タイムマシン経営
タイムマシン経営とは?
「タイムマシン経営」とは、海外で成功したビジネスモデルやサービスを日本でいち早く展開する経営手法のこと。まるでタイムマシンに乗って未来からやってきたかのようにビジネスを展開し、成功へ導くことができるという例えで、ソフトバンク創業者の孫正義氏が命名したとされています。タイムマシン経営には、海外で成功したサービスの日本法人を立ち上げるパターンと、ビジネスモデルを模倣して日本向けにアレンジするパターンとがあります。
現代はタイムマシン経営が困難に?
過去から気づきを得る「逆・タイムマシン経営論」の考え方も
孫正義氏がタイムマシン経営を始めたのは、インターネットの利用が広がりはじめていた1990年代のこと。孫氏は米国で、インターネット関連のベンチャー企業を中心に投資を行っていましたが、その中には創業間もなかった、米Yahoo!も含まれていました。1996年には、米Yahoo!と合弁で、日本にヤフー株式会社を設立。その後もインターネット関連企業を次々と設立し、出資した企業を次々と上場させるなど、時間差を利用した経営手法で、ソフトバンクは世界的な大企業へと変貌を遂げました。
タイムマシン経営という名称こそ孫氏によって知られるようになりましたが、方法論自体は以前からあるものでした。例えばコンビニエンスストアは、1920年代に米国・テキサス州の氷販売店「サウスランドアイス」が食料品・日用品を売り始めて大当たりし、「セブン-イレブン」へと名を変えて全米に拡大したのが発端です。これをイトーヨーカ堂がライセンス契約によって日本に持ち込み、1973年に株式会社ヨークセブンを設立。翌1974年、豊洲に一号店を出店しました。その後、アメリカ法人を買収し、海外にも展開する世界最大規模の店舗数を持つコンビニエンスストアチェーンに成長しています。
しかし昨今は、タイムマシン経営が成立しにくいという声もあります。スマートフォンやSNSの普及によって簡単に世界中の情報へアクセスできるようになり、誰にも知られていない有望なビジネスモデルに出会うことが難しくなってきているからです。また、情報が大量に溢れている時代だからこそ、信頼性の低い情報をうのみにしない情報リテラシーや、玉石混交の中から金の卵を見つけ出す審美眼も必要になっています。
一橋大学大学院の楠木 建教授は「逆・タイムマシン経営論」を提唱。新聞や雑誌などを10年寝かせて読むことを勧めています。過去の情報を今眺めてみると気付くことがあるように、“今”の情報はたくさんのノイズで溢れていると楠木氏はいいます。同時代のバイアスにとらわれることなく、本質を見抜くために、歴史をたどる。タイムマシン経営も逆・タイムマシン経営論も、本質を見誤らないことが条件となる点で共通しています。
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逆・タイムマシン経営論
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