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働きやすさだけでなく、働きがいも大切
不調者が輝きを取り戻すメンタルヘルス対策とは

島津 明人氏

島津 明人氏(東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授)

2012年11月に独立行政法人「労働政策研究・研修機構」が実施した調査結果によると、過去3年間にうつ病などメンタルヘルスの不調を理由に休職制度を利用した社員の退職率は、42.3%にのぼりました(※1)。企業活動の根幹をなす労働者の休職・退職は、企業のみならず、社会全体にとっても大きな損失です。今後は、予防としての職場のメンタルヘルス対策と並行して、不調者の復職支援や再発防止への取り組みも欠かせませんが、具体的には何をすればいいのでしょうか。健康とパフォーマンスが両立する、本当に健康的な職場づくりのポイントを、産業保健心理学がご専門の東京大学大学院准教授・島津明人先生にうかがいました。

※1<参考資料>メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)

プロフィール
島津 明人氏
島津 明人氏
東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授

しまず・あきひと/1969年福井県生まれ。2000年早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻・博士後期課程心理学専攻修了。博士(文学)、臨床心理士。早稲田大学助手、広島大学講師、同助教授、ユトレヒト大学客員研究員を経て、2007年より現職。主な著書に『ワーク・エンゲイジメント入門』『ワーク・エンゲイジメント:基本理論と研究のためのハンドブック』(星和書店)、『自分でできるストレスマネジメント』(培風館)、『職場のストレスマネジメント:セルフケア教育の企画・実践マニュアル』、『職場のポジティブメンタルヘルス:現場で活かせる最新理論』(誠信書房)、『ワーク・エンゲイジメント:ポジティブメンタルヘルスで活力ある毎日を』(労働調査会)などがある。

健康とパフォーマンスを両立させるワーク・エンゲイジメントとは

メンタルヘルス不調による休職者が増加傾向にあるなか、職場のサポート体制を充実させることは、当人はもちろん、企業や社会全体にも大きな価値をもたらします。日本企業のメンタルヘルス対策の現状を、どのようにご覧になっていますか。

休職者の増加と同時に、最近はいったん復職しても再発してまた休職するという休復職を繰り返す事例が増えていて、各企業や事業所の担当者の方々は、対応にかなり苦慮されています。そうした休復職者へのサポートを含め、メンタルヘルス対策に取り組む企業の数自体は近年、着実に増えてきました。従業員数1000人以上の事業所では、そのうち98%以上が何らかのメンタルヘルス対策を講じていることが、2013年の厚生労働省の調査で明らかになっています(※2)。問題は、日本企業の99.7%を占める中堅・中小規模の事業所に、どうやって普及、徹底させていくかでしょう。ネックは大きく二つあります。一つは、財政的な余裕がないこと。もう一つは、産業保健の専門職を自前で確保することが難しいという、中小企業特有の事情です。

とはいえ、手をこまねいているわけにはいきません。限られたリソースで最大の成果を出すためには、専門職や労務管理スタッフだけに任せるのではなく、むしろトップや管理職の方々が、メンタルヘルス対策を日頃のマネジメントの中にどう落とし込んでいくのか、今後はそういった発想が求められると思います。メンタルヘルス対策というと医療の問題という先入観が働くせいか、一部の不調者を対象にした活動だけで切り離され、経営層からの関心も希薄になりがちですが、そこにマネジメントの視点を入れることで、組織全体、会社全体、ひいては社会全体にわたる活動へと広げていくことができます。

そもそも従来の活動は、企業側から見ると、利益やメリットに直接つながるわけではない“守りのメンタルヘルス対策”でした。万一に備えて、社員の弱みや不調をカバーするリスク対策、いわば“保険”みたいなものですね。きちんと行わなければなりませんが、それだけでは決して響かない、より積極的に取り組む価値を見出せない、というのが経営側の本音ではないでしょうか。現状を打開するには、メンタルヘルス対策に力を入れるとこれだけのメリットがある、パフォーマンスが向上して企業成長にもつながる、というエビデンスを明示し、強調していくべきです。われわれ専門家にとっても、大きな転換点に来ていると思いますね。

こころの健康とパフォーマンスの両立が求められるわけですね。

これまで健康と生産性は両立しえないと考えられることが多く、それゆえに産業保健と経営は協調できずにいました。しかし、社会や経済の情勢が激変するなか、今後は健康とパフォーマンスを両立させないと、人も組織も生き残っていけません。たとえば「アブセンティーイズム/プレゼンティーズム」という概念があります。前者は病気や体調不良で従業員が欠勤することで、後者は出勤してはいるものの、何らかの原因で本来発揮されるべきパフォーマンスが落ちている状態を指します。伝統的な労務管理は、アブセンティーイズムによる労働損失を問題視してきましたが、最近では、見た目は「健康(=病気ではない)」でも仕事に身が入らないプレゼンティーズムのほうが、組織全体としての生産性の低下は著しいことが分かってきたのです(※3)。やはり、メンタル面の影響が大きいんですね。こうなってくると、弱みや不調を支えて、マイナスをゼロに戻すようなメンタルヘルス活動だけではもう間に合いません。従業員一人ひとりの強みやポジティブな側面を促すことで職場全体の健康度を底上げし、パフォーマンスの向上へとつなげていく対策も、あわせて行う必要性が出てきました。そこで注目したいのが「ワーク・エンゲイジメント」。産業保健とマネジメントとをつなぎ、健康とパフォーマンスの相乗効果を実現する上で、 “扇の要”となりうるキーコンセプトです。

※2<参考資料>厚生労働省 (2013). 平成24年労働者健康状況調査
※3<参考資料>Collins, J. J., Baase, C. M., Sharda, C. E., Ozminkowski, R. J., Nicholson, S., Billotti, G. M., Turpin, R. S., Olson, M., Berger, M. L.(2005). The assessment of chronic health conditions on work performance, absence, and total economic impact for employers. Journal of Occupational and Environmental Medicine, 47, 547-557.

日本の職場の強みである“支え合い”が減ると不調者が出やすい

「ワーク・エンゲイジメント」は、オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授が提唱したメンタルヘルスの新概念で、国内では島津先生がいちはやく紹介されました。

島津 明人氏(東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授)

シャウフェリ教授はもともと「バーンアウト」(燃え尽き症候群)の研究で有名な方ですが、ネガティブなバーンアウトだけでな く、働くことでもたらされるポジティブな心理にも目を向けるべきだと考え、疲れ切って仕事への熱意が低下しているバーンアウトとは真逆の状態、対立概念として、ワーク・エンゲイジメントを提唱されました。端的にいうとそれは、「健康で“かつ”いきいきと働いている」状態のことです。仕事に誇りややりがいを感じている「熱意」、熱心に取り組んでいる「没頭」、仕事から活力を得てイキイキしている「活力」という3要素から構成され、これらが揃っている状態を、ワーク・エンゲイジメントが高い状態と定義します。これと似て非なる傾向が、いわゆる「ワーカホリズム」(仕事中毒)です。見た目は同じように仕事熱心でも、なぜ熱心に働くのか、動機を比べると両者の違いは明らかです。ワーク・エンゲイジメントの高い人が、「その仕事が好きだから、楽しいから」といった理由で前向きに取り組むのに対し、ワーカホリックな人は、仕事から離れると不安や罪悪感にさいなまれてしまうために、離れられない。心理的なメカニズムは依存症のそれと共通しています。

では、どうすれば、ワーク・エンゲイジメントは高まるのでしょうか。高まるとどういうメリットが期待できますか。

ワーク・エンゲイジメントを高める要因には、「個人の資源」と「仕事の資源」と呼ばれるものがあります。個人の資源とは、その人自身の内的、心理的資源のことで、楽観性や自尊心、レジリエンス(粘り強さ)、課題に取り組む際に「自分ならできる」と思える自己効力感などが該当します。一方、仕事の資源は端的に言うと、仕事の負担を緩和し、やりがいを高める組織内での有形・無形の支援のこと。具体的には、上司・同僚のサポートや仕事の裁量権、パフォーマンスへの評価、トレーニングの機会などです。研究の結果、ワーク・エンゲイジメントは、こうした資源によって高まり、それがパフォーマンスの向上や組織へのコミットメントにもつながることがわかってきました。

また、それだけではなく、ワーク・エンゲイジメントが高い人ほどストレス反応が少なくて、心身の健康度が高いこともわかっています(※4)。従来のメンタルヘルス対策では、組織や仕事に内在するストレスの原因を減らし、働きやすさに配慮することで健康障害の防止に努めてきました。しかし、働きやすいだけでは不十分なんですね。むしろ個人の資源や仕事の資源を増強し、ワーク・エンゲイジメントが高まるようにすれば、働きがいが生まれてパフォーマンスも向上するし、同時にメンタルヘルス不調も回避できる。健康増進と生産性向上の、まさに一石二鳥の効果が得られるわけです。

逆に、そうした資源が乏しい職場ほど、メンタルヘルス不調者が発生しやすいということですね。

その通りです。特に日本人はチームワークを重んじるので、仕事上の支え合いや助け合いなどの資源が少なく、職場の人間関係がギスギスしてくると、メンタルの不調が出やすいようです。2014年に日本生産性本部が行った調査でも、各企業におけるメンタルヘルス不調者の増減と職場での助け合いやコミュニケーションの増減とをクロス集計したところ、一定の相関が見られました(※5)。一橋大学大学院の守島基博教授によると、最近は個人の成果を競うあまり、「職場の寒冷化」が進んでいる、とのことです。野球にたとえて、「三遊間のゴロを誰も取りに行かない職場」が多くなった、ともおっしゃっていますね。要は、日本の職場の強みであるはずの、支え合いが失われつつあるということです。そのようにメンタルの不調が起こりやすい職場では、不調者が休職から復帰しても、再発の可能性が高いことは否めません。

※4<参考資料>Shimazu, A., Schaufeli, W. B., Kamiyama, K., & Kawakami, N. (2015). Workaholism vs. work engagement: The two different predictors of future well-being and performance. International Journal of Behavioral Medicine, 22, 18-23.
※5<参考資料>第7回 『メンタルヘルスの取り組み』に関する企業アンケート調査結果:公益財団法人 日本生産性本部. 2014年11月13日

先の見えない不安をケアし、休職者が治療に専念できる環境を

不幸にも、職場にメンタルヘルス不調者が発生した場合、休職から復職・再戦力化にいたるまで、会社はどういう点に注意してサポートしていけばいいのでしょうか。

まず大切なのは、誰が窓口になって休職者に対応するのか、キーパーソンを明確にしておくことです。産業保健スタッフなのか、人事・総務なのか、あるいは職場の上司なのか。休む本人としては、そこがしっかり定まっていないと、安心して休めません。企業によっては、休職者の主治医から復職に向けた意見書などが届いて初めて、窓口が決まるような場合もありますが、それでは遅すぎます。休業が決まった時点から、キーパーソンを中心に、復帰までの流れや目安を明示した上で、サポートに動かなければいけません。そのあたりが各社であらかじめきちんと体制化されているといいのですが、実は国全体としても、休職中の労働者に対するサポートは、誰が主導して担うべきか、行政や専門家などの間で明確なコンセンサスがとれていないのです。たとえば、本人との連絡ひとつをとっても、休職中だと社用のメールアドレスは止まってしまいますし、また基本的に無給ですから、上司や人事部の方から本

島津 明人氏(東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授)

休業治療を開始した当初は、本人も不安がひときわ大きいと思います。

何が不安かというと、やはり先が見えないことが一番ですね。自分はどうなってしまうのか、本当に仕事に戻れるのか、と。初めてメンタルヘルスの不調を経験する人はなおさらでしょう。この時期はまず、本人が安心して治療に専念できる環境を整えることが最優先ですから、サポートする側も、そうした不安を少しでも和らげるように心がけなければなりません。たとえば厚生労働省の研究班が現在、休職者向けのウェブサイトを準備しています。休復職の道筋のモデルケースとして活用できる体験談なども掲載する予定なので、そうしたツールを会社から休職者へ、ぜひ紹介して欲しいですね。

休職中の経済的な不安についても、傷病休暇制度などの社内制度や公的支援制度に関する情報を、休職前から本人や家族に丁寧に説明しておくことで、軽減される面は少なくありません。必要な時に本人と連絡をとれるように、休職に入る前にコミュニケーション手段を確認しておくといいでしょう。何よりも大切なのは、休職者自身が孤立しないこと。職場を離れていても、「会社から必要とされている」と感じることができますから。

主治医から復帰可能と判断された従業員には、復職に向けて、どのような対応が求められますか。

主治医の先生は休職者を、あくまでも“患者”として診ています。したがってその判断は、主に日常生活における病状の回復にもとづくもので、必ずしも勤務の実態まで踏まえてはいません。最終的な復帰の可否については、休職者本人の意欲や回復レベル、職場の現状などを勘案して、産業医などが総合的に判断する必要があります。復帰決定後、企業が提携する各種リワーク施設を活用し、“リハビリ”を経てから、本格復帰へと移行するケースも、最近は増えてきました。裏を返せば、どの企業にも、そうしたリハビリを社内で行う余裕がないということです。むしろ「戻る以上はきちんと仕上げてくるのが当然」というような風潮が強まり、結果的に復職のハードルが上がってしまった職場も少なくありません。そういう環境では、本人も自分のパフォーマンスに不満や劣等感、周囲への申し訳なさを感じやすく、それがストレスとなって、再びメンタルヘルスを崩しかねないのです。受け入れ側の理解と配慮、個々に応じた柔軟な対応が求められます。

休復職を繰り返す場合はキャリアを真剣に見つめ直す必要も

メンタルヘルス不調の再発で休復職を繰り返すことは、組織やチームに支障を来すだけでなく、本人の能力をも低下させる可能性があります。負荷の少ない、言い換えると、チャレンジングではない仕事しか回ってこなくなり、能力を発揮したり、伸ばしたりする機会が失われていくからです。ビジネスパーソンとして、さび付いてしまうわけですね。復職しては再発し、また休職を繰り返す場合、本人のストレス耐性の問題だけでなく、そもそもその仕事自体が本当に本人に合っているのかということも、キャリアの視点から見直してみる必要があるでしょう。

自分の適性や本当にやりたいことが何かを考えずに、大企業、有名企業というだけで就職先を選び、惰性で働いてきたような人は、メンタルの不調で従来のパフォーマンスを出せなくなると、不安になり、しばしば大きな危機に陥ります。日本の大企業ではこれまで、休復職を繰り返しても、雇用は基本的に守られてきました。しかし、それが皮肉にも、自分のキャリアについて真剣に考える機会を、本人から奪っていたという一面も否めないのです。ベンチャー企業などでは、最初から休業期間の期限を定め、そこまでに復帰しなければ満了で退職、というところも珍しくありません。“守り過ぎる”より、そうして半強制的にでも自分の身の振り方を考えるように仕向けたほうが、結果的には、働く人に優しいのかもしれません。難しい問題ですね。

休職者も復帰するにあたって、自分自身と向き合うことが求められるわけですね。

リワークでも、最後の仕上げとして、「自分のトリセツ(取扱説明書)」作りというプログラムが組まれているところもあります。つまり、自分はどこが強くてどこが弱いのか、何ができて何ができないのか、どういう配慮を求めているのか、そのあたりを自分なりに見つめ直し、周囲に正しく伝えられるようにまとめておくわけです。スムーズな職場復帰を果たす上で、自分自身への理解を深める作業は欠かせません。

ありがとうございました。最後に企業でメンタルヘルス対策に取り組む方々に向けてメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、働きやすさだけでなく、働きがい、やりがいをどう高めていくか。ここが、メンタルヘルス不調の発生、再発を防ぐ大きなポイントだと思います。現実問題として、日の当たりにくい職場や縁の下の力持ち的な部署、うまくいって当たり前と思われている業務を担当している部署では、不調者が出やすいんですよ。そのため、たとえ地味でも、目立たなくても、そこにはこういう意義があり、組織や会社ひいては社会全体にこういう形で貢献しているのだという価値観を、マネジメントが現場に徹底し、エンゲイジメントを促していかなければいけません。一人ひとりがやりがいを感じていきいきと働いている――それこそが本当に“健康的”な職場であり、目指すべきメンタルヘルスのあり方なのです。

島津 明人氏(東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野 准教授)

(撮影場所:東京・文京区の東京大学本郷キャンパスにて)