会社や上司からの管理に関する意識調査
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑淳 以下、当社)は、経営者・役員を除く会社勤務の正社員930名に対し、「会社や上司からの管理に関する意識調査」を実施し、「会社や上司からの管理を過剰だと感じている(以下、管理過剰感)割合」や「管理過剰感が高くなる状況」、「管理過剰感が与える影響」など、調査結果から見える実態について公表しました。
【エグゼクティブサマリ】
- 5~6割が会社に対して、3~4割が上司に対して、管理過剰感がある
- 会社管理過剰感は、ルールの形骸化や閉塞感がある会社だと高い
- 上司管理過剰感は、細かな報連相を求め、適切な支援がない上司だと高い
- 会社や上司からの管理過剰感が高いと、適応感や主体性は低く、疲弊感や離職意向は高い
1. 調査担当のコメント
会社や上司による管理は、組織としての効率性やリスク回避の観点から必要なことです。従業員の成果創出や安全配慮義務の履行を目的とした管理もあります。ただし、その管理が行きすぎると、従業員としては息苦しい、わずらわしいと思うこともあるかもしれません。どのような管理がどれくらい行われると過剰だと感じるかは、個人の感じ方や置かれた状況によっても異なるでしょう。そこで本調査では、会社や上司からの管理をどの程度過剰だと感じているかという「管理過剰感」の把握を試み、その要因や影響を検討しました。
実際に、会社や上司からの管理が過剰なのか、適正なのかを判断するのは難しいことですが、従業員が管理を過剰だと感じていることは、心的コンディションや主体性にネガティブな影響を及ぼす可能性が示されました。会社や上司は、必要な管理だから仕方ないということではなく、意図や背景を明確に伝え、従業員が管理をどう受け止めているかに意識を向けることが、適正な管理の在り方を模索する上でのポイントとなるでしょう。
2. 調査の結果
● 5~6割が会社に対して、3~4割が上司に対して、管理過剰感がある
- 会社からの管理、上司からの管理、それぞれ4つの視点から管理過剰感について捉えることを試みた。
- 会社からの管理過剰感について、「1.会社は従業員のことを管理しすぎである」「2.会社からの管理に息苦しさを覚える」「3.会社からの管理がわずらわしい」の設問に対して、管理過剰感がある(「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」)という回答は、それぞれ46.3%、45.9%、46.9%と5割弱だった。一方、「4.会社には、これがなければ、もっと高い成果が出せるのにと思うルールや手続きがある」は60.0%とやや選択率が高かった。
- 上司からの管理過剰感について、管理過剰感があるという回答は、「1.上司はあなたのことを管理しすぎである」「2.上司からの管理に息苦しさを覚える」「3.上司からの管理がわずらわしい」「4.これがなければ、もっと高い成果が出せるのにと思うような、上司からの管理がある」の順に32.5%、34.7%、35.9%、39.1%と約3~4割だった。
⇒管理過剰感があるという人の割合は、会社からの方が上司からに比べて高いようだ。
● 会社からの管理過剰感については「ノルマ・監視・規則」など、上司からの管理過剰感については「細かな指示・報連相・介入」などの具体的なエピソードが確認された
会社からの管理過剰感に関するエピソード(自由回答)については、「ノルマ・行動管理」「監視」「規則・手続きが多い」「決裁・根回しの煩雑さ」「数値管理への偏り」「働き方の制約」などにおける具体的な記載が確認された。併せて「業務を圧迫している」「自分で考えなくなる」「前向きな仕事に着手できない」「話が先に進まない」「機会損失とやる気を失わせる」といった影響についても記載が見られた。
⇒決裁・根回しの煩雑さをはじめとして、管理側である管理職によるコメントも散見された。調査前には、管理職の方が管理する側の立場を理解しているために、「会社からの管理過剰感」は高くない可能性も想定していたが、管理職ならではの遵守しなければならないルールや規律、業績圧力などもあり、管理職の業務量や心的な負担感を増長している可能性も垣間見えた。
上司からの管理過剰感に関するエピソード(自由回答)については、「細かな指示や口出し」「報連相」「終業後や休日の連絡」「業務を理解していないのに管理・介入」「押し付ける・受け入れない」といったコメント群が確認された。
⇒「逐一」「瑣末な」「いちいち」など、指示や報告が本人にとって必要な支援につながっていないと感じていることが分かる。その他に挙げたコメントは、上司が会社から言われるがまま行う管理への不満である。「理解していないのに介入してくる」というコメント群と同様に、意図に納得できない管理には、過剰感を抱くのかもしれない。回答者の属性によってコメントの特徴に違いは確認されなかったため、上司・部下間の個別の関係性の影響が大きいようだ。
● 会社管理過剰感は、ルールの形骸化や閉塞感がある会社だと高い
- 会社の特徴によって会社管理過剰感が異なるかを確認した。会社からの管理に対する意識に関係しそうな会社の特徴について回答を求め、項目ごとに、「高群」(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)、「中群」(「どちらともいえない」)、「低群」(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」)の3群ごとの会社管理過剰感を集計した。図表3は、高・低群間に統計的に有意な差が確認された11項目である。得点差(高群-低群)をプラス・マイナスに分け、差が大きい順に並べている。グラフの右側には、各項目の高群・低群の選択率を示した。
- ルールに関しては、「2.一度作ったルールや制度は、なかなか撤廃・改善されない」というように形骸化していると会社管理過剰感は高く、そうでなければ低い。
- 一方、「5.社内のルールや制度について、従業員が意見を言える」「9.新しくルールや制度ができたときには、背景や意図について説明がある」といった決まりだから従うようにということでないコミュニケーションがあると、会社管理過剰感は低い。
- 閉塞感に関しては、「1.内向きで現場や顧客の声が通らない」「3.部門の縦割り意識が強く、組織間の対立が起こりやすい」「4.意思決定に際し、稟議や根回しが煩雑である」という状態にあると会社管理過剰感は高い。
- 反対に、「7.たとえ失敗してもチャレンジすることを奨励している」「10.意思決定スピードが速い」「11.現場判断ができるよう、社内外の情報が開示されている」という状態にあると会社管理過剰感は低い。
- 「6.従業員や関係者の健康や安全を重視している」「8.従業員にとって、成長できる機会が多くある」という認識のもとでは、会社管理過剰感が低い。
⇒同じようなルールや制度であったとしても、従業員側が自分たちの健康や安全、成長を考慮した管理だと受け止めていると、管理過剰感は生じにくいのかもしれない。そのことからも、ルールや制度の意図を伝えることの重要性がうかがえる。
● 上司管理過剰感は、細かな報連相を求め、適切な支援がない上司だと高い
- 図表3と同様に、上司の特徴によって上司管理過剰感は異なるかを確認した。
- 「1.なぜこんな指摘や指導をするのかと思うことがある」という懐疑心や「2.あなたに細かく報告・連絡・相談を求める」というマイクロマネジメントの要素があると上司管理過剰感は高い。
- 逆に、「4.あなたが自律的に働けるよう任せてくれる」「5.あなたの考えや意見を尊重してくれる」という自律・尊重の態度があると認識していると上司管理過剰感は低い。
- 意外なことに「3.放任であり、適切な業務上の支援がない」場合の上司管理過剰感は高い。
⇒図表2のエピソードから類推すると、普段は放任で業務上必要な支援がないにもかかわらず、急に口出ししてきたり、勤怠や工数などの管理には細かかったりする可能性がある。「6.上司には、気軽に支援を求めたり相談したりできる」「7.あなたが望むタイミングで支援してくれる」と認識していると管理過剰感は低いことからも、放任かどうかより適切な支援があるかどうかがポイントとなるようだ。
⇒「8.担当する仕事について、社会や自組織にとっての意義や意味を言葉にしている」「9.仕事の成果やあなた自身の成長のために支援してくれる」という認識のもとで上司管理過剰感が低いのは、会社からの管理の受け止め方によって会社管理過剰感が低くなるのと同様に、上司の管理行動の意図を理解できる、理不尽さを感じないようなコミュニケーションがとれていると、上司管理過剰感は低くなる可能性が示唆された。
● ルールが形骸化している場合、情報開示されていても会社管理過剰感は高い
- 会社の特徴の「2.一度作ったルールや制度は、なかなか撤廃・改善されない」(図表中、ルール形骸化)と「11.現場判断ができるよう、社内外の情報が開示されている」(同、情報開示)について、それぞれの高群(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)と低群(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」)をかけ合わせた4群ごとの会社管理過剰感の平均値を示したのが図表5である。
- 会社管理過剰感は、ルールが形骸化していない場合(AとB)、情報開示・高のBの方が低く、4群においても最も低い。これは、図表3で見た項目ごとの傾向どおりである。
- 一方、ルールが形骸化している場合(CとD)、情報開示の程度にかかわらず会社管理過剰感は高い。
⇒ルールが形骸化していれば、情報開示されていても会社管理過剰感は高い。情報がオープンだからこそ、ルール形骸化の状態も見えやすいともいえ、ルールの運用について何をどう伝えるかが重要であることがうかがえる。
法律やコンプライアンスなど自社都合だけでは決められないルールもあり、一度作ったルールを変えることも簡単ではない。それでも、決まりだからということだけで従わせるのではなく、ルールの意図や必要性について継続的にコミュニケーションして、時には従業員の声にも耳を傾けながら必要な改変を行っていける可能性を従業員が感じることができれば、会社管理過剰感は低くなるのではないだろうか。
● 報連相を細かく求められる場合の上司管理過剰感は、放任だと高く、支援要請可能だと低い
- 上司の特徴の「2.あなたに細かく報告・連絡・相談を求める」(図表中、報連相要求)と「3.放任であり、適切な業務上の支援がない」(同、放任で業務支援なし)、「6.上司には、気軽に支援を求めたり相談したりできる」(同、支援要請可能)について、それぞれの高群(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」)と低群(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」)をかけ合わせた4群ごとの上司管理過剰感の平均値を示したのが図表6である。
- 上司管理過剰感は、報連相を細かく求められている状態において、放任で業務支援がないと高く、上司に支援要請できると低い。
- 細かく報連相を求められていない状態では、放任の程度にかかわらず低く、支援要請できると低い。
⇒細かな報連相を求められるマイクロマネジメントともとれる状況下にあったとしても、上司から適切な業務上の支援がある、上司へ支援を求めたり相談したりできると感じていれば、上司管理過剰感は抑制される可能性が示唆される結果である。
● 会社や上司からの管理過剰感が高いと、適応感や主体性は低く、疲弊感や離職意向は高い
- 会社管理過剰感と上司管理過剰感の高群(4点以上)・中群(3点以上4点未満)・低群(3点未満)別の個人の状態について確認した。
- いずれの管理過剰感も、高群は低群に比べて適応感が低く、高群だと疲弊感も高い。
- 低群は「自律的・主体的に仕事をしている」傾向があり、高群ほど「現在勤めている会社には、あまり長く勤めていたくない」と答えている。
⇒今回の結果だけで因果を特定できるものではないが、会社や上司からの管理を過剰だと感じることが、本人の適応感や主体性の低下、疲弊感や離職意向の上昇に影響する可能性を示す結果となった。
3. 調査概要
調査目的:会社や上司からの管理過剰感(管理の過剰感、管理による息苦しさ、わずらわしさ、成果を出すのを阻害されている感覚)の実態を把握し、どのような会社・上司・職場の特徴があるとそう感じるのか、管理過剰感と本人の心的コンディションや主体的行動、離職以降との関係を明らかにすること
調査対象:20代後半から50代前半までの会社勤務正社員(経営者・役員を除く)
※勤務先の従業員規模は300名以上、300~999名/1000~4999名/5000名以上で均等になるように割付
※現在勤務する会社に入社してから半年以上経過した人
調査内容:会社や上司からの管理過剰感(管理の過剰感、管理による息苦しさ、わずらさしさ、成果を出すのを阻害されている感覚)
・会社・上司の特徴
・個人の状態(適応感、疲弊感、主体的行動、離職意向)など
調査方法:インターネット調査
実施時期:2024年2月29日~3月4日
有効回答数:930名
本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ/ 5月28日発表・同社プレスリリースより転載)