人材ビジネスを起点に、
個と組織をポジティブに変革する!
目の前の顧客と経営に集中する中で「理念」が生まれた
株式会社ウィルグループ 代表取締役会長 兼 CEO
池田良介さん
経営に集中することで生まれた「個と組織をポジティブに変革する」という理念
では、現在の企業理念はどのような経緯で生まれたのでしょうか。
「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」という理念は、現場で顧客と向き合い、スタッフと向き合う中で生まれたものです。草創期から一貫して人材ビジネスに取り組んでいる中で、人材ビジネスは単なるマッチングビジネスではないと思えてきたのです。協力してより良い現場をつくれた時、顧客もスタッフも私たちもより良い方向に成長できている。そういう「ポジティブな変化を生む」ことこそ、私たちの究極の存在価値であると思えるようになりました。現在の理念はその考えを言葉にしたものです。
具体例で説明したほうがイメージしやすいかもしれませんね。私たちにまだ十分な採用力がなかった頃、スタッフを募集してもなかなか人材が集まりませんでした。そのため、身だしなみができていない、挨拶もできないような人材も採用するような状況でした。「遅刻は絶対にしないように」「社会人とは」「仕事とは」……。そんなごくごく基本的な教育から始めます。大変ですが私たちの仕事は、そういう仕事でもあるんです。教育していくと、最初はまったく聞く耳を持っていなかったような人材が、徐々にコミュニケーションをとれるようになっていく。最初は注意ばかりされていたのに、気がついたら後輩を指導していたりします。そういう場面を見ると、「ああ、成長したなあ」と思うわけです。
フリーターから1年で60人規模の現場のリーダーになったスタッフがいました。最初は挨拶もできなかったのに、いつの間にか大変熱心に進んで仕事をするようになって、現場を支えて頑張ってくれた。最終的には月給50万円くらい稼ぐようになっていたと思います。そうして貯めた資金で、退職後は念願だった洋服の店を開業しました。結婚式に呼んでくれて、「セントメディアと現場との出合いで自分の人生が大きく変わった。そこで得た経験と自信をもとに今後は素晴らしい店と家庭を築いていきます」と挨拶してくれました。顧客からも「彼が来てくれたおかげで現場が大きく変わった。あんな見かけだった彼がうちの工場の歴史を塗り替えた」という言葉をいただきました。その時に「やってきて良かった」と心から思えました。こういうエピソードはほかにもいっぱいあります。
顧客から「池田さんの会社とつきあって良かった」、スタッフから「自分に自信がついた」と言ってもらえる。これが一番のやりがいでしょう。それを言葉にしたら「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」になりました。具体化したのは2003年。社長として会社を任されてから3年目のことでした。
企業理念が固まったことで変化はありましたか。
ほぼ同時期にそれまでのオーナーから資本を譲り受けて、名実ともに私が経営者になりました。オーナーが株式の売却を考えていると聞いて、「だったら私に売ってください」と申し出たのです。それまでは「上場するまで」という約束で社長を務めていたわけですが、億単位の借金をしてオーナー経営者になったことで、これからは自分の思いをすべてこの会社に注ぎ込もうという覚悟が決まりました。企業理念をしっかり掲げたのもその一環です。結果的に、自分が創業したような経営環境になりました。
2006年には社名も「ウィルグループ」と改め※、新たなスタートを切られましたね。
「個と組織をポジティブに変革する」ことが会社の目的ですから、人材ビジネスはそのための手段だと考えるようになりました。私たちが提供する価値は、単に人材を供給することではなく、ポジティブな変化を呼び起こすこと。これまでは「ワークスタイル」の面でポジティブな選択肢を提供することに取り組んできましたが、もっと幅広く、さまざまな分野で同じようなトライをしていってもいいのではないかと思いました。そこで「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Life(暮らす)」という四分野の頭文字をとって「WILL」を社名にしました。組織的には持ち株会社制に移行し、2013年に東証二部上場を実現し、翌2014年からは東証一部に移行しています。
※2006年に持株会社として「ウィルグループホールディングス」を設立、2012年に「ウィルグループ」へ社名変更。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。