「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2025)」を実施
人事・管理職ともに7割以上が管理職に関する課題感、特に「メンバー育成」に課題。今後求められるのは、イノベーションを担う「創造革新タイプ」の管理職
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、300名の人事担当者および管理職層を対象に、「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2025)」を実施しました。
本調査では、人事・管理職ともに7割以上が管理職に関する課題感を持っていることや、両者が共に「メンバー育成」を最重要視している一方で、それが管理職にとって最も困難な業務でもあることが判明。さらに今後は、従来型の「組織管理タイプ」や「実務推進タイプ」に加え、イノベーションを担う「創造革新タイプ」の管理職が強く求められる傾向や、プレイングマネジャーとして専門性を磨き続ける志向の高さも浮き彫りとなりました。
【エグゼクティブサマリ】
- 人事・管理職ともに70%以上が「管理職(中間管理職)に関する課題感」を持ち、共通する課題感は「管理職候補の不足」。その他、管理職は特に「管理職の負担増大」、人事は「管理職が期待に応えられていない」「管理職育成」「女性管理職比率」に課題を感じる割合が高い
- 人事が管理職に期待していることと、管理職が管理職として重要だと考えている役割のトップは、ともに「メンバー育成」。管理職が日々のマネジメント業務で難しいと思っていることのトップも「メンバーの育成・能力開発をすること」
- 人事が実施を検討している管理職向けのサポートとして、選択率が高いのは「マネジメント業務の負荷を軽減するための取り組み」
- 60%以上の管理職が会社から「自律共創型組織(チームで考え、柔軟に価値を生み出す組織)」への移行を求められており、本人も「自律共創型組織」になる必要性を感じている
- 管理職にとっての「自律共創型組織」の難しさは「仕事の割り当て」や「新しいやり方へのチャレンジ」「自発的な情報共有や相互サポート」にある
- 「自律共創型組織」への移行の成果として、「チームワークの向上」が1位に
- 既存の管理職に多いのは「組織管理タイプ」と「実務推進タイプ」で、企業が今後増やしたいのは「企画開発タイプ」と「創造革新タイプ」。一方で、今後管理職に求められるであろう力を尋ねた結果では、創造革新タイプに欠かせない「イノベーション推進力」は中位
- 管理職に自身の今後のキャリアをどう考えているかを質問した結果、「中間管理職として継続して成果をあげる」の選択率がトップ。「マネジメントをしながら、スペシャリストとしても専門性を磨き続ける」の選択率も高い
1. 調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ トレーニングマネジメント部 トレーニング開発グループ 主任研究員
木越 智彰(きこし・ともあき)
今年度の調査では、管理職の負担が増大している中、その管理職層の育成が不十分であり、管理職候補の輩出も不足しているという状況が見えてきました。また、これまでの調査同様に、管理職が重視しているのはメンバーの育成ですが、ここに難しさを感じている管理職も引き続き多い現状です。
こうした状況の一方、自律共創型の組織への移行を進めている企業・組織においては、チームワークの向上が見られ、現場発のアイデア創出やメンバーの主体的な動きが目に見えて現れるまで、もう一歩というところまで来ているのではないかと思われます。
組織の運営スタイルを変えることを起点に、メンバー個々人に対して、よりチャレンジを促していくことができれば、育成機会の充実にもつながるのではないでしょうか?
人事視点からすると、現在の管理職に多いタイプと、今後増やしたいタイプのギャップがあることは課題になるでしょうし、管理職自身の今後のキャリアの考え方や方向性もまちまちです。どの組織に、どんなタイプの管理職が必要なのか、本人の志向はどうか、など考える観点は様々です。
管理職の見方と人事の見方の双方を聞いている本調査をご参考にしていただくことで、人事と現場の目線合わせの一助となれば幸いです。
2. 調査の結果
- 人事・管理職ともに70%以上が「管理職(中間管理職)に関する課題感」を持ち、共通する課題感は「管理職候補の不足」。その他、管理職は特に「管理職の負担増大」、人事は「管理職が期待に応えられていない」「管理職育成」「女性管理職比率」に課題を感じる割合が高い
- 人事・管理職ともに課題感を持つ人(強い課題感を持っている/やや課題感を持っている)が70%を超える。
- 課題に感じていることを具体的に質問すると、共通して課題を感じる割合が高かったのは「管理職候補の不足」。
- その他、管理職は特に「管理職の負担増大」、人事は「管理職が期待に応えられていない」「管理職育成」「女性管理職比率」に課題を感じる割合が高かった。
- 人事が管理職に期待していることと、管理職が管理職として重要だと考えている役割のトップは、ともに「メンバー育成」。管理職が日々のマネジメント業務で難しいと思っていることのトップも「メンバーの育成・能力開発をすること」
- 人事・管理職ともに、マネジメント業務の中で「メンバー育成」に最も注目している。特に人事の回答率が高かった。
- その他の項目は人事と管理職で差があり、管理職は「業務改善」が39.3%、「人間関係の円滑化」が30.7%と、他の選択肢と比べて重視することとして選択した人が多かった。
- 管理職が日々のマネジメント業務で難しいと思っていることについても、トップが「メンバーの育成・能力開発をすること」で、「仕事の進め方などの改善」「職場のチームワーク向上」が上位にきていた。
⇒今まで以上に多様な価値観や働き方が共存するなかで、メンバーの仕事面・メンタル面のケアをより個別最適で行なったり、人手不足の状況で今いるメンバーだけでの目標達成を目指したりする必要があることが、管理職による「メンバーの育成・能力開発」に注目が集まっている背景として考えられる。 - 管理職が回答した「目標達成」に関する項目について、重要だと考えている役割の設問での選択率は23.3%、難しいと思っていることの設問での選択率は30.0%と、先述の選択肢と比較して低かった。
⇒管理職がいかにメンバーのモチベーションやリテンション、協働を重視し、かつ難しさを感じているかがうかがえる。
- 管理職向けに人事が実施を検討しているサポートで、選択率が高いのは「マネジメント業務の負荷を軽減するための取り組み」
- 人事がすでに実施している管理職向けのサポート施策で30%を超えたのは、「上司や人事による個別サポート」と「研修の実施・eラーニング機会の提供」。
- 実施検討中で最も選択率が高かったのは「負荷軽減の取り組み」。
⇒人事が管理職のマネジメント業務自体をサポートする意欲を高めていることが伺える。
- 60%以上の人が会社から「自律共創型組織(チームで考え、柔軟に価値を生み出す組織)」への移行を求められており、本人も「自律共創型組織」になる必要性を感じている
- 60%以上の人が会社から自律共創型組織への移行を求められており、本人も自律共創型組織になる必要性を感じている。実際に自律共創型組織の運営に取り組んでいる人も50%近く。
- 2023年の同調査と比較すると、自分の所属組織における必要性と取り組みを問う設問で「そう思わない」の選択率が微増。
⇒全体的には「自律共創型組織」への移行が求められていることを実感しているが、自分の所属組織における移行の必要は個別に判断し、現時点では移行を積極的に行っていないケースも想定される。
- 管理職にとっての「自律共創型組織」の難しさは「仕事の割り当て」や「新しいやり方へのチャレンジ」「自発的な情報共有や相互サポート」にある
- 管理職に「自律共創型組織」運営の難しさを聞いたところ、特に「仕事の割り当て(メンバーの強みと今後のキャリアを考慮した仕事を割り当てる)」や「新しいやり方へのチャレンジ(これまでの成功パターンにとらわれることなく、新しいやり方を試す)」「自発的な情報共有や相互サポート(メンバー同士の自発的な情報共有や相互のサポートを促す)」の選択率が高かった。
⇒「自律共創型組織」として機能させるために、まず必要なビジョンの浸透だけでなく、その後実際にメンバーにどのように動いてもらうか、という部分で難しさを感じている様子がうかがえる。
- チームで考え、柔軟に価値を生み出す「自律共創型組織」への移行の成果として、チームワークの向上が1位に
- 自律共創型組織運営への取り組みによる成果と感じていることとして「チームワークの向上」の選択率が1位に。
⇒「自律共創型組織」への移行を目指して取り組みを進めると、まず目に見える成果として、チームワークが向上する可能性が高いということがうかがえる。一方で、自律共創型組織への移行において、チームワークの向上はあくまでも新価値創造の目的ではなく手段であることをふまえると、今後は「現場から新しいアイデアが出てくるようになった」の選択率が伸びることが期待される。
- 既存の管理職に多いのは「組織管理タイプ」と「実務推進タイプ」で、企業が今後増やしたいのは「企画開発タイプ」と「創造革新タイプ」。一方で、今後管理職に求められるであろう力を尋ねた結果では、創造革新タイプに欠かせない「イノベーション推進力」は中位
- 既存の管理職では、「組織管理タイプ」と「実務推進タイプ」が多い傾向にあった。また、企業が今後増やしたいのは「企画開発タイプ」と「創造革新タイプ」であった。
- 「創造革新タイプ」は、既存の管理職には5%程度と極端に少なく、これから増やしたいと考える人事・管理職が36.7%存在していた。
⇒変革を期待して社外から招く「創造革新タイプ」が既存の組織の中に入り込んでいくことが求められるなかで、活躍できるポジションや環境を整えていくことが必要になると考えられる。 - 一方で、今後の管理職に求められるであろう力を尋ねたところ、創造革新タイプに欠かせない「イノベーション推進力」は中位。「多様性に富んだ部下をマネジメントする力」「部下のキャリア形成を支援する力」「社内での連携を強化するための調整力」の方が選択率が高い。
⇒メンバー育成は注目されたが、ここでは「多様性マネジメント」と「社内調整力」も上位にきており、これからの管理職には、これまで以上に多岐にわたる能力が求められそうだといえる。
⇒特に、「多様性マネジメント」の選択率は人事担当者と管理職層では大きく乖離している。管理職層が部下と日々接する中で、今後を見据えて伸ばすべき力であると捉えている可能性が高い。多様な部下の背景を理解することは、「部下のキャリア形成を支援する力」の発揮にも直結するため、人事としてどのような課題があり、今後に向けたサポートの必要性があるのかについての把握は行っておきたい。
- 管理職に自身の今後のキャリアをどう考えているかを質問した結果、「中間管理職として継続して成果をあげる」の選択率がトップ。「マネジメントをしながら、スペシャリストとしても専門性を磨き続ける」の選択率も高い
- 管理職が自身の今後のキャリアをどう考えているかを質問した結果、多い順に「中間管理職として継続して成果をあげる」「上級管理職・経営層を目指す」「マネジメントをしながら、スペシャリストとしても専門性を磨き続ける」「管理職ではなく、専門職としてスペシャリストを目指す」「今後のキャリアについてはあまり考えていない」という結果になった。
⇒「マネジメントをしながら、スペシャリストとしても専門性を磨き続ける」「管理職ではなく、専門職としてスペシャリストを目指す」の選択率が高いのには、一度管理職になったとしても、スペシャリストに戻るという複線型の人事制度が名実ともに機能するようになっていることが関係していると考えられる。また、専門職に戻って長く活躍することを見据えるなど、管理職以後のキャリアの多様性も高まってきていることが考えられる。
調査概要
マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(2025)
調査期間:2025年 6月
調査方法:インターネット調査
調査対象:企業の人事担当者、管理職層
調査人数:300名(内訳:人事担当者 150名、管理職層 150名)
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/2025年9月16日発表・同社プレスリリースより転載)
- 参考になった0
- 共感できる0
- 実践したい0
- 考えさせられる0
- 理解しやすい0
無料会員登録
記事のオススメには『日本の人事部』への会員登録が必要です。