クライシスマネジメント
クライシスマネジメントとは?
「クライシスマネジメント」とは、企業が事業継続や組織そのものの存続を脅かすような危機的状況(クライシス:crisis)に直面した際に、組織としてその被害を最小限に抑えるために行う一連の活動および対処法のことです。発生の確率は低いものの、ひとたび起これば組織への影響が甚だしい重大なリスク――例えば地震、噴火などの大規模災害や戦争、テロ、風評といった危急存亡の非常事態を対象とした、企業のリスクマネジメントの一部と解釈されています。
被害甚大で予測不可能な危機を管理する
予防より迅速かつ適確な初期対応が主眼
「クライシスマネジメント」は「危機管理」と訳されるのが普通ですが、一方で「リスクマネジメント」も同じ危機管理の意味を表す言葉としてよく用いられます。本来、リスクマネジメントとクライシスマネジメントでは概念や考え方の定義が異なりますから、ひとくちに危機管理といってもそれがリスクマネジメントの意味なのか、あるいはクライシスマネジメントを指しているのかで、対応は当然変わってくるはずです。しかし定義の区別にも諸説あり、実際、用語としては混同して使われているケースが少なくありません。
基本的には組織や事業に損害が及ぶ多種多様な可能性を広く企業のリスクといい、そのすべてがリスクマネジメントの対象となりますが、特に損害の規模や程度が企業の存続を危うくするほどのレベルである場合、そうした重大な危機への対処を通常のリスクマネジメントと区別してクライシスマネジメントと呼びます。
対象とするリスクの“重大さ”だけでなく、それが“予測不可能”であることもクライシスマネジメントの概念を特徴づけるポイントといわれます。突発的な天災や人災、外部からの不可抗力によって起こる損害など、発生する確率も規模も予測できない危機に対応するのがクライシスマネジメントなのです。したがって一般的なリスクマネジメントが、想定しうるリスクを顕在化させないように予防と分析を主眼とするのに対し、クライシスマネジメントにおいてはリスク発生後の対策が中心となります。とりわけ重視されるのが迅速かつ適確な初期対応。被害の拡散を最小限に抑えるとともに、二次的被害を回避し、事態の終息からすみやかな復旧へとつなげる取り組みが求められます。
危機が発生してからの対応という点では、いわゆるBCM(事業継続マネジメント)も同様ですが、こちらはあくまで具体的なリスクを対象とする活動です。例えば「災害でフル稼働できる人員が半減した」というような特定の事態を想定し、あらかじめ対応策を準備。実際にそういう状況になった場合には、準備した手順に従って対処するのがBCM。クライシスマネジメントはより広く、柔軟に、BCMがカバーしないリスクまで視野に入れて取り組まなくてはいけません。クライシスマネジメントの規格「PAS200」を発行する英国規格協会では、クライシスマネジメントの考え方を“組織の想定をはるかに超えた規模の危機に対して、組織の経営層がいかに迅速・正確に情報を収集・分析、意思決定をして対処するかを確立する仕組み”と定義づけています。
今月で、東日本大震災の発生から1年半が経ちました。未曾有の大惨事は経済活動にも極めて深刻な影響を及ぼし、その教訓から多くの企業が危機管理、すなわちクライシスマネジメントの重要性を再認識するに至りました。経済同友会が今年4月に発表したクライシスマネジメントに関するアンケート調査(2012年2月6日から3月2日にかけて会員企業を対象に実施)によると、大災害発生時の緊急対応について、震災を機に体制、マニュアル、非常用通信手段などの見直しを行った企業は半数を超えました。今後、震災と同等の緊急事態が発生しても、99%の企業が十分対応できる、あるいは必要最低限の対応はできると回答しています。
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