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HRペディア 最終更新日:2021/11/17

【ヨミ】レジリエンス レジリエンス

「レジリエンス」とは、「弾力性」「回復力」「しなやかさ」を表す言葉です。心理学においては、トラブルや困難な状況の際に、逆境をはねのけて回復することとして使われます。ビジネスにおいても、困難や逆境を乗り越え回復する力としてレジリエンスの必要性が高まっています。

1.レジリエンスの定義 ~文脈による違い~

「レジリエンス(resilience)」とは、日本語にすると「弾力性」や「回復力」「しなやかさ」を表します。もともと心理学で使われることの多かった言葉ですが、予測が困難で変化の激しい近年、教育現場や組織においてもレジリエンスの強化が求められています。

それぞれの局面によってニュアンスは異なりますが、総じて、逆境や困難な状況を乗り越える「回復力」として使われます。

(1)心理学におけるレジリエンス

心理学においては、トラウマを抱えていたり、仕事や家庭環境などの人間関係が悪化することで生じる過度なストレスを感じたりしたときに、それらをはねのけて心理的に回復する過程を示します。時には、その過程を経て精神的に成長するまでを含むこともあります。

(2)ビジネスにおけるレジリエンス

ビジネスにおいては、「組織」を対象とするレジリエンスと、「従業員」を対象とするレジリエンスという二つの異なる観点があります。組織におけるレジリエンスは、災害など不測の事態が起きた際の復旧力といった、BCP(事業継続計画)の側面と、イノベーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)、ダイバーシティなど変化する環境に対応できる組織の柔軟性として捉える側面があります。従業員におけるレジリエンスは、個々人のストレス耐性や精神的な安定度合い、課題解決能力などが挙げられます。

2.レジリエンスに期待できるメリット

(1)逆境においても落ち着いて対処できる

仕事で何かトラブルや問題が発生した際、レジリエンスの高い従業員は、慌てずに落ち着いて対処することができます。目の前の状態を冷静に把握することで、状況に応じて最適な判断を下し、解決に導きます。また落ち着いて対処することで、周りに対してきつい言葉を使ったり、不機嫌な態度になったりするケースも減らすことができ、結果的に職場の雰囲気も良くなります。

(2)問題が起きた際に素早く立ち直れる

レジリエンスが高い組織は、トラブルや問題があってもすぐに立ち直ることができます。例えば、自然災害などが発生した際も、あらかじめ定めたBCPマニュアルに基づき、スピード感を持って通常業務に戻れます。

(3)変化に柔軟に対応できる

現代は、IT(情報技術)の普及や技術革新により、過去の成功体験が通用しなくなりつつありますが、レジリエンスを高めることで、変化に強く柔軟性の高い組織をつくることができます。競合や消費者の変化に応じてビジネスモデルを変革することは、事業の継続や成長性の維持につながるでしょう。従業員は、自分が組織に求められる役割に応じて柔軟に変化・変革することで、成長へとつなげることができます。

(4)従業員の心身の健康を維持向上できる

「組織」や「従業員」の観点でレジリエンスの理解を深め、それを維持・向上できるような仕組みや環境づくりを行うことは、従業員の心身の健康を保つことにもつながります。フラットで風通しの良い職場、テレワークに対応できる柔軟な勤務形態やシステム、キャリア支援などは一例です。こうした環境づくりを積極的に行うことは、人事部にとって大きな仕事の一つといえるでしょう 。

3.レジリエンスが注目を集める背景

レジリエンスに注目が集まる理由について、四つの観点から解説します。

(1)VUCA時代の到来

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の四つの頭文字を取った言葉です。1980年代からある言葉ですが、2010年代に入ってから、ビジネスシーンでも「予測困難な時代」として頻繁に使われるようになりました。

自然環境の変化やテクノロジーの進化によって将来を予測することが困難な現代では、過去の成功体験にとらわれることなく、起こった変化に柔軟に対応し、困難や逆境を乗り越える力が求められています。

(2)労働者のメンタルヘルス問題の深刻化

日本では経済・産業構造の発展に伴い、職場におけるメンタルヘルスの問題が顕在化するようになりました。こうした問題を受け、労働省(現・厚生労働省)は2000年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を提示し、2015年には労働安全衛生法の改正により従業員50人以上の事業場に対して自身のストレスを測る「ストレスチェック」が義務化されました。

また、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正法、通称パワハラ防止法が2020年6月に施行されています。コロナ禍における急な労働環境の変化によって、メンタルヘルスの不調を訴える人も多く見受けられています。

(3)労働力不足と人生100年時代の到来

日本の少子高齢化が加速度的に進み、将来の労働力不足が懸念される一方、医療技術の向上などにより健康寿命が延びたことで、人生100年時代が到来するといわれています。

100年という長い期間活躍するために、生涯にわたる学び直しや、新たな技術・スキルの習得、雇用形態の見直しなどが議論されています。また、このような労働環境の変化に対して企業、社会、従業員がしなやかに対処できるような仕組みづくりも必要です。

厚生労働省は「『人生100年時代』に向けて」と題して、高齢者から若者まで多くの人が元気に活躍できるような国づくりを目指すと発表しています。

(4)新型コロナウイルス感染症の拡大

新型コロナウイルス感染症は、上述のVUCA時代を象徴するような出来事といえます。誰もが予測できなかった事態であり、暮らしやビジネス活動は大きな変革を余儀なくされました。感染症の拡大によって、対面での営業活動などが制限され、外出自粛のため消費者の行動はオフラインからオンラインに移りました。

このような中、企業には時代に適した組織づくりが求められています。従業員においても、働き方や人生設計を大きく見直す必要があるでしょう。

4.個人がレジリエンスを高めるためには

レジリエンスを高めるためには、どのような手法や考え方があるのでしょうか。

(1)レジリエンスを構築するための方法

アメリカ心理学会(American Psychological Association)は、レジリエンスを構築するための方法を公式サイトで紹介しています。同サイトでは「レジリエンスは誰もが学び、高めることができる」としています。

<1> 関係性を大切にする

孤立しないことはレジリエンスを維持・向上させる上で重要です。理解ある人との信頼関係があることは、困難やトラブルに見舞われた際、困難をはね返す力となります。

<2> 目標を設定する

目標を設定することは、自尊心を育み、他の人のつながりを構築することにつながります。途方もない目標ではなく、現実的な目標を立て達成感を感じることは、レジリエンスの向上に有効といえます。

<3> 健全な考え方をする

なるべく健全な考え方をすることも大切です。変化を受け入れること、楽観的に考えること、つらい経験から何を学んだかを整理することなどが、ポジティブになるためには大切です。

また、肉体とストレスは密接な関係があるため、健康でいることも大切です。適切な栄養、十分な睡眠、水分補給、定期的な運動を取り入れることで、ストレスに強い心と身体をつくれます。

<4> 誰かに助けを求める

必要なときに誰かに助けを求めることが、レジリエンスを高める上で非常に重要です。場合によっては専門家の力が必要なときもあります。大切なのは、一人ではないと自覚することです。

(2)レジリエンスを構成する資質的要因と獲得的要因

平野真理氏(東京大学大学院教育学研究科、研究発表当時)は、自身の研究「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み」で、レジリエンスの構築には、先天的な性質の強い資質的要因と、後天的に身に付けやすい獲得的要因に分類できるとしています。

<1> 資質的レジリエンス要因

・楽観性
物事がうまく進み、良いことが生じるだろうというポジティブな見通しや考え方

・統御力
自分の体調や体力、および感情やユーモアなど、心身をコントロールする能力

・社交性
人との関係をうまく取ることや、社会集団における存在感を得られる性質

・行動力
物事に対して、努力や意欲を持って粘り強く行動できる能力

<2> 獲得的レジリエンス要因・問題解決志向

・課題解決志向
人と意見が衝突した際にも対話で解決できる、嫌な出来事に対し、解決策を考えられる力

・自己理解
自分自身の考えや、事が起こった際の反応などの特性について理解し把握する力

・他者心理の理解
他者の心理を表情や言動などから理解できる能力

もともとの性質とみなせる「資質的レジリエンス」はなかなか変えにくいので、後天的に身に付けやすい「獲得的レジリレンス」に着目して、普段の考え方や行動様式を見直していくことが重要といえるでしょう。

5. レジリエンスを高めるために企業はどうすべきか

最後に、レジリエンスを高めるために企業はどうすべきかについて、『日本の人事部』で行ったインタビューなどを基に解説していきます。
※経歴などは取材・講演当時のものです

(1)組織のレジリエンスを高めるには

<1> BCPに取り組む

BCPとは、事業継続計画のことです。行動計画やマニュアルを作成し、有事に備えて体制を整えることで、大規模災害が起こってから通常の事業へ復旧するスピードを短縮します。自然災害や感染症の拡大時なども、事業を継続するための制度や仕組み、ガイドラインの整備が必要です。また、近年はテレワーク環境などを狙ったサイバー攻撃も増加しており、セキュリティー対策の重要性も高まっています。従業員の意識を高めるための啓もう活動や、訓練なども有効です。

<2> ダイバーシティを推進する

高橋俊介氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)は、『日本の人事部』が行ったインタビューにおいて、予測不能な現代で「変化対応能力のある組織」をつくるには、「ダイバーシティの推進」が重要としています。多様な人材が活躍できる環境を整えることで、イノベーションが促進し、ビジネスモデルの変化に耐え得る組織の構築ができると説いています。

近年、ダイバーシティ経営という言葉が浸透しつつあります。日本企業は欧米に比べて人材の流動性が低く、同質性が高いといわれていますが、ダイバーシティを推進することで、発想の源泉を豊かにすることができます。

(2)従業員のレジリエンスを高めるには

<1> 社内のコミュニティーを形成しエンゲージメントを高める

『日本の人事部』が2021年2月に行った「HRコンソーシアム」において、佐々木丈士氏(Facebook Japan株式会社人事統括)は、従業員のレジリエンスを高めるには、人事が社内のコミュニティーの形成を促し、従業員同士をつなげることでエンゲージメントを高め、アウトプットを高めることが重要だとしています。特にコロナ禍においては、在宅勤務により社内でのコミュニケーションの機会が減少しているため、オンラインでのコミュニケーションをどのように実現していくかが重要なポイントになると述べています。

<2> レジリエント・リーダーを育成する

金井壽宏氏(神戸大学名誉教授)は、逆境に陥っても自ら回復し、また部下のやる気を引き出せる「レジリエント・リーダー」の育成が重要だと説いています。レジリエント・リーダーには高いセルフ・コントロール能力が必要であり、部下に対しては前向きに働きかけ、不安や心配を払拭するような行動が求められると述べています。

レジリエント・リーダーが組織に多くいることで、その組織は自然としなやかで強い組織になるといえるでしょう。

<3> 従業員のキャリア・オーナーシップを支援する

先述の高橋氏は、従業員がレジリエンスを高めるには「キャリア自律」が必要だとし、主体的にキャリア開発を行うことを推奨しています。

「キャリア自律」は「キャリア・オーナーシップ」とも呼ばれ、従業員が自分のキャリアを主体的かつ能動的に開発していくことを指します。キャリア自律においては、企業が従業員のキャリアを決めるのではなく、従業員自身が決めていくことが重要です。

高橋氏は、キャリア自律を育むには「変化に強い良い習慣を数多く持つこと」とした上で、方法として多くの人と交流し、つながりを形成していくことを挙げています。また、従業員が能動的にキャリア開発に取り組むことは、結果的に変化の強い組織につながるとしています。

キャリア自律は従業員が自ら実践するものですが、企業として機会を提供することは重要です。例えば、ジョブローテーションや他企業との交流の機会などを通じて、良い刺激を与えることで、従業員がキャリアを描きやすくなるでしょう。

<4> 課題解決能力を高めるための人材育成

「4.レジリエンスを高めるために個人に何が必要か」では、獲得的レジリエンス要因として「課題解決志向」「自己理解」「他者心理の理解」を挙げました。これらの能力を開発するための研修やセミナーなどもレジリエンスを高める上で有益です。

アンガーマネジメントやアサーティブコミュニケーションといった対話方法を学ぶことで、組織で問題が生じた際にスムーズに対処でき、協働の促進によって課題解決の見通しも立てやすくなります。

自己理解を深めるためには、1on1ミーティングなどを通して定期的に業務を振り返ることも有効な手段の一つです。

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