職場での「ハラスメント」はなくならないのか?「パワハラ」相談が昨年比30%増~残業強要、不当評価、「何もするな!」、「若い女性がいい」:日本産業カウンセラー協会
日本産業カウンセラー協会(代表理事:河野慶三)では、連合(日本労働組合総連合会)と協力し、2007年から毎年、「世界自殺予防デー(9月10日)」にあわせて、「働く人の電話相談室」を開設しています。
この度、本年実施の第10回「働く人の電話相談室」開設期間内に延べ467人の方から、756件(※相談者からの主訴を最大三つまで選択する方式として集計)に及ぶ相談を受け、その内容について集計を行い、分析結果をまとめましたのでご報告いたします。
(※相談人数・相談件数ともに、性別不明及び無言電話を除いた数値となっています。)
昨年までの過去9回実施してきた「働く人の電話相談室」では、大きく八つに分類していたカテゴリのうち、『職場の悩み』に関して常に相談割合が多い結果となっていたことから、相談者からの悩みを傾聴し、今年度は「人間関係」「ハラスメント」に注目して、その内容を分類、データ集約しました。
今年度の「働く人の電話相談室」においても、例年同様、相談内訳では『職場の悩み』についての相談が最も多く、男女合計で266件、全体の約35.2%となりました。さらに、『職場の悩み』の中でも「人間関係」についてが最も多く266件中で約4割の106件となっています。
また、この度の電話相談において注目していたハラスメントに関する相談は78件(『職場の悩み』の29.3%)となりました。
そのハラスメント被害の内容についても、サービス残業や長時間労働の強要、通常の休暇を取得させない、不当な給与カットや賞与の不支給、職場内のグループから仲間はずれにされたり、無視される、「目つきが悪いやつ」「もっと若い女性社員に来て欲しい」などという容姿や性別・年齢を悪しざまにしたもの、腹や脚を蹴られるなどの肉体への実際の暴力行為、直接「もう来なくていい」「辞めて結構」「お前なんか要らない」などと罵倒される強制的な退職勧奨や実際の不当な解雇といったセクハラ・パワハラに関する相談が多数寄せられました。
その他にも、子どもを持つことができない女性に対して「子どもを作った方が良い」や育児休暇明けに望まない部署へ異動させられ、元の部署に戻してもらえないなどの相談も寄せられています。その中でも特に「パワハラ」に関する悩みが、昨年は44件(16.0%)でしたが、今年度は「人間関係」に次いで多い57件(21.4%)という結果になっています。
<ハラスメントが疑われる事例>
●「生意気」「給料どろぼう」「バカヤロー」「能力が無い」「あっちに行け」「何もするな」「信用できない」「もうお前は要らん」「人生終わらせてやる」「おとなしく言うことを聞け」「もう来るな」「辞めて結構」「殺してやる」「精神的におかしい」「狂ってる」
●深夜までの長時間労働・サービス残業を強制させられている。
●休日も仕事の電話。週1回の定休日以外にある月2回の休みを取らせてもらえない。
●パワハラを訴え配置換えされた後に導入された人事評価で不当に評価を低くされた。
●会社から誓約書の署名・提出を強要され、給与カット、各種手当てやボーナス不支給を告げられた。
●挨拶しても無視され、二人きりだと怒鳴る。機嫌が悪いと舌打ちをされる。
●育児休暇後「時短勤務」を理由に関連会社へ出向させられ、その後も本社に戻れない。
●「再婚したら」「2人目も産んだほうが良い」「ババアはいらない」「もっと若い女性社員ならいいのに」
●「能力が低いからパートとしてならいいが、正社員としては戻ってもらわなくていい」
●仕事でミスをすると脚を蹴られる。・職場の同僚からストーキングされ自宅を知られた。更衣中の覗きがあった。
なお、上記は「働く人の電話相談室」に寄せられたハラスメントと思われる事例の一部ですが、これらの中には、犯罪が想像される事例も含まれています。私ども、日本産業カウンセラー協会では、このような被害を受けた場合には、自分自身の中で抱え込まず、身近な人や公的機関に相談することをおすすめしています。
このように『職場の悩み』として「職場の人間関係」「セクハラ」「パワハラ」「その他ハラスメント」に関する問題を抱える相談者の半数以上の52.7%は、職場の上司との関係性について悩んでおり、次いで同僚との関係性についてが26.6%を占めています。また、悩みを相談する相手として公的機関が最多で、その次に上司に相談するというケースが増えているという結果になりました。昨年までは、上司や家族よりも同僚や友人・知人に相談するという回答が多かったのですが、今年度は公的機関に次いで、上司に相談しているというケースが多くなりました。
なお、今回、全国から受け付けた相談者の数は467人で、そのうち約6割にあたる271人が女性で、件数においても756件のうち、約6割にあたる445件が女性からの相談でした。また、年代別にみても、40代・50代の年代層で、女性からの相談が目立つ結果となっています。
一方で男性からの相談は40代の方からが突出して多くなっていることも特徴の一つといえます。この層の相談の特徴として、他の世代との違いは『自分自身』の「生き方」に関する相談が多いことが挙げられます。社会の中間層として、上の世代と下の世代に挟まれて苦悩している姿が浮かび上がってきているといえるかもしれません。
また、相談者を雇用形態別に見てみると、正規社員(男女合計)からの相談が126人で27.昨年:21.8%)、非正規社員(男女合計)からは110人23.6%(昨年:28.0%)と、正規社員からの相談数が増加していますが、女性からの相談は非正規社員からの相談が78人と最も多く、正規社員の女性からも76人という結果になりました。さらに、非正規社員全体からの相談内容を正規社員と比較すると、『職場の悩み』として「労働条件・待遇」「業務量・時間外労働」、『キャリアに関する悩み』「就職・転職・退職」などが正規社員として働く方より相談件数が多くなっています。
※第10回「働く人の電話相談室」結果報告における相談内容等の詳細は、別添の「相談内容集計表」をご参照ください。
【2016年度「働く人の電話相談室」 実施概要】
◇実施日 2016年9月9日(金)~9月11日(日) 午前10時~午後10時
◇実施場所 一般社団法人 日本産業カウンセラー協会の各支部
◇実施方法 フリーダイヤルによる電話受付 ◇集計総数 延べ467名、756件
◇集計方法 相談内容をA~Hまで、八つのカテゴリに分類し、それぞれのカテゴリ内に最大11個の項目を設定し、相談者からの主訴を一つから最大三つまで選択する方式として集計した。また、カテゴリA『職場の悩み』のうち、(1)職場の人間関係、(2)セクハラ、(3)パワハラ、(4)その他ハラスメント、の4項目については、悩みの対象が誰なのか「1 男性」「2女性」、相談者との関係性「1 上司(役員含む)」「2 部下」「3 同僚」「4 非正規社員」「5 その他・不明」に細分化し、項目の選択から悩みの内容が類推できるようにした。
◆本調査の詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(一般社団法人日本産業カウンセラー協会 http://www.counselor.or.jp/ /10月17日発表・同社プレスリリースより転載)