ロイヤルティ
ロイヤルティとは?
「ロイヤルティ」(Loyalty)とは、英語で忠誠、忠義、忠実、誠実、愛情、愛着などの意味。もともとは国家や主君への忠誠心、忠実さなどに由来する言葉で、ビジネスの分野、とくに組織・人事領域で使われる場合は、従業員の自社に対する愛社精神、忠誠心、帰属意識、組織コミットメント(関与)などの概念やその度合いの強さを指します。ちなみに、外来語としての発音や表記は同じ「ロイヤルティ」で意味が異なる言葉に、“Royalty”(語頭の綴りがLではなくR)があります。混同しやすいのですが、こちらは知的所有権などの使用料や許諾料などを著す別の英単語です。
奉社精神と愛社精神は似て非なるもの
成長できる環境がリテンションのカギに
日本企業は伝統的に、社員の「ロイヤルティ」――愛社精神や組織への忠誠心の高さを強みとした、独自のチームワークによる競争力を誇ってきました。かつての通信・半導体大手、米モトローラ社を率いたロバート・ガルビンは、1980年代の日米半導体摩擦における対日批判の急先鋒として知られますが、一方で、日本から多くを学んだ経営者でもあり、自著で「アメリカの流動性の高さを一時の気の迷いで称賛してはならないと思う。組織への忠誠心や律儀さは日本の欠点ではなく、長所なのだ」と喝破しています。
従来の日本企業におけるロイヤルティが、日本型経営の特徴である終身雇用、年功制、手厚い福利厚生といったしくみに支えられてきたことは、疑いを容れません。その多くが失われたいま、支えるしくみもなしに、旧態依然とした会社への忠誠心を従業員に持たせようとすることは、盲従や滅私奉公がはびこり閉鎖的な組織を作り出します。近年、ロイヤルティが持てない人やロイヤルティそのものに違和感、抵抗感を感じる人が増えてきたのも、そのためでしょう。
しかし一方で、人材不足が深刻化するなか、A&R(アトラクション・アンド・リテンション)の観点からも、従業員のロイヤルティの再生は重要な経営課題として浮上しつつあります。原則論として、愛社精神や組織と仕事への忠誠心が強い人ほど、会社を辞めるリスクは少ないからです。
今後、求められるロイヤルティとはどうあるべきなのでしょうか。リクルートワークス研究所主幹研究員の豊田義博氏は著書『戦略的「愛社精神」のススメ』のなかで、一般に言われる日本人の「愛社精神」には三種類あると述べています。一つ目が、バブル以前の終身雇用制度や年功序列の家族主義のもとで培われた「奉社精神」。会社が人生や生活の面倒を見てくれるから、お返しに奉公しなければという思いです。二つ目は、一流企業の名前やブランドに惹かれる「恋社精神」。恋愛と同じで長続きしにくく、入社して現実を知ると、冷めてしまうことが少なくありません。そして三つ目が、本当の意味での「愛社精神」です。自分が仕事で成長できたのは会社がその機会を用意してくれたからであり、会社での経験なくしていまの自分はなかった――そうした自分自身の成長に対する感謝の気持ちこそが愛社精神の源泉だと、豊田氏は述べています。能力を最大限に発揮できる環境が用意され、社員がベストを尽くしてそれに応えようとするところに、真のロイヤルティが生まれるのかもしれません。
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