日本企業の大多数が“イノベーション”を今年の主要な経営課題とし、組織の再設計を計画していると回答。従業員はワークライフバランスのコントロールを求めている~『2018年グローバル人材動向調査』を発表:マーサー
創造的破壊(disruption)に関する数年間にわたる議論を経て、経営幹部は議論を実践に移す決断を下している。マーサーの『2018年グローバル人材動向調査(Global Talent Trends Survey)』によると、92%の日本企業が"イノベーション"を今年の主要な経営課題とし、88%の日本企業が、組織の再設計を計画していると回答している。同時に従業員の側は、より柔軟な労働形態の選択(38%)などによる、ワークライフバランスのコントロールを求めている。"変化する能力"が、競争の激しい世界の中で成功を収めるための重要な差別化要因となっており、企業組織の課題は、従業員をその変化の旅路に導くことにある。特に日本では、従業員が組織に求めるトップの項目が"明確な方針を定めるリーダー"であることがわかった。
・グローバル人材動向の5つのトレンド-"迅速な変化(Change@Speed)"、"目的意識の共有"、"永続的な柔軟性"、"人材プラットフォーム"、"デジタル化の徹底"である
・日本企業の大多数が“イノベーション”(92%)を今年の主要な経営課題とし、組織の再設計(88%)を計画していると回答
・従業員は、より柔軟な労働形態の選択などによる、ワークライフバランスのコントロールを求めている
「今年は、"新時代の働き方"への転換に対する、経営層の明らかな熱意を見ることとなりました。彼らは、競争力を維持するために、一時的な変革というよりもむしろ、持続的な進化をするという経営課題を追求しています。彼らは、人材の持つスキルと先進的なデジタル技術を組み合わせることで、ビジネスを前進させられることに気付いています。」と、マーサーのキャリア部門プレジデントのイリヤ・ボニックは語る。
新たな技術を求めていく中で、経営幹部は自身の組織に力を与える「ヒューマン・オペレーティング・システム」に焦点を当てなくてはならない。マーサーは、2018年の調査で、5つのトレンドを見出した-"迅速な変革(Change@Speed)"、"目的意識の共有"、"永続的な柔軟性"、"人材管理プラットフォーム"、"デジタル化の徹底"である。
迅速な変化(Change@Speed)
企業が未来の働き方に対してどのような準備をするかは、どの程度の創造的破壊が予期されているかによる。最大級の創造的破壊を予想している企業は、敏捷性を自らのビジネスモデルに取り込むことに努め、より広いネットワークを構築することに投資をしている。(日本企業の27%が、社内外をまたがるネットワーク・コミュニティを構築している)。個々人に組織としての力を与えることは、組織としての能力と対応力をより早く築く上で重要なものとなる。もっとも、日本の人事リーダーは、既存の社員の再教育(リスキリング)への取り組みも不十分だと感じており(うまくいっていると確信している人事リーダーはわずか25%)、また、外部からの人材獲得のための備えも不十分(同26%)だと感じている。経営幹部の4分の1(24%)は、今後5年間の内に組織内の5分の1の仕事がなくなるであろうと予測し、仕事の転換と再教育(リスキリング)に備えることが企業の生き残りにとって重要な課題であるとしている。しかし、オンラインでの学習コースへのアクセスを増加させている企業は30%に過ぎず、人材を社内で積極的にローテーションさせている企業は、わずか19%に過ぎない状況である。
目的意識の共有
日本において、個人としても職業人としても充実感を感じている活気のある従業員の半数以上(58%)は、自身の所属している企業は、意義ある目的に対する強い意識を持っていると回答している。仕事への目的意識を見出すために、従業員は異動や学習、様々な試験的な試みを切望する。もし、それが見出し得なければ、社外に機会を求めるようになる。現在の職場で満足していると回答している日本の従業員の中でさえ、24%が、キャリアの機会が不足しているという理由から、離職を考えているという状況にある。仕事の意義に加えて、新たな価値判断として、健康と金銭的な豊かさという要素が入っている。日本の従業員は、平均して週に約14時間の労働時間を金銭面で抱えている心配事に費やしている。これは、世界的に見て最も高い数値である。しかし、従業員の金銭的な健全性対処する方針を持つ日本の企業は22%に過ぎない。企業は、公正な処遇とポジションへのサクッセッションプランについてトップの優先度を置いているが、自身が属する企業が報酬と昇進の意思決定において公平性を確保していると回答している従業員は18%に過ぎない。「企業は、従業員が基本的な生活の安全を心配する必要がないように努め、次なるキャリアに向けて努力するよう促すことで、従業員がより高いプライドと情熱と目的意識を持つようになり、結果として企業がリターンを得るようになります。」と、ボニックは語る。
永続的な柔軟性
個人は、自身のワークライフバランスをコントロールするために、仕事の仕方に対する自身の希望を口にするようになっている。従業員はより柔軟な労働の選択肢を望んでおり、企業は、その声に耳を傾け始めている。―日本では、経営層の65%は、柔軟な働き方を自社の価値提案の中心をなすものとみなしている(比較して、世界では80%である)。柔軟な働き方を実現するという点について、自社が業界のリーダー的な地位を占めているとみなしている人事は3%のみである。そして、従業員の半数以上(57%)は、柔軟な働き方を選択することが自身の昇進に与える影響を恐れている。
「柔軟な働き方に関する環境が欠けていると、女性や高齢労働者に過度な負荷をかけることになり、欠勤や仕事へのエネルギーの低下、燃え尽きにつながります。」とボニック氏は語る。「スキルのギャップが広がり、人材の能力がより重要になるにつれ、あらゆるライフステージにある多様な人材が活動できるようにすることが、ビジネスにおいても、社会的にも不可欠なこととなっています。」
人材プラットフォーム
経営幹部の78%が人材獲得競争の激化を予期している中、企業は、自社の統合的な人材管理システムを進化させ、デジタル時代の人事モデルにアップデートする必要性を理解している。まさに今がその時である。2018年には、5社中2社が、より多くの人材を外部から"借用する"ことを計画している。しかし、日本では、従業員は、他国と比べて、一時雇用の機会が少ないと認識している。世界的には78%の人がフリーランスとして働くことを考えるのに比べ、日本の従業員では、たった半分の50%となっている。
「拡張された人材システムにより、有能な人材へのアクセスが拡大されることは、ソリューションの一つです。企業は、人材をより早く配置し、確実に自社の社員の潜在能力を引き出す必要があります。人材に関し、プラットフォーム・メンタリティを適用するには、急進的なマインドセットの転換が求められています。人材は1人のマネージャー、部署、機能、さらには組織が所有するのではなく、全体の利益のために活用すべきもの、という意識の浸透が必要となります。」と、マーサーのキャリア部門グローバルプラクティスリーダーであるケイト・ブレーブリ―は語る。経営層は、仕事を人へ、人を仕事へとマッチングさせる能力を向上させることが、今年の事業の業績に最もインパクトを与える人材に関する投資であるということについて、同意している。
デジタル化の徹底
日本企業は、顧客に対して提供するレベルのIT環境を従業員に提供することについて遅れをとっている。自社がデジタル化されているかという問いに、世界では、回答者の15%がその通りだと回答しているが、日本ではわずか2%である。従業員の39%が成功のためには最先端のツールが重要であると回答している一方で、仕事に必要なデジタルツールを持っていると回答したのは24%であり、人事についてデジタルでのやり取りをしていると回答したのはたったの19%だった。ビジネスリーダーは、人事が将来進むべき道を設定する際の戦略パートナーとしての能力を持っていることを一定程度確認している。すなわり、人事が人事戦略を事業戦略の優先事項と整合するように設定していると認識している経営幹部は47%となっている。「波乱の時代には、水に浮かぶ丸太に掴まりがちです。我々は直感的に、成功は変化の波の頂上にあることを知っています。そこを乗り越えるには、健全なリスク選好と、人材モデルを打ち壊して、再構成する意思が求められます。我々はデジタル時代に暮らし、柔軟に働き、ユニークな処遇を受けることになる、その時、私たちは人間の時代の成長を解き放つことになるのです。」とブレーバリーは述べる。
マーサーの調査は、世界44か国、27業種から、7,600名の経営幹部、人事リーダー、従業員の方々からの回答をベースとした洞察となっています。本調査レポートは、未来の仕事や働き方の新たな推進要因を評価し、変革に関する重要な障害を特定し、2018年に成長を取り込むための力強い提言を行っています。
2018年グローバル人材動向調査(Global Talent Trends Study)の詳細について、こちらよりレポートをダウンロードいただけます(日本語)。
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◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(マーサージャパン株式会社 http://www.mercer.co.jp/ /7月11日発表・同社プレスリリースより転載)