失敗を許す覚悟を持つ
コーチング研修の終盤には必ずロールプレイを組み込みます。たった一日の学びで完璧にコーチングできる人はいませんが、実際にやってみることで「頭でわかる」と「現場でできる」の隔たりを身に染みて感じてもらえます。
先日の研修ではある方がロールプレイに挑戦し、こんなことがありました。見学中は「ここで質問を挟めばいいのに」と思えた場面でも、いざ自分が当事者になると頭が真っ白になり、ついアドバイスを口走ってしまったのです。「分かっていたはずなのにできなかった」という言葉は、知識と行動の溝を示す典型例でした。
ロールプレイで取り上げるテーマは、若手が納期を守れない、リモートと出社組の温度差が大きい、といった実際の職場課題です。上司は解決策を示したくなりますが、コーチングではその衝動を抑え「あなたが変えられそうな一番のポイントは何だと思う?」と問いかけるだけに留めます。沈黙が流れても焦ってヒントを与えない。この姿勢が「考えさせる」マインドです。リーダーが自分の正解を手放せば、部下は自ら思考し行動する力を伸ばせます。
もちろん、相手に任せれば失敗のリスクも伴います。若手エンジニアが提案した手法が結果的にリワークになったとしても、その経験自体が学びです。上司は「次にどう活かす?」と問い、失敗の責任を共に背負う覚悟を示します。失敗を許す文化が根づけば、部下は挑戦を恐れず自発的に動くようになります。これは、子どもが自転車に乗れるまで転びながら練習するのを見守る親の姿勢と同じです。
研修翌日からできる小さな実践は三つ。
一つ目は1on1で質問をひとつ増やすこと。
「今の課題を乗り越えるために最初に出来そうなことは?」と聞いてみてください。
二つ目は相手が考え込んでも五秒間待つこと。
三つ目は小さな失敗を許容し、一緒に振り返ることです。
これだけで部下の表情や行動は変わります。ロールプレイで味わった「うまく出来ない悔しさ」は、上司自身の成長痛でもあります。その痛みを通じて失敗を許す覚悟を深めれば、チームの学習と挑戦のサイクルが回り始めるはずです。

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ストレングスファインダーで変革を促す~対話と多様性を重視し、個々の強みを活かすことで組織全体の成長をサポート~
前職では半導体製造技術者として勤務しながらコーチングやアサーション研修の社内講師も務める。独立後、ストレングスファインダーを活用したチームビルディングやリーダーシップ研修を中心に提供。ストレングスファインダーのプロファイリングに定評がある。
知識茂雄(チシキシゲオ) ガイアモーレ株式会社提携講師(株式会社ハート・ラボ・ジャパン)

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