変わる転勤制度 廃止に踏み切る企業も
家族の介護を担う労働者や共働き世帯の増加などにより、転勤制度の行方が注目されている。安定した雇用や、転勤者への割増賃金「転勤プレミアム」などと引き換えに、企業が自由に人を動かす時代ではなくなってきた。
保険大手のAIGグループは、2019年4月1日より、会社都合による転居を伴う転勤を廃止する。2018年から大阪で試験運用していたものを、全国へ広げる。社員は希望勤務エリア・都道府県を選択。そのエリア内のみで異動する。社員自身が別エリアへの異動を求める場合は、社内制度を活用して変更することができる。
特定の地域で事業を展開する企業に勤めている場合、家族らの都合で地域外に引っ越すと退職せざるをえなくなる。そこで、東京急行電鉄や近鉄グループホールディングスなど、東京・大阪・名古屋・福岡の4大都市圏の大手民間鉄道会社11社は2018年6月、「民鉄キャリアトレイン」を発足。各社のエリア外に転居する社員を相互に受け入れている。
ほかにも多くの企業が地元で働くことを望む人を地域限定正社員として雇うなど、転勤に対する考え方は変わりつつある。かつて従業員の多くは、自身のキャリア形成を会社に任せ、命じられたとおりに転勤や異動を受け入れてきた。しかし、現在は人生100年時代とも言われ、主体的に自身のキャリアを考え、行動する人が増えている。企業には、従業員が自分自身でキャリアプランを描くための仕組みを設けること、また、それを実現するために支援していくことが求められるだろう。
(『日本の人事部』編集部)