なぜアサーティブ研修が職場で機能しないのか?
多くの企業研修が見落としている「見えない問題」
「アサーティブコミュニケーション研修を実施したのに、現場で活用されない」「形だけ真似しているが、かえって関係性が悪化した」というような声を、人事担当者の方々からよくお聞きします。
アサーティブは、自分のことも相手のことも両方を大切にする対等なコミュニケーションです。多くの研修では「Iメッセージを使う」「事実と感情を分けて伝える」といったテクニックが教えられます。確かにこれらは重要な要素ですが、スキルを効果的に発揮するためには、どういうマインドやあり方でいるのかが決定的に重要なのです。
職場で頻発する「偽装されたアサーティブ」の罠
ある管理職研修での出来事をお話しします。参加者が部下への指導場面で、こんな伝え方をされました。
「○○さんの昨日の対応を見て、私はお客様に失礼な印象を与えたのではないかと感じ、心配になりました」
形式的には完璧なアサーティブです。しかし、部下はなぜかより反発的になってしまいました。
なぜでしょうか?
表面化しない「隠れた攻撃性」が組織に与える深刻な影響
人は事実と自分の感じたこと、すなわち捉え方や解釈を混同して相手に伝えがちです。例えば「あの人は協調性がない」というのは事実ではなく、「協調性がないように私には感じられる」が正確な表現です。
しかし、より深刻な問題があります。アサーティブな伝え方の形をした、遠回しな相手への攻撃です。
先ほどの管理職の例で言えば、表面上は「自分の感じたことを伝える」形を取りながら、実際には「あなたは失礼な対応をしたのだから反省すべきだ」という責める意図が隠れていたのです。
この裏側にある意図は、微妙な言葉遣いや語調、表情を通じて確実に相手に伝わります。 だからこそ、形式的にはアサーティブでも「なんだか責められているように感じる」という違和感が生まれるのです。
真のアサーティブが機能する組織の条件
では、どうすれば本当に機能するアサーティブコミュニケーションが実現できるのでしょうか?
最も重要なのは、「それを受け取るかどうかを決めるのは相手の権利である」という前提を心から受け入れることです。
相手に何かを変えて欲しいと願っているからこそ要求を伝えるのですが、相手が必ずしもそれを受け入れないかもしれないことを、理屈ではなく心の底から受け入れておく必要があります。
これがないと、どんなに完璧な形式でアサーティブに伝えても、無意識のうちに相手をコントロールしようとする意図が滲み出てしまいます。
形式を超えた「あり方」の変革が組織を変える
私がこれまで数多くの組織でアサーティブコミュニケーション研修を行ってきた経験から確信していることがあります。
形だけをなぞっても意味はなく、アサーティブの本質である「自分と相手は対等な存在であり、だからこそ自分も相手も両方を尊重し、大切に扱う」という本質に立ち返ることが最も重要だということです。
この「あり方」の変革なくして、どんなに洗練されたテクニックを学んでも、職場の関係性は根本的には改善されません。
本質的なアサーティブコミュニケーションの習得には専門的な導入が必要
表面的なスキル研修では限界があります。参加者一人ひとりの無意識の意図や、組織特有のコミュニケーション文化の課題を見極め、個別にアプローチしていく必要があります。
真のアサーティブコミュニケーションは、単なる話し方の技術ではありません。組織全体の関係性の質を根本から改善していく継続的な取り組みなのです。

このコラムを書いたプロフェッショナル
知識茂雄
ガイアモーレ株式会社提携講師(株式会社ハート・ラボ・ジャパン)
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。

知識茂雄
ガイアモーレ株式会社提携講師(株式会社ハート・ラボ・ジャパン)
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。
得意分野 | キャリア開発、リーダーシップ、コーチング・ファシリテーション、チームビルディング、コミュニケーション |
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対応エリア | 全国 |
所在地 | 熊本市 |
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