企業が従業員に自律的・主体的な行動を促すには、自社の向かう方向性、社内の制度やルールなど、従業員が自ら動くために必要な情報を社内に浸透させる必要があります。そんなオープンな組織をどのようにしてつくっていけばいいのか。組織づくりの第一歩として、HiTTO株式会社ではチャットボットを活用した情報共有の仕組みを構築することを提案しています。同社代表取締役の五十嵐智博さんに、オープンな組織の重要性や効果、仕組みづくりをサポートするソリューションについてお話をうかがいました。
- 五十嵐智博さん
- HiTTO株式会社 代表取締役
いがらし・ともひろ/国内トップシェアの法人向けセキュリティソフトベンダーにて、新規事業責任者としてクラウドサービスの事業立ち上げに従事。2017年にAIチャットボット事業の責任者としてHiTTO株式会社に入社、2018年に同社取締役に就任、2020年に同社代表取締役に就任し第二創業期を牽引中。
自己解決や権限委譲にはオープンな組織づくりが不可欠
現在の人事領域における課題は何だとお考えでしょうか。
組織全体に活気があり、従業員の生産性が高く、前向きに働ける環境をつくることが求められていると思います。しかし、人事担当の方自身がそのような働き方を実践できていないことが多いと感じています。従業員からの問い合わせ対応や事務処理などの定型業務が忙しく、未来に向けた前向きな仕事になかなか取り組めていないケースは多いはずです。
テレワークが進み、会社と従業員の間に距離もできています。これからの人事には、会社が目指すべき方向を示すとともに、人事部門自らが変化に強い組織づくりに向けた働き方を実践していることを従業員に示すことが求められるでしょう。
これからの企業には「オープンな組織づくり」が重要だとお考えだそうですが、その理由についてお聞かせください。
日本では労働力人口の減少が続き、人材を採用する難易度が高まっています。入社に至った人材に、定着し中長期的に活躍してもらうためには、組織風土や働きやすい環境をつくることが重要ですが、「オープンな組織づくり」はその中で大きな要素だと考えます。
オープンな組織づくりによって、得られる効果は二つあります。一つ目は、従業員の自己解決力や主体性を向上させる、変化に強い文化の醸成につながること。多くの企業が従業員の自律性や主体性について行動指針に盛り込んでいますが、情報格差があると物事を自分ごとで捉えることが難しくなります。情報が開かれているオープンな組織では従業員の主体的な行動が期待できます。
二つ目は、会社に対するエンゲージメントや帰属意識の向上です。「知らない」「聞いていない」ことが少なく、自社に対する理解度が高いほど、職場に愛着を持ち、働く意義を見いだすことができ、エンゲージメントや帰属意識の向上につながります。
法政大学大学院の石山先生は、これからは「戦略人事」と「サステナブル人事」を両立し、経営、従業員どちらの視点にも立つことが必要だと話されていますが、オープンな組織との関連性はどのようにお考えですか。
まず、人事部門が戦略人事に取り組める環境をつくることが重要だと思います。オープンな組織は、いつでも簡単に必要な情報にアクセスできる環境が整えられていますので、人に聞かなければ仕事が進まないといったことが少なくなり、一人ひとりが自己解決できることが多くなる。結果的に、会社全体としては本来の業務に集中しやすくなります。また、オープンな組織をつくることは、経営層の考えや取り組みを社内に浸透させることにも貢献しますので、戦略人事とサステナブル人事の両立にもつながります。
オープンな組織作りの具体的なアプローチとしては、二つあります。一つは、人と人の直接のコミュニケーションです。1on1などを中心として、時には経営トップ自ら自社が目指すべき方向をしっかりと発信する必要があります。
もう一つは、テクノロジーの活用です。必要な情報を社内に浸透させることを、直接の対話のみで行うには限界があります。HRテクノロジーなどのサービスやツールを取り入れることで、誰もが適切なタイミングで適切な情報にアクセスできる環境をつくることが重要です。
社内向けに特化し、新たなコミュニケーションを創出する「HiTTO」
貴社のソリューション「HiTTO」についてお聞かせください。
「HiTTO」は、変化に強いオープンな組織づくりを支援する社内向けAIチャットボットです。現在、さまざまな場面でチャットボットが使われていますが、「HiTTO」の一番の特長は社内向け(BtoE:Business to Employee)に特化していることです。「シゴトのナレッジを体系化し新しいコミュニケーションを創り出す」をコンセプトに掲げています。
私たちは、チャットボットを単なるシステムではなく、「一緒に仕事をする仲間」として捉える世界観を大切にしています。チャットボットと一緒に働くという新しいユーザー体験が、従業員のみなさまから愛される要素となり、結果的に社内に新しい仕組みとして浸透し、業務効率化や自己解決力の向上に直接的に寄与するからです。
社内向けに特化した「HiTTO」は、人事・労務・総務・経理・法務など、管理部門に寄せられる100万件以上の質問パターンをあらかじめ学習した共通AIを搭載しています。そのためFAQデータやシナリオを作成することなく、導入することができます。
「HiTTO」を導入することで、どのような変化が期待できますか。
大きく二点あります。一点目は、人事業務の効率化です。従業員からの問い合わせにチャットボットが自動応答で対応してくれるので、人事がその都度回答する必要がなくなります。業務効率化につながることはもちろん、人事部門の業務ノウハウの体系化や属人化の解消にもつながります。
チャットボットに寄せられる質問で意外と多いのが、出産・育休などのライフイベントや、賞与、評価など。いずれも、人には直接聞きづらいことですね。チャットボットなら、そういう心配もありません。
二点目は、人事制度の改訂や新しい社内ルールなどの社内浸透に寄与できることです。例えば、新しい福利厚生制度を説明会やポータルの掲示板に掲載して発信しても、従業員自身が必要だと感じているタイミングでなければ、理解は進みません。チャットボットであれば、従業員が知りたいと思ったタイミングで気軽に質問し、待ち時間なく回答を得られます。
「HiTTO」を導入していただいている企業の皆さまからは、人事部門の業務効率化はもちろん、コロナ禍で新設したテレワーク制度の啓蒙役としても、チャットボットが活躍してくれたというお声をいただいております。
ソリューションを導入したが従業員が使ってくれない、という声もよく聞かれます。
「HiTTO」のようなチャットボットサービスは、従業員に強制的に使ってもらうものではありません。利用した際に便利だと感じて、これからは電話やメールではなくチャットボットに聞いてみようと行動を変えられるかどうかが大事です。
当社では、導入していただいた企業の皆さまを、カスタマーサクセスチームが専任でサポートします。操作の説明や問い合せ対応だけではなく、どのような質問と回答を設定すれば良いのか、チャットボットに親しみを持ってもらうためにキャラクターや口調をどう設定するのかなど、従業員のユーザー体験を最高のものにするためのプロジェクト支援を行っています。
サービスありきでなく、戦略人事として自社の課題に向き合うことが重要
石山先生によれば、人事が「戦略人事を最優先に取り組む部署」と位置づけられるためには、「トップの認識を変える」「現場の実践によって変える」という二つのきっかけがあるとのこと。貴社ソリューションは、これらにどのように寄与できるのでしょうか。
両方に寄与できると考えています。「トップの認識を変える」という点では、経営層もチャットボットをユーザーの一人として利用するので、従業員が知りたいことや解決したいことを今まで以上に理解できます。
「現場の実践によって変える」という点では、人事はチャットボットに寄せられた質問を通じて、従業員の悩みを把握しやすくなります。現場の課題を明確にした上で次の施策の立案に取り組めるので、より戦略的な人事を実践することができます。
最後に、人事の皆さまへメッセージをお願いします。
近年、HRテクノロジーを導入する企業が増えていますが、テクノロジーはあくまで手段です。自社をどのような組織にしたいのか、そのためのボトルネックは何なのか。答えは必ず社内にあり、それらをしっかりと考えることで、自ずと変革に必要なHRテクノロジーのサービスや施策は見えてきます。我々はそんな変革に取り組む企業の皆さまを、全力でお手伝いさせていただきます。
HiTTO(ヒット)は、社内の情報を体系化し、適切なタイミングで社員に情報が届く仕組みを作り、組織全体の生産性とエンゲージメントを向上させる、社内向けのAIチャットボットです。
従業員からの質問の意図を自動で解析しキャラクターが自動で回答してくれるので、問い合わせ対応工数を削減するだけでなく、従業員の皆様が気軽に質問できる環境を作ることで、会社全体の生産性向上に貢献します。