無料会員登録

日本の人事部への登録は45秒で完了!
※登録内容はマイページで確認・変更できます。

※「@jinjibu.jp」からのメールが受信できるようにしてください。

既に会員の方はこちら

または各SNSで登録

日本の人事部があなたの許可無く投稿することはありません

既に会員の方は
こちらからログイン

ログイン

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・ログイン

ありがとうございます。会員登録が完了しました。
メールにてお送りしたパスワードでログインし、
引続きコンテンツをお楽しみください。

無料会員登録

不正な操作が行われました。
お手数ですが再度操作を行ってください。

会員登録完了・自動ログイン

会員登録とログインが完了しました。
引続きコンテンツをご利用ください。

マイページ

会員登録済み


選択したSNSアカウントは既に会員登録済みです。

【後編】真の緊急時対応訓練とは│人の行動の揺らぎに備える

本コラムは、【前編】真の緊急時対応訓練とは │ 人の行動の”揺らぎ”に備える の続きです。

 

訓練は“人”を想定しているか?

多くの職場で「緊急時対応訓練」が行われています。
年に一度、決められたシナリオに沿って避難を行い、消火器を手に取り、消防署に報告する。
訓練の最後には、「訓練評価」として記録がまとめられ

・「マニュアルに従い適切に行動できた」
・「特に改善点なし」
・「マニュアルの見直し不要」

といった結論が並びます。
表面的には問題はなく、形式としては「やるべきことをやっている」。
しかし、果たしてそれで本当に、緊急時に対応できるのでしょうか。
私は、相談を受けるたびに、この問いを強く投げかけたくなります。

1.形骸化した訓練の実情

形式的な訓練では、参加者の多くが「これは訓練だから」と心のどこかで理解しています。
煙が立ちこめることもなく、誰もパニックにはならず、責任者は必ず冷静に指示を出す。
参加者も手順通りに整列し、整然と避難を終える。

それは「予定調和の舞台」であって、本物の混乱を体験する場ではありません。
訓練の記録には「全員がマニュアルに従い行動できた」と記され、最後は「見直し不要」と結ばれます。

しかし、その結論が意味するのは、「現実に本当に機能するかは試していない」ということでもあるのです。

2.人間を想定しない訓練の限界

実際の緊急事態では、人間はマニュアル通りには動きません。
フリーズする人、走って逃げる人、危険に飛び込む人、責任者が動けなくなることさえあります。
にもかかわらず、多くの訓練は「全員が冷静に動ける」ことを前提に組み立てられています。

つまり、「人間の揺らぎ」を想定しないまま、訓練を終えてしまっているのです。
これでは、いざ現実が訪れたときに初めて「想定外の人間行動」に直面し、混乱が拡大してしまいます。

3.私自身の体験―三日間のライン停止

私も過去に、痛烈な経験をしました。
ある装置のトラブルで、ラインが三日間も停止してしまったのです。
復旧に奔走しながら、「どうすればこのダメージを抑えられるのか」と自問しました。

この教訓から、私はトラブル時の対処マニュアルを整備し、さらに実際に使えるように訓練を行いました。
そして二年後、なんと同じトラブルが再発してしまったのです。
「またやってしまった」と、責任者として情けなく思いました。
しかし、そのときラインの停止時間は、わずか三時間で済んだのです。

4.訓練がもたらすもの―完璧ではなく回復力

この経験が私に教えてくれたのは、「訓練はトラブルをゼロにするものではない」ということです。
トラブルの再発は防げなくても、被害を最小化し、復旧を早める力を養ってくれる。
それが、訓練の真の価値だと理解しました。

つまり訓練とは、「完璧な対応」をするためのものではなく、「想定外に直面したときに立ち直る力=レジリエンス」を育むものなのです。
復旧時間を三日間から三時間にできたのは、マニュアルと訓練のおかげで組織が“回復力”を獲得したからでした。

レジリエンスとは、「逆境や困難に直面しても、しなやかに受け止め、立ち直り、前に進む力」のことです。
心や組織の回復力とも言えます。

5.人を想定した訓練のあり方

では、本当に意味のある訓練とは、どのようなものでしょうか。
私は、次のような要素を取り入れるべきだと考えています。

1.    フリーズ役を仕込む
→訓練の中で「動けなくなる人」をあえて設定する。
それにどう対応するかを学ぶ。

2.    暴走役を用意する
→危険源に近づこうとする人をあえて演じてもらい、止める訓練を行う。

3.    責任者が動けないシナリオ
→指揮官が指示を出さない設定を入れ、誰が代わりに声を出すのかを試す。

4.    混乱の中での声掛け練習
→大声で「避難!」と叫ぶことを、実際に体で経験する。

5.    評価基準の転換
→「マニュアル通りに動けたか」ではなく、「想定外の人間行動にどう対処したか」を評価する。

6.訓練を人間のリアルに近づける

結局のところ、訓練を「予定調和のイベント」にするのか、「想定外を含めたリアルな体験」にするのかが、組織の命運を分けます。
人間の行動や情動をリスクとして見込み、それを訓練に織り込むことで、組織は本当の対応力を手にすることができます。

訓練は、マニュアルを守れるかどうかを確認する儀式ではありません。
人の揺らぎを前提に、混乱の中でも仲間を守り、被害を最小化する力を育むものなのです。

訓練を形骸化させるな!

ここまでお読みいただいた皆さんには、もうお気づきかもしれません。
緊急時対応において、もっとも大きなリスクは「設備」や「物」そのものではなく、人間の行動と情動なのです。
酸性液体がシャワーのように降り注いだあの日、私は目の前で人が固まり、走って逃げ、突っ込み、責任者が動けなくなるのを見ました。

そして若手の私が思い切って声を上げ、指揮をとることでようやく避難と収束に至ったのです。
あの場面は30年たった今も鮮明に思い出すことができます。
あの体験が教えてくれたのは、「マニュアル通りに動けると信じてはいけない」ということでした。

緊急時、人は合理的には動きません。
感情が暴れ、本能が優先され、想定外の行動が必ず生まれます。
その事実を前提にしていなければ、訓練は単なる儀式で終わってしまいます。

1.形骸化した訓練が招く危うさ

多くの職場で行われている年1回の訓練は、きれいに整列して避難し、責任者が冷静に指示を出し、最後に「マニュアル通りでした」と記録するものです。
そこに「人の揺らぎ」は、一切登場しません。
その結果、本当の緊急時に初めて「想定外の行動」と直面し、混乱が拡大するのです。

・フリーズして動けない人に誰が声をかけるのか?
・危険に飛び込もうとする人を誰が止めるのか?
・ 責任者が動けないときに誰が指揮を執るのか?

こうした問いを置き去りにしている限り、訓練は「やった」という実績だけを残す形骸化したイベントにすぎません。

2.訓練の本質は「想定外への対応」

訓練とは「マニュアルを守れるか」を確認するためのものではありません。
むしろ「マニュアルにない行動が出たとき、どう対応するか」を学ぶ場であるべきです。

 動けない人がいたら、どう声をかけるか。
 逃げ惑う人が仲間を押しのけたら、どう収拾するか。
 勇敢すぎる人をどう制止するか。
 リーダーが沈黙したら、誰が「代わりに指揮をとる」と言えるか。

こうした「人間の想定外」に対応するシナリオを組み込み、実際に体験させることが本当の訓練です。

3.訓練は「回復力」を育てる

私はかつて、装置のトラブルで三日間ラインを止めたときの話し。
恥ずかしい話ですが、その後マニュアルを作り、訓練を行ったにもかかわらず、二年後に同じトラブルを起こしてしまいました。
しかしそのとき、ラインの停止時間は三時間で済みました。

訓練の真価は、失敗をゼロにすることではなく、被害を最小化し、回復を早める力を育てることにあります。
つまり、訓練とは「完璧さ」ではなく「レジリエンス(回復力)」を高める営みなのです。

4.あなたの組織で、同じことが起きたら?

ここで読者の皆さんに問いかけたいと思います。

•あなたの職場で緊急事態が発生したら、誰が固まるでしょうか?
 誰が逃げ出し、誰が勇敢に突っ込むでしょうか?
•そして、もしリーダーが動けなかったら、誰が声を出すでしょうか?

その答えを「誰もが冷静に動けるはず」と考えてしまうなら、それこそが危険です。
現実には必ず「人の揺らぎ」が生じる。
だからこそ訓練は、その揺らぎを前提にして設計すべきなのです。

5.訓練を形骸化させるな!

訓練を形骸化させてはならない。
マニュアル通りの予定調和を繰り返すのではなく、人間の不完全さ、感情の揺らぎ、想定外の行動をリスクとして組み込んでほしい。
緊急時対応とは、設備やシステムとの戦いであると同時に、人間の心理や行動との戦いでもあるのです。

だからこそ、訓練は「人を想定する」ことが肝心です。

嵐の中の船を守れるのは、マニュアルではなく、仲間を思い、声を出し、時に身体で止め合う“人の力”です。
その力を引き出すためにこそ、訓練の意義があります。
どうか皆さんの組織でも、訓練を形骸化させず、人間を想定したリアルな練習を積み重ねてください。
それが、いつか本当に訪れるかもしれない緊急事態から、自分と仲間を守る唯一の方法なのです。

しかし、訓練を形骸化させないためには、もうひとつ大切な視点があります。
それは「常に備える」ということです。

 

常に備える

ここまでお読みいただいた方は、すでにお気づきかもしれません。
緊急時対応の本質は、単なる「マニュアル遵守」ではなく、人間の行動と感情の揺らぎを前提に備えることです。
訓練を形骸化させないことはもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、日常の中で小さな備えを積み重ねていくことなのです。

1.忘れているようで、実は残っている記憶

私自身、酸素欠乏作業主任者や防火技能研修などで「危険を知らせる」「避難を優先する」「無謀な救助を避ける」といった基本を学びました。
正直なところ、普段の仕事では、忘れてしまっていた部分も多かったと思います。

しかし、酸性液体の配管破損事故の現場に遭遇したとき、不思議なことにそれらの記憶が「いきなり発動」したのです。
大声で「避難!」と叫び、固まった人に肩を叩いて声をかけ、突っ込もうとする人を身体で制止した。
・・・・これは理屈ではなく、体に刻まれていた行動パターンがスイッチのように入った瞬間でした。

心理学的にいえば、これは状態依存記憶と手続き記憶が働いたものです。
緊張状態になると、過去の訓練や講習で刻まれた行動が呼び起こされ、体が勝手に動くのです。

2.発動を可能にする「三つのスイッチ」

では、こうした「発動」を確実にするにはどうしたらよいでしょうか。
私は、次の三つを意識することが大切だと考えています。

•状態依存記憶をつくる
危険や緊張を伴う状況で訓練する。
アラーム音や煙などリアルな要素を入れることで、記憶が危険と結びつきやすくなります。

•手続き記憶を鍛える
声を出す、腕を引く、消火器を操作するなどを繰り返し身体で練習し、考えるより先に体が動く状態にしておくこと。

•発動条件を仕込む
固まる人役、暴走する人役、動けない責任者役を訓練に入れ、「想定外」を疑似体験することで、本番でスイッチが入りやすくなります。

この「三つのスイッチ」を意識することで、学んだことは“発動可能な力”へと変わっていきます。

3.常に備えるためにできること

訓練を年1回の儀式にするのではなく、日常の習慣に落とし込むことが重要です。

•月1回、5分だけ声出し訓練をする。
•消火器の操作や避難経路確認を、繰り返し体で覚える。
•訓練後には「なぜ動けなかった?」「なぜ突っ込んだ?」を振り返るディブリーフィングを行う。

小さな積み重ねが、いざというときに大きな違いを生みます。

4.ニューロセリング(脳科学に基づいた訴え)による問いかけ

ここで、あなたに問いかけたいと思います。
もし、あなたの組織で突然の緊急事態が起きたら・・・・誰が固まり、誰が逃げ、誰が突っ込み、そして誰が声を出すでしょうか?
その瞬間に「自分は大丈夫」と思っても、人は必ず揺らぎます。

だからこそ、訓練で「人間の揺らぎ」に備えておかなければならないのです。
緊急時のマニュアルは、どれほど完璧に作られていても、それだけでは不十分です。 
必要なのは、どんな状況でも瞬時に判断し、リーダーシップを発揮できる人財を育てること。
そのためにこそ、訓練や講習を形骸化させず、「発動条件」を意識した実践を重ねることが求められます。

5. 次に考えるべきこと

そしてもう一つ強調したいのは、BCP(事業継続計画)や緊急対応マニュアルの見直しです。
形式的に作られたままになっていないでしょうか?
「想定外の人の行動」を前提に盛り込んでいるでしょうか?
もし不安を感じるなら、その時点ですでに見直す必要があります。

 

私は現場での実体験と、心理学・行動科学の知見をもとに、緊急対応訓練の支援を行っています。

もし「自分の組織の訓練は形骸化していないか」「人の行動を前提にした備えができているか」と疑問を感じたら、ぜひ私にご相談ください。

必ずヒントをご提供できるはずです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

このコラムを書いたプロフェッショナル

坂田 和則

坂田 和則
マネジメントコンサルティング2部 部長 改善ファシリテーター・マスタートレーナー

問題/課題解決を現場目線から見つめ、クライアントが気付いている原因はもちろん、その背景にある奥深い原因やメンタルモデルも意識させ、問題/課題改善モチベーションを高めます。
その先の未来には、改善レジリエンスの高い人材が活躍します。

問題/課題解決を現場目線から見つめ、クライアントが気付いている原因はもちろん、その背景にある奥深い原因やメンタルモデルも意識させ、問題/課題改善モチベーションを高めます。
その先の未来には、改善レジリエンスの高い人材が活躍します。

得意分野 モチベーション・組織活性化、リーダーシップ、コーチング・ファシリテーション、コミュニケーション、ロジカルシンキング・課題解決
対応エリア 全国
所在地 港区

このプロフェッショナルの関連情報

  • 参考になった0
  • 共感できる0
  • 実践したい0
  • 考えさせられる0
  • 理解しやすい0

無料会員登録

記事のオススメには『日本の人事部』への会員登録が必要です。

この記事をオススメ

あなたのオススメとして、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)が公開されます。
※コメント入力は任意です。

オススメ
コメント
(任意)
■コメント投稿に関するご注意
以下に定めるご注意をご承諾の上、コメントを投稿してください。

1.
記載されている記事や回答の内容に関係のないコメントは、ご遠慮ください。
2.
以下の内容を含んだコメントの投稿を禁止します。『日本の人事部』事務局が禁止行為に該当すると判断した場合には、投稿者に通知することなく、コメントを削除または修正することもございます。予めご了承ください。
・第三者の名誉または信用を毀損するもの
・第三者を誹謗・中傷するもの
・第三者の名誉、信用、プライバシーを侵害するもの
・第三者の著作権等の知的財産権を侵害するもの
・第三者の権利または利益を侵害するもの
・公序良俗に反する内容を含んだもの
・政治活動、宗教、思想に関する記載があるもの
・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
3.
氏名・住所・電話番号などの個人情報を記載すると、トラブルに繋がる可能性があります。絶対に記載することのないよう、ご注意ください。
4.
掲載されたコメントにより発生したトラブルに関しては、いかなる場合も『日本の人事部』事務局では責任を負いかねますので、ご了承ください。
5.
ご投稿いただきましたコメントは、『日本の人事部』や、当社が運営するウェブサイト、発行物(メールマガジン、印刷物)などに転載させていただく場合がございますので、ご了承下さい。

コメントを書く

あなたのオススメとして、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)が公開されます。

コメント
■コメント投稿に関するご注意
以下に定めるご注意をご承諾の上、コメントを投稿してください。

1.
記載されている記事や回答の内容に関係のないコメントは、ご遠慮ください。
2.
以下の内容を含んだコメントの投稿を禁止します。『日本の人事部』事務局が禁止行為に該当すると判断した場合には、投稿者に通知することなく、コメントを削除または修正することもございます。予めご了承ください。
・第三者の名誉または信用を毀損するもの
・第三者を誹謗・中傷するもの
・第三者の名誉、信用、プライバシーを侵害するもの
・第三者の著作権等の知的財産権を侵害するもの
・第三者の権利または利益を侵害するもの
・公序良俗に反する内容を含んだもの
・政治活動、宗教、思想に関する記載があるもの
・法令に違反する、または違反のおそれがある記載のあるもの
・差別につながるもの
・事実に反する情報を記載するもの
・営利目的の宣伝・広告を含んだもの
・その他、内容が不適切と判断されるもの
3.
氏名・住所・電話番号などの個人情報を記載すると、トラブルに繋がる可能性があります。絶対に記載することのないよう、ご注意ください。
4.
掲載されたコメントにより発生したトラブルに関しては、いかなる場合も『日本の人事部』事務局では責任を負いかねますので、ご了承ください。
5.
ご投稿いただきましたコメントは、『日本の人事部』や、当社が運営するウェブサイト、発行物(メールマガジン、印刷物)などに転載させていただく場合がございますので、ご了承下さい。

問題を報告

ご報告ありがとうございます。
『日本の人事部』事務局にて内容を確認させていただきます。

報告内容
問題点

【ご注意】
・このご報告に、事務局から個別にご返信することはありません。
・ご報告いただいた内容が、弊社以外の第三者に伝わることはありません。
・ご報告をいただいても、対応を行わない場合もございます。

新着 プロフェッショナルコラム