストップ化が進展、効率的な需要取り込みが進められており、市場のさらなる拡大が期待できる状況にある。特に、中堅・中小企業のサービス需要に関しては、クラウドサービスの登場で、安価に利用できるサービスが急速に顕在化していることから、市場を活性化する役割を果たしている。この流れはここ数年、継続かつ広がっていく様相を呈していることから、市場の拡大を促す牽引役として今後も注目していく必要があるといえる。
また、国が打ち出す施策はサービス需要を促す起爆剤として一定の役割を担っていくことが期待される。その意味において、目下の注目施策は「働き方改革」であり、今後も注目される。
その他、急速に進展している業務のICT化(HRTech)への対応も大きな注目ポイントであり、さらなる効率化に向けた提供サービスの見直し、いわゆる労働集約型から知識集約型への提供サービスの見直しとともに、社内業務の生産性向上へ向けた業務フローの抜本的な見直しの観点から、ロボット(仮想知的労働者=RPA)などを活用した定型業務のシステム化や業務そのものの平準化に対応したサービスが今後ますます注目されるとみる。
このように、人事・総務関連業務アウトソーシング市場の外部環境は成長要因が多い状況にあるが、2020年初に発生した新型コロナウイルス感染症拡大により人の往来が自粛、経済活動もままならない状況下にあることから、市場に与える影響等を今後も注意深く見守っていく必要があると考える。
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(株式会社矢野経済研究所 / 6月1日発表・同社プレスリリースより転載)