「人手不足」は37.5%、その半数は募集せず~中小企業における人手不足とその対応等について:大阪シティ信用金庫
大阪シティ信用金庫は「中小企業における人手不足とその対応等について」の調査結果を発表しました。
有効求人倍率の上昇傾向が続いており、先日発表された 3月分は全国、大阪府とも 1.3倍だった。これで、企業の求人数が求職者数を上回る 1倍超えの状態が全国、大阪府とも 29ヵ月続いていることになる。そこで各企業、とくに中小企業では必要な人材を確保することが難しくなっているのではないかと推察されるが実際の状況はどうだろう。当金庫取引先企業を対象にアンケート調査で探ってみた。
1.雇用の状況
(1)人手の過不足 -「不足」は37.5%
はじめに、すべての企業に対し、現在の自社の業況や仕事量などに照らし、人手は不足と感じるか過剰と感じるか聞いた結果が第1表-1である。
全体としてみると、「(1)不足」と答えた企業は37.5%と 4割近くあった。これに対し、「(2)ほぼ適正」と答えた企業が60.7%、「(3)過剰」は1.8%だった。
これを 2014年7月に実施した同じ調査と比較すると、「(1)不足」と答えた企業は 9.9ポイント増加しており、中小企業において人手不足が進んでいることがうかがえる。
業種別に見ると、「(1)不足」とする企業は運輸業が 54.6%と半数を超え、とくに多くなっている。
従業者規模別にみると、「(1)不足」とする企業は規模が大きくなるほど多く、10人未満の30.6%に対し、50人以上では54.6%となっている。
(2)人手不足の内訳 -「正社員が不足」が73.8%
前項(1)で、「人手不足」と答えた企業(481社、37.5%)に対し、不足しているのは正社員か非正社員か(両方含む)、聞いた結果(複数回答)が第1表-2である。
全体としてみると、「(1)正社員が不足」と答えた企業が73.8%で、「(2)非正社員が不足」と答えた企業は42.4%である。
業種別に見ると、「(1)正社員が不足」とする企業は運輸業が 91.5%で最も多く、小売業が30.8%で最も少ない。また小売業では「(2)非正社員が不足」とする企業が84.6%でとくに多くなっている。 従業者規模別にみると、「(1)正社員が不足」とする企業は規模が大きくなるほど多く、逆に「(2)非正社員が不足」とする企業は規模が小さくなるほど多い。
(3)人手不足になった原因 -「仕事が忙しくなった」が最多
前項(1)で、「人手不足」と答えた企業(481社、37.5%)に対し、人手不足になった最も大きな原因ついて聞いた結果が第1表-3である。
全体としてみると、「(1)(業容拡大などで)仕事が忙しくなった」と答えた企業が 61.1%で最も多い。次いで、「(2)高齢従業員の引退で欠員が生じた」とした企業が21.6%あった。このほか、「(3)急な退職があり欠員が生じた」が14.8%などとなっている。
業種別に見ると、「(1)仕事が忙しくなった」と答えた企業は建設業(73.7%)とサービス業(72.6%)でとくに多い。また、「(2)高齢従業員の引退」と答えた企業は製造業(26.9%)、運輸業(25.5%)、卸売業(23.5%)で比較的多くなっている。
2.人手不足への対応
(1) 募集の実施 -「募集をかけている」は51.0%
前項1.(1)で、「人手不足」と答えた企業(481社、37.5%)に対し、募集の実施状況について聞いた結果が第2表-1である。
全体としてみると、「(1)募集をかけている」と答えた企業は51.0%と半数程度である。これに対し、「(2)すぐ募集せず、景気の動向など様子を見ている」と答えた企業が33.9%と 3割を超え、「(3)募集せず、工夫して乗り切る方針」とする企業も14.1%あった。
業種別にみると、「(1)募集をかけている」と答えた企業はサービス業が64.7%で最も多く、小売業が38.4%で最も少ない。
従業者規模別にみると、「(1)募集をかけている」と答えた企業は規模が小さくなるほど少なく、50人以上の85.7%に対し、10人未満では35.9%となっている。10人未満では「(2)様子を見ている」が40.9%と多いほか、「(3)工夫して乗り切る」も21.5%あり、人材の採用には慎重になっている。
(2)募集結果の見通し -「相当困難」が4割前項2.(1)で、現状の人手不足により「募集をかけている」と答えた企業(245社)に対し、希望どおりの人材が集まる見通しについて聞いた結果が第2表-2である。
全体としてみると、「(1)すぐに集まる」と答えた企業はわずか 8.2%で、「(2)時間がかかる」と答えた企業が49.8%で最も多かった。また、「(3)相当困難」とする企業も42.0%あり、人材確保がかなり難しくなっていることがうかがえる。
業種別にみると、「(3)相当困難」と答えた企業は運輸業(53.5%)と建設業(50.0%)でとくに多い。
(3)労働条件・環境等の改善 -8割強が何らかの改善策
今後更に難しくなると予想される人材確保のために、自社では労働条件や仕事の環境面等において、何らかの改善策をとっているか、すべての企業に複数回答で聞いた結果が第2表-3である。
全体としてみると、「(5)とくに何もしていない」と答えた企業は17.8%にとどまり、あとの 8割強(82.2%)の企業は何らかの改善策をとっている。 そのなかで、「(1)仕事の軽減、時間外労働の適正化など」と答えた企業が40.8%で最も多い。次いで、「(2)賃上げ、一時金の支給など」が33.3%で多く、そのほか「(3)設備面の更新・充実などによる仕事環境の改善」が 23.4%、「(4)面談による身上把握など、人事管理の徹底」が20.9%などとなっている。
<調査概要>
■調査時点:2016年 4月上旬
■調査対象:大阪シティ信用金庫取引先企業(大阪府内一円)
■調査方法:聞き取り法
■依頼先数 : 1,362社
有効回答数 : 1,284社
有効回答率 : 94.3%
◆本リリースの詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(大阪シティ信用金庫 http://www.osaka-city-shinkin.co.jp//5月11日発表・同社プレスリリースより転載)