採用手法、「新規学卒採用に重点」は約33.2%、「中途採用に重点」は約27.4%、「ほぼ同じ程度」は約32.0%~『企業の多様な採用に関する調査』:JILPT
労働政策研究・研修機構(JILPT)では、全国の民営法人を対象に、多様な採用に関する実態調査を実施しました。その結果を速報版としてとりまとめ、公表します。なお、詳細の報告は追ってとりまとめ、当機構の調査シリーズとして刊行する予定です。
<調査結果のポイント>
1.採用方針
●新規学卒採用と中途採用のどちらに重点を置いているか
企業合計を見ると、「新規学卒採用に重点を置いている」割合は約33.2%、「中途採用に重点を置いている」割合は約27.4%、両者に「ほぼ同じ程度に重点を置いている」割合は約32.0%である。
従業員数で見た企業規模の大きな企業ほど新規学卒採用に、規模の小さな企業ほど中途採用に重点を置く傾向がある。ただし、従業員300人以上と相対的に規模の大きな企業でも両者にほぼ同じ程度に重点を置いている割合が約3割ある。
企業の地域展開の状況別に見ると、より広域に展開している企業ほど新規学卒採用に重点を置いている。
●採用を担当する部署
企業合計を見ると、「主に採用を担当する部署や担当者がいるが、そこでは採用以外の業務も担当している」割合は約65.5%、「主に採用を担当する部署や担当者はいないが、特定の部署で採用業務を担当している」割合は約17.3%である。
規模の大きな企業ほど、あるいは事業所をより広域に展開している企業ほど「専ら採用を担当する部署や担当がいる」割合が高い。一方、規模の小さな企業ほど「主に採用を担当する部署や担当者はいないが、特定の部署で採用業務を担当している」および「特に部署や担当者はおらず、採用が必要となった都度担当を決めている」割合が高い。
2.新規学卒採用
●新規大卒採用で募集している雇用区分・雇用形態
新規大卒採用を行っている企業合計では、新規大卒採用で「地域限定正社員」を募集している割合は約11.0%、「職務限定正社員」を募集している割合は約19.1%である。
全国的に展開している企業では、「地域限定正社員」を募集している割合は約14.3%、「職務限定正社員」を募集している割合は約16.6%である。また、海外展開もしている企業では、「地域限定正社員」を募集している割合は約21.3%、「職務限定正社員」を募集している割合は約16.4%である。
●平成30(2018)年春の新規大卒採用における限定正社員の採用
平成30年春の新規大卒採用を考えている企業合計で見ると、正社員採用予定人数に占める「地域限定正社員」の平均比率は約3.2%、「職務限定正社員」の平均比率は約9.6%である。
全国的に展開している企業では、「地域限定正社員」の平均比率は約3.9%、「職務限定正社員」の平均比率は約6.4%である。また、海外展開もしている企業では、「地域限定正社員」の平均比率は約4.2%、「職務限定正社員」の平均比率は約4.3%である。なお、全国的に展開している企業および海外展開もしている企業を集計してみると、「地域限定正社員」の平均比率は約4.0%、「職務限定正社員」の平均比率は約5.7%となっている。
「地域限定正社員」の平均比率を業種別に見ると、「金融業、保険業」(約6.4%)および「宿泊業、飲食サービス業」(約5.5%)で相対的に高い。「職務限定正社員」の平均比率は、「医療、福祉」(約26.3%)、「教育、学習支援業」(約17.7%)、「生活関連サービス、娯楽業」(約14.4%) および「建設業」(約14.4%)で相対的に高くなっている。
●平成30(2018)年春の新規大卒採用における地域拠点の採用権限
平成30年春の新規大卒採用において、「限定のない一般の正社員」の採用権限が地域拠点にある割合は約25.3%、「地域限定正社員」では約31.3%、「職務限定正社員」では約39.1%である 。
全国あるいは海外に展開している企業に絞ると、「限定のない一般の正社員」の採用権限が地域拠点にある割合は約17.0%、「地域限定正社員」では約27.3%、「職務限定正社員」では約27.6%である。
●平成30(2018)年春の新規大卒採用のスケジュール
平成30年春に新規大卒採用を考えている企業合計で見ると、「応募の締め切り日を定めていない」企業は約58.9%、 「締め切り日を一つ定めている」企業は約23.4%、 「締め切り日が複数ある」企業は約16.6%である。規模の大きな企業ほど、「締め切り日を一つに定めている」および「締め切り日が複数ある」割合が高い。一方、規模の小さな企業ほど、「締め切り日は定めていない」割合が高くなっている。
勤務開始時期を「4月又は3月の定められた日のみ」とする企業は約81.5%、「採用が決定する都度、通年的に勤務を開始することとしている」企業は約13.4%である。規模の大きな企業ほど、勤務開始時期を「4月又は3月の定められた日のみ」とする割合が高い。一方、規模の小さな企業ほど、「採用が決定する都度、通年的に勤務を開始することとしている」割合が高くなっている。
3.中途採用
●平成28年度の中途採用の実施状況
企業合計で見ると、平成28年度に正社員の中途採用の「募集・採用ともに行った」企業は約73.9%、「募集はしたが、採用までには至らなかった」企業は約4.0%、「募集はしていないが採用を行った」企業は約8.1%ある。これらを合計すると、正社員の中途採用を実施した企業は約85.9%になる。
規模の大きな企業ほど、「募集・採用ともに行った」割合が高い。一方、規模の小さな企業ほど、「募集はしていないが採用を行った」および「募集・採用ともに行っていない」割合が高い。
●中途採用を実施する理由
平成28年度に正社員の中途採用を実施した企業を見るとでは、正社員の中途採用を実施する主な理由は、「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」(約53.9% )、「新卒採用だけでは補充できないから」(約35.3%)および 「高度とか専門とかでなくてよいので仕事経験が豊富な人が欲しいから」(約33.1%)である。
規模の大きな企業ほど、「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」および「高度なマネジメント能力、豊富なマネジメントの経験がある人が欲しいから」という理由の割合が高い。規模の小さな企業ほど、「高度とか専門とかでなくてよいので仕事経験が豊富な人が欲しいから」という理由の割合が高くなっている。
業種に関わらず、正社員の中途採用を実施する主な理由として、「専門分野の高度な知識やスキルを持つ人が欲しいから」と回答する割合が高い。とりわけ、「情報通信業」(約82.7%)および「学術研究、専門・技術サービス業」(約76.4%)において割合が相対的に高い。
他の理由にも注目すると、「宿泊業、飲食サービス業」(約47.9%)および「医療、福祉」(約42.1%)では、「新卒採用だけでは補充できない」という理由の割合も高い。「生活関連サービス業、娯楽業」(約48.2%)、「不動産業、物品賃貸業」(約39.5%)および「運輸業、郵便業」(約39.0%)では、「高度とか専門とかではなくてよいので仕事経験が豊富な人が欲しいから」の割合が高い。
●中途採用で求める人材像・イメージ
平成28年度に正社員の中途採用を実施した企業を見ると、正社員の中途採用において求める主な人物像・イメージは、「専門分野の一程度の知識・スキルがある人」(約53.9% )、「ポテンシャルがある人」(約34.9%)および「若年層の人」(約31.7%)である。
規模の大きな企業ほど、「専門分野の高度な知識・スキルがある人」および「ポテンシャルがある人」という人物像・イメージを求める 割合が高い。一方、規模の小さな企業ほど、「若年層の人」という人物像・イメージの割合が高い傾向がある。
正社員の中途採用の充足状況を確認するために平均達成率(「実際の採用人数」/「計画上の採用予定人数」×100で定義)を算出すると、求める人材像・イメージとして「専門分野の高度な知識・スキルがある人」(約88.0%)および「専門分野の一定度の知識・スキルがある人」(約86.3%)と回答する企業で相対的に高い。一方、「高年齢層(豊富な経験がある)の人」(約77.7%)および「若年層の人」(約81.0%)と回答する企業では、平均達成率が相対的に低い。
●平成28年度の中途採用における限定正社員の採用
平成28年度に正社員の中途採用を実施した企業を見ると、中途採用の正社員採用人数に占める「地域限定正社員」の平均比率は約5.6%、「職務限定正社員」の平均比率は約11.0%である。規模の大きな企業ほど、「地域限定正社員」の平均比率が高い。
正社員の中途採用で限定正社員を採用している企業の方が、採用していない企業よりも正社員の中途採用の平均達成率が相対的に高い。
●中途採用を実施する上での工夫・取り組み
中途採用を実施している企業を見ると、中途採用を実施する上での主な工夫・取り組みは、「募集時に職務内容を明確化」(約66.5%)および「能力見極めのための期間採用、その後の正社員転換と適正賃金の設定」(約22.4%)である。
「育児・介護支援制度等の利活用のしやすさの紹介」(約91.2%)、「カムバック制度・キャリアリターン制度の導入」(約89.0%)および「転職者が不利にならないように制度に工夫(休暇の取得、昇格ルールなど)」(約88.1%)と回答する企業では、正社員の中途採用の平均達成率が相対的に高い。
●平成25~27年度の中途採用の動き
中途採用を実施している企業を見ると、企業合計・企業規模別ともに 、平成25~27年度に正社員採用に占める中途採用の割合が「0%」の割合が低下し、0%超の各カテゴリーの割合が上昇している。つまり、平成25~27年度において中途採用の割合が上昇している。
◆ 本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/ /12月26日発表・同機構プレスリリースより転載)