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【ヨミ】タノウコウ 多能工

生産・施工の現場において、1人が一つの職務だけを受け持つ単能工に対し、1人で複数の異なる作業や工程を遂行する技能を身につけた作業者のことを「多能工」と呼びます。多品種少量生産や品種・数量の変動に対応しうる柔軟な生産体制を維持し、生産性の向上を実現するためには多能工の確保が欠かせません。組織の人材を多能工として教育・訓練するしくみを「多能工化」といいます。
(2011/10/24掲載)

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多能工のケーススタディ

人員配置は「整数」より「小数」で
マルチスキル人材の育成が強い組織をつくる

多能工」のしくみを考案したのは、トヨタ生産システムを体系化したトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の大野耐一元副社長だといわれています。豊田紡織(現トヨタ紡織)出身の大野氏は、紡織工場では女子工員が1人で数十台の織機を操作していたのに、当時の自動車生産の現場では工員1人が1台の工作機械しか扱っていないことを課題と考え、工作機械の“多台持ち”を発案、さらに1人が複数の異なる工程を受け持つ“多工持ち”化を進め、ここから多能工の概念が生まれました。

「単能工」を前提とした職場であれば、XさんはAの業務、YさんはBの業務という風に、1人が一つの仕事を専門に担うのが普通です。つまり人員配置を1対1の“整数”で割り当てる、単純な分業制にならざるを得ません。この場合、XさんもYさんも担当の仕事しかできないので、それぞれの繁閑に応じてサポートしあうこともできず、作業負担にムリやムダが生じてしまいます。しかし効率のいい組織や生産性の高い現場では、それぞれの仕事と人手の関係を、Aの業務なら0.5人分、Bは0.7人分、Cは0.8人分などと“小数”で細かく考え、A、B、C三つの仕事をX、Yさん2人で賄うといった、柔軟な人員配置を行います。前者の“整数”の組織なら3人費やすところを、“小数”の組織は2人でこなすわけですから、効率が良く、一人ひとりの仕事量の変動にも対応しやすくなります。作業負担が平準化され、労働時間の短縮にもつながるでしょう。こうした体制を実現するために、X、Yさんには、AもBもCもこなせるマルチスキルの持ち主=多能工であることが求められるのです。

ものづくりにとどまらず、いまやサービス業の現場でも“多能工的人材”が戦力として高く評価されるようになってきました。たとえばスーパーマーケットは、時間帯によって各職場の繁閑が大きく異なる業態ですが、埼玉県を地盤とする食品スーパー「ヤオコー」では、戦力の8割を占めるパート従業員が自主的に忙しい職場へ移っていくことで、人員配置の最適化を実現しています。その前提として彼らを売場やレジだけでなく、総菜の調理、仕込みまでいろいろな仕事をこなせる多能工として教育しているのです。

また老舗旅館やホテルの再生事業を手がける「星野リゾート」でも、従業員の多能工化をプロジェクトの支柱に据えています。というのも従来、日本の旅館やホテルの現場では、たとえば布団を上げ下げするだけの係や、宴会でお酒をお燗するだけの係など、仕事が極端に細分化されていました。単能工による硬直した分業体制が業界の常識だったのです。同社では、従業員の間にあった仕事の境界線をなくし、フロントや清掃、食事処のサービス、調理といった各業務を全員がローテーションで体験。一人ひとりが複数のスキルを覚えて互いにカバーしあうことで、人員を約半分にしても全体としてのサービスの質が高まり、経営難に陥った旅館・ホテルの生産性向上に成功しています。

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