コーリング
コーリングとは?
「コーリング」とは、自分の仕事を「天職」と感じ、強い使命感を見いだして、働くこと自体に深い意義や喜びを感じる職業観のことです。もともとは「神から与えられた使命」を意味する言葉ですが、現代の人事領域では、仕事を収入源や出世の手段ではなく、社会貢献や自己実現の場として捉える状態を指します。コーリングを持つ従業員はモチベーションが高く、組織に好影響をもたらします。一方で、企業側には「やりがい搾取」に陥らないよう、適切な労働環境や評価制度を整備する責任が求められます。
仕事を「天職」と捉える心理
コーリングの光と人事の役割
米国の心理学者エイミー・レズネスキーらは、人々の仕事に対する価値観を「ジョブ(労働)」「キャリア(経歴)」「コーリング(天職)」の三つに分類しました。ジョブは経済的報酬を目的とし、キャリアは昇進や地位の向上を目指します。コーリングは仕事そのものに社会的意義や個人的な達成感を見いだします。強制されるわけでなく、自らの内発的動機づけによって仕事に没頭するのが大きな特徴です。
従業員が自分の仕事をコーリングだと認識すると、組織には多くのメリットがもたらされます。自発的に業務の質を高めようとするため、生産性や顧客満足度が飛躍的に向上。また、困難な課題に直面しても簡単には挫折せず、高いレジリエンス(回復力)を発揮します。結果として、組織全体のエンゲージメントが高まり、離職率の低下や優秀な人材の定着に大きく貢献するのです。
ただし、強い使命感には注意すべき側面も潜んでいます。最も懸念されるのは、仕事への没入度が高すぎるあまり、自己犠牲をいとわず長時間労働に陥りやすい点。本人がやりがいを感じていても、知らず知らずのうちに心身の健康を損ない、深刻なバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす危険性があります。また、企業側が従業員の使命感に甘え、過酷な労働環境を強いる「やりがい搾取」の温床となるリスクも。人事部門による慎重なケアが必要です。
コーリングは生来の才能や特定の職業に限られたものではなく、日々の業務への向き合い方で後天的に育むことが可能です。有効な手法として注目されているのが「ジョブ・クラフティング」。従業員自身が仕事のやり方や周囲との関わり方を見直し、業務に新たな意味づけを行うプロセスです。人事部門には、従業員が自律的に業務範囲を広げるためのサポートが求められます。
組織のパーパスと従業員個人の価値観をすり合わせることも重要です。自社の事業が社会にどう貢献しているかを明確に発信し、日々の業務との結びつきを実感させることがコーリングの醸成につながります。人事部門や経営者には、従業員の使命感を称賛するだけでなく、適正な労働時間管理と正当な評価をもって報いる姿勢が欠かせません。健全な環境下で育まれたコーリングこそが、企業の持続的な成長をけん引します。
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