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【ヨミ】ケンシュウナイセイカ 研修内製化

近年では研修を外部に委託せず、自社で内製化する企業が増えています。研修内製化することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。また、どのように研修を内製化すればよいのでしょうか。研修スタイルの変遷を追いながら、今、求められる研修のあり方を考えます。

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1.研修内製化とは

研修内製化とは、社内の人間を講師にして外注していた研修を、社内で完結されるかたちに変えることをいいます。研修内製化には、研修コストを削減できること以外にも、企業独自の研修を実現できることや、ノウハウを蓄積して社内で引き継いでいけることなど、複数のメリットがあります。

早期に新入社員を戦力化することが多くの企業にとっての課題となっている現在、研修をどのように設計するのかが、大きな意味を持ち始めています。

日本における研修の潮流

研修の目的は、時代背景とともに変化してきました。企業が置かれた環境に注目しながら、研修の潮流を見ていきます。

(1)一定の基礎知識・技能の習得(~1980年代 )

高度経済成長期、男女雇用機会均等法の施行と、日本経済が発展を遂げてきた1980年代ころまでの企業研修では、すべての社員が一定の基礎知識や技能を身につけることに重点が置かれていました。そのため、研修を専門に手掛ける外部業者が増え、パッケージ化された研修を導入する企業が多く見られました。

(2)キャリア開発に重点(1990年代~2000年代前半)

バブル崩壊後、企業は生き残りをかけて成果主義へとシフトしていきます。多くの日本企業で行われていた年功序列の人事評価や終身雇用制が終わりを迎え、次世代のリーダーが求められるようになりました。そうした中で、幹部候補の早期育成が急務となり、階層別の研修スタイルが登場します。

また、年功序列が無くなりキャリアが多様化したことで、従業員のキャリアプランへの支援が求められるようになります。こうした社会情勢の変化によって、研修のあり方も大きく見直されました。

(3)コスト削減のための研修内製化(2000年代後半~)

2008年9月に起こったリーマン・ショックにより、多くの企業はコスト削減の必要に迫られました。筆頭にあがったのが人材育成コストです。そこで、それまで外注をしていた研修を見直し、内製化する企業が増加しました。

景気の回復後、再び外注に切り替える企業もある一方、現在ではコスト削減にとどまらない研修内製化のメリットが、改めて注目されるようになっています。ビジネスを取り巻く競争が激化する中で、人材育成に求められるものが変わり、研修にもそれを反映させることが求められているのです。

2.研修内製化の効果

研修の内製化はコスト削減だけでなく、さまざまな効果をもたらします。

自社に適した独自プログラムを実施できる

メリットとしてまず挙げられるのは、研修を内製化することにより、自社の経営戦略に即した研修を実施できることです。外部に委託する場合に比べ、研修内製化では自社事例の活用や、独自に持っているノウハウの教育などを行いやすく、より自社のニーズに沿った教育プログラムの実施が可能です。

また、自社の従業員のキャリアプランに応じて、必要なスキルを体系的に学べる研修を独自に実施している企業もあります。柔軟にプログラムを組み立てられる点は、研修内製化の大きなメリットです。

現場のノウハウを蓄積

外部に研修を依頼した場合、研修を受けた人が退職すると、知識が社内に残りません。研修を内製化することで、企業の資産として知識を蓄積していくことができます。また、研修に関するノウハウを社内に引き継いでいくことで後々の人材育成にも役立てられる、というメリットがあります。

講師となった人材の成長が見込める

研修を内製化する際には、社員から講師を抜てきするため、任命された社員自身の成長も期待できます。他の社員に教えるにあたって、これまでとは違った視点を持つようになったり、自身の仕事を見直したりと、通常の業務では学べない経験を積むことができます。また、任命されることで、従業員自身のモチベーション向上も期待できます。

職場風土への影響

自社の先輩が講師を務めることで、若手社員に対して一つのロールモデルを示すこともできます。新人に「先輩のようになりたい」「自分もいつか後輩を指導してあげたい」という意識が芽生え、社内で教え合う風土ができるとともに、人材を育てる意識が高まります。さらに、他部門の社員との交流の機会が増えるなど、社内のコミュニケーションやネットワークの広がりが期待できます。

研修プログラムの修正・変更が容易

研修には、ビジネスマナーなどの普遍的なものもあれば、法令関係など毎年のように内容が変わるもの、企業の戦略によって変更が生じるものなど、さまざまな種類があります。

内容の変更が多い分野の研修では、その都度プログラムを修正・変更し、新しい内容を提供する必要があります。研修を内製化している場合には、社内の変更にもすぐに対応することが可能です。

研修内容の見直しが容易

従業員の成長や受講者の反応を見ながら研修内容を見直し、柔軟にアレンジできる点も研修内製化のメリットです。また、状況に応じてプログラムや実施回数などを調整しやすいこともメリットといえます。

3.研修内製化の問題点

研修内製化にはさまざまなメリットがある一方で、気を付けるべきポイントもあります。研修内製化を検討する場合には、次のことに注意しましょう。

研修成果の基準がない

研修を専門に行っている外部業者は、研修の成果や満足度に対する厳しい基準を設けています。しかし、社員が実施する研修ではこうした基準が設けられていないことが多く、成果に対する意識が薄くなってしまうことがあります。また、講師と受講者が顔見知りの場合、緊張感や集中力が途切れてしまい、思った成果を得られない可能性があります。

こうした状況を回避するには、研修成果の基準を事前に設計しておくことが重要です。研修を受けた従業員の知識定着率を確認するなど、自社にあった評価基準を作ることが必要です。

自己流の研修になる

自社の状況に合わせて研修を柔軟に設計できることは研修内製化のメリットの一つですが、それゆえに自己流になってしまうリスクもあります。講師が訓練を受けていない場合、研修が講師の経験をもとにした内容になってしまうのです。我流を押しつける可能性もあり、適切な社員育成にならないことがあります。

そのため、講師を務める社員は、人材育成に必要な理論をあらかじめ学ぶことが求められます。また、研修プログラムを作成する場合も、偏りがないよう十分に配慮することが必要です。

社内コストが増えることもある

研修内製化を行うことで、外注先に支払うコストを抑えることができます。しかし、内製化した場合にもさまざまなコストがかかります。たとえば、社員の講師を養成するコスト、研修会場の費用、資料作成にかかる費用などです。

さらに、講師役の社員や研修の企画・運営にあたる社員の時間と労力を使うなど、社内のリソースを多く消費することになります。研修内製化を検討する際は、社内コストとリソースについて明確にしたうえで計画することが必要です。

講師の質の確保が難しい

研修内製化によって成果を出すには、講師に一定以上のスキルを身につけてもらう必要があります。しかし現実には、通常業務を行いながら講師としてのスキルを磨くのは困難であり、社員の負荷が高まってしまうこともあります。また、多忙な社員の場合は、講師の任務が手薄になってしまう可能性も考えられます。

さらに、講師の養成には時間を要するため、適した人材がいない場合、十分な効果を得られないことも想定されます。社員の負担を考慮しながらどのように講師の質を確保するのか、あらかじめ検討しておく必要があります。

社外の専門知識・スキルを得られない

研修内製化は自社独自のプログラムの実施が可能である反面、自社が持っていない専門知識やスキルは習得できないというデメリットがあります。新たな視点を得られず、組織力の停滞やモチベーションの低下につながることも課題点の一つです。

4.内製に適した研修と外部委託に適した研修

研修の内製化には多くのメリットがありますが、すべての研修が内製化に適しているわけではありません。内製に適している研修と外部委託したほうがよい研修を確認しましょう。

内製に適した研修

企業の内製に適した研修は、その企業における知識やノウハウ、ルールに関するもの。たとえば、次のようなものがあります。

(1)企業独自の研修

企業独自の研修には、新入社員向けにその企業の経営理念や行動規範をインプットするための研修、企業が求めるリーダーを育てるために行う研修、社内ルールの研修などがあります。これらの研修は外部の業者よりも社員のほうがよく理解しているため、内製化に適しています。

(2)企業の業務に関係する研修

企業が属する業界についての知識を深めるもの、取扱商品やサービスの知識、商品を扱う店舗での実地研修など、企業の業務に関わるものは内製化に向いています。ただし、業界知識については、専門機関の講師を招いた方がよい場合もあります。

外部委託に適した研修

外部委託に適した研修は、社内で行うことが難しい研修と、とくに内製化する必要がない研修に分かれます。

(1)社内で行うことが難しい研修

社内で行うことが難しい研修には、専門知識が必要な研修、成功企業のノウハウなどを学ぶ研修などがあります。研修担当者が専門知識を身につけたり、成功企業のノウハウを学んだりする時間や労力、コストを考えると、外部の業者に委託したほうがよい場合が多くなります。

(2)内製化する必要がない研修

内製化する必要がない研修とは、どの企業にも必要な一般的な知識に関する研修です。たとえば、ビジネスマナーや労務管理、一般的なマーケティングの手法などが該当します。ただし、外部委託のコストと社内で行うコストを考え、これらの研修を内製化している企業もあります。

4.研修内製化は人材育成の好循環を生む初めの一歩に

研修の内製化には、もう一つの大きな利点があります。それは、研修プログラムを検討するプロセスの中で、自社が今必要としている人物像が明確になることです。

たとえば、顧客にどのような価値を提供できる人材になるべきか、あるいは、どのようなリーダー像が理想的かといったテーマは、企業によって異なります。これらは企業が目指す方向性や経営戦略と深くつながっています。社内で研修プログラムを考えることで、企業のビジョンや経営方針を深く理解できる点も、研修内製化がもたらす大きなメリットといえるでしょう。

社内から講師を選任することへの懸念点を挙げる企業もありますが、長期的には、人材育成の好循環を生むための初めの一歩と見ることもできます。自社に適した研修のあり方を、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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