日本企業におけるDX人材の傾向
はじめに
2022年11月以降、生成AIの活用の模索が一気に広がりを見せています。現在進行形で急速に発展するAIの技術は、さまざまな業界や分野に革新をもたらしており、例外なくどの企業においても、絶え間ないトレンドの変化を取り入れたウィズデジタルでの経営変革が求められています。それに伴い、社員の意識やスキルの転換を図り、新たなデジタル技術を活用し、仕事の生産性を高め、付加価値を向上させることなどを通じた、経営課題の解決とビジネス機会の創出が求められていますが、十分な成果を得られていないと感じる日本企業が少なくありません。
本レポートでは、PwC Strategy& Katzenbach Centerの組織行動・カルチャー変革領域の専門家たちによる10年以上の調査研究に基づく「Digital Scoring(デジタル・スコアリング)サービス」の1万人超のアセスメント実績を、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)で独自に分析しました。また、そこから見えてきた日本企業の特徴をもとに、日本企業がデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)のさらなる加速のために持つべき視点について考察しています。
Digital Scoringから見る日本企業における人材の傾向
Digital Scoring サービスは、PwC Strategy& Katzenbach Centerの研究に基づくサービス展開の実績を経て2019年11月にPwCコンサルティングでサービスを開始、これまで1万人超のアセスメント実績を有しています。このサービスでは、先述の分析結果に加え、個人がデジタルをより高度に活用し成果をあげるためのヒントや、部門・年齢層・役職別の傾向に基づき有効と示唆される施策例を提供しており、今後のアプローチの見直しに役立てることができます。
これまでの1万人超のデータにより明らかになった特徴として、大きく以下3つの特徴が挙げられます。
Insight 1 相対的に高いマインドセットとスキルの伸び悩み
4つの要素(スキル、マインドセット、リレーションシップ、行動)のスコアを相対比較すると、マインドセットが最も高く43%の達成率であり、スキルが最も低く24%でした。最も高いマインドセットでもLevel 2止まりであり、これ自体もまだまだ伸びしろがあります。また、このマインドを生かしていくためにも、デジタルスキルの伸長が課題と考えられます。
※スコアレベルは以下の4つに分類されます。
Level 4(75~100%):高度なレベルに達しており、周囲の引き上げ能力の発揮も期待されるレベル
Level 3(50~74%):一般よりも上位のレベルに達しており、保有能力の十分な発揮が期待されるレベル
Level 2(25~49%):一般的なレベルに達しているが、さらなるリテラシー向上が求められるレベル
Level 1(0~24%):一般的なレベルに達しておらず、リテラシー向上が必要とされるレベル
Insight 2 デジタル技術の活用力が全般として低調
次に、4つの要素を下位領域で詳細に見ていくと、マインドセットをけん引しているのはチャレンジ精神であり、Level 3に達しています。一方、既に導入されているようなツールやテクノロジーの利用(ツール&テクノロジー)はLevel 2であるものの、「データ活用」「デジタル活用」「オンライン活用」はLevel 1にとどまっており、全般的にデータドリブンでのアプローチに必要なスキル・知識の活用が低調であることがうかがえます。
Insight 3 いかに潜在的なDX人材を発掘し育てていくか
またIT・DX関連部門の人材と非IT・DX関連部門の人材の合計スコア分布を可視化したところ、相対的にはIT・DX関連部門人材のスコアが高いことが明らかになりました。一方で、非IT・DX関連部門の人材でも数には限りがあるものの、Level 3に達する人材もいる(174名、全体の2.7%)ことがうかがえます。
これらのインサイトから言える日本企業の課題は次の3つです。
①マインドセットを自社のDXの取り組みの理解促進やスキル・知識の習得につなげられるか
DXでは、どれだけ多くの社員が自社の取り組みを理解し、自分事としてスキルを獲得し実践できるかが成功の鍵となります。伸びしろはあるものの相対的には高いマインドセットを生かして、スキル・知識の習得を促し、自社のDXへ自律的に取り組める環境を実現することが重要です。
②デジタル活用スキルを現場で活かせるための仕組みや環境を整えられるか
学んだデジタルスキルをプロジェクトや業務に活用できなければ、せっかく身につけた知識やスキルも自社のDXのけん引にはつながりません。汎用的な知識・スキルを実務の場面に即して「どのようなファシリティ(ツール、データ基盤等)を活用」し、「何を実現させたいのか」を定め、基礎研修からStep by stepで実践定着まで促す必要があります。
③デジタル適性の高い人材を社内に精通したDX人材として育成・配置できるか
DXは技術だけでなくビジネスへの適用が重要なため、社外から採用してきた専門人材のみではDXはけん引できません。自社の顧客や社内業務をよく理解し、DX施策の自組織へのフィット/ギャップを識別でき、デジタルリテラシーを有する非IT・DX関連部門の人材を、DXのキー人材として育成していく必要があります。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(PwC Japanグループ / 2月21日発表・同社プレスリリースより転載)