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少子化、産業構造の変化――
「人の価値」がより高くなる時代 
人材サービスこそが高付加価値を生むビジネスになる

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長

渡部 昭彦さん

ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 渡部 昭彦さん

ミドルマネジメント層の人材紹介を広く行う「A・ヒューマン」、大手企業の社長・役員クラスのヘッドハンティングをリテーナー(専属契約)方式で手がける「AIMSインターナショナルジャパン」、グローバル企業の人材ニーズに特化した「オプティア・パートナーズ」、さらに従業員のメンタルヘルスケアをサポートするEAP事業の「ヒューマン・フロンティア」。人材に関わるハイエンドなサービスを提供する、これら4社を統括しているのがヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社です。2007年から同社の代表取締役社長を務める渡部昭彦さんは、数々の大手企業で人事責任者を歴任。現在も人材サービスの提供を通して、日本企業の人事部のあり方とその未来を見つめています。書籍や大学の講義を通して人事への提言も行っている渡部社長に、自身のバックグラウンドやヒューマン・アソシエイツ・グループの経営コンセプトをうかがうとともに、今、人事や人材サービス業界には何が求められているのかをうかがいました。

Profile
渡部昭彦さん
ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス株式会社 代表取締役社長

わたなべ・あきひこ/1956年生まれ。79年東京大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)へ入行。支店業務、中央官庁出向、国際金融部、本店営業部などを経て、94年から2000年まで人事部門に勤務。その後、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経て、セブン‐イレブン・ジャパンへ入社し、人事部門の部長として、毎年採用活動や人事制度構築に従事。その後、楽天グループを経て、2007年にヒューマン・アソシエイツ・グループの社長に就任。

定期異動で関わった人事が大きなキャリアに

 渡部社長はもともとは金融マンでいらっしゃいました。人事に関わるようになった経緯について教えてください。

最初は長銀(日本長期信用銀行)に就職しました。私が所属していた大学のゼミの卒業生は伝統的に官庁か銀行に進む人が多かったのですが、官庁に行く気はなかったので、必然的に銀行に進みました。その中でも長銀は産業金融なので、長い視点で考えられる面白さがあることと、同期が約50人で少数精鋭であることが、良かったんです。

人事に異動したのは入行15年目。銀行にはローテーションがあって、当時はほぼ2年ごとに部署を移っていました。金融の現場をある程度経験したら、次は本部の管理系の部署に移ることが多いのですが、その中でたまたま人事に移ったのです。自慢ではないのですが、銀行の人事はエリートが集まる部門だったため、悪い気はしませんでした。

ところが、ご存じのようにその後、長銀は国有化されて大変な状況になります。ちょうど私が人事にいた時で、普通なら2~3年のローテーションのところ、結局人事を6年経験しました。状況が状況だったので、いちばん心を砕いたのは行員の気持ちをまとめることでした。逆境の時に従業員のアイデンティティーや気持ちをまとめるのは本来、経営の仕事ですが、実際には経営だけでできることではありません。日本企業においては、それが人事の重要な役割だと感じましたね。

 その時の経験が、現在の人事に関わる仕事にもつながっているということでしょうか。

いえ、その時には将来人事のスペシャリストになろうとは思っていなかったんです。たまたまローテーションの中で6年経験した、という感覚です。日本興業銀行の取締役の方に誘っていただいて最初に転職した時も、ポジションは営業部の副部長で、人事ではありませんでした。

「人事のキャリアが自分の強みかもしれない」と意識したのは、その2年後にセブン‐イレブン・ジャパンの専務の方から声をかけられた時です。当時のセブン‐イレブンは急成長していましたが、スタッフ、特に人事を強化する必要があるので、採用勤労部の統括マネジャーとして来ないか、という話でした。銀行と小売はまったく異なる業界ですが、「人に興味を持つ」という点は同じだろう、と考えて挑戦してみることにしました。

 まったく違う業界の人事を経験してみて、いかがでしたか。

重点的に取り組んだのは人材採用で、そのほかに労務管理、人事制度構築なども手がけました。採用は組織の急拡大のため、毎年、新卒400人・中途400人、合計800人が目標。しかも、辞退者が出ることも想定して、その10倍近い内定を出すんです。4、5人の専任担当で回していたので大変でしたね。佳境に入ると、一日に20~30人の面接をすることもありました。年間数万人もの候補者に会っていたはずです。その中でセブン‐イレブンの社風に合う人かどうかが、第一印象である程度わかるようになっていきました。

数百億円単位のビジネスが普通だった長銀にくらべると、セブン‐イレブンは1円、2円の世界。良い悪いではなく商売のけたが違うわけですが、その分、非常にきめ細かい。そして、どんな時でも顧客第一です。そういう社風の中では、いい意味で目線を低くできる人、1円でも大切にするような考え方の人でなければ務まらないことが、すぐわかりました。私は応募者の学歴や経歴といった外面よりも、そういう考え方ができるかどうかという「内面」を見ていました。この「内側を重視する」という思考は、現在のビジネスにも生かされていると思います。

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