新型コロナ5類移行から半年の 「リモートワーク」に関する調査
新型コロナ5類移行から半年の 「リモートワーク」の“リアル”を調査
実施頻度は減少も、制度導入率は8.8pt上昇
リモートワークができなくなった場合、6割以上が転職を検討
~ 「リモートワーク」の柔軟性レベルで、ワークライフバランスの満足度に23.1ptの差 ~
パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:加々美 祐介)は、20~60歳代のビジネスパーソン500名と企業の人事担当者500名を対象に「リモートワーク」をテーマに調査をおこないましたので、その結果をお知らせいたします。
【調査結果サマリー】
・新型コロナウイルス感染症の5類移行後、実施頻度は減少傾向も、制度導入率は8.8pt上昇。
・8割以上の企業が「リモートワーク」の継続を予定し、新たに導入予定も約2割にのぼる。
・9割以上の企業が「リモートワーク」制度は採用に良い影響があると回答。
・ビジネスパーソンの9割が「リモートワーク」の継続実施を希望、制度廃止の際は6割以上が転職を検討。
・「リモートワーク」の柔軟性レベルで、ワークライフバランスの満足度に23.1ptの差。
<調査背景>
2023年5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行され、約半年が経過しました。新型コロナの流行を契機に「リモートワーク」というはたらき方が広がりましたが、今後はどのような変化をしていくのか、ビジネスパーソンにとって興味・関心が高いトピックスといえるでしょう。転職情報サイト「doda」内での検索キーワードランキング(2023年11月更新)*1では、1位 フルリモート、2位 在宅勤務、4位 リモート、5位 在宅と、上位は3位を除くすべてで「リモートワーク」の類似キーワードが占め、ビジネスパーソンの関心が高いことがうかがえます。次に「doda」で扱う約22万件*2の求人票を確認すると、第一回目の緊急事態宣言の発令月*3との比較で、「リモートワーク」可能求人*4は約24倍に伸び、「リモートワーク」での就労環境は広がり続けていることが分かります。
こうした転職市場の動きを受け、新型コロナ5類移行から約半年が経った現在の「リモートワーク」の“リアル”を明らかにするため、企業人事担当者(以下、「企業」)とビジネスパーソン(以下、「個人」)へ調査を実施しました。結果から、「リモートワーク」が企業の採用面にどのような影響を及ぼしているのか、「個人」はこの潮流をどのように捉えると良いかなど、dodaキャリアアドバイザー*5やdoda編集長のコメントを通じて紐解きます。
*1 転職情報サイト「doda」内 「人気検索キーワードランキング」ページ。
*2 2023年11月10日時点
*3 2020年4月
*4 「リモートワーク」可能求人:求人票内に「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」「在宅ワーク」のいずれかの文言が入っている求人
*5 dodaキャリアアドバイザー:業界、職種、エリア別の動向などに精通し、キャリアカウンセリングを経て求人の紹介から転職先決定までトータルにサポートする専任担当
<調査結果>
新型コロナ5類移行後の「リモートワーク」実施状況
導入率は8.8pt上昇、実施頻度は減少傾向
スクリーニング調査の結果を見ると、新型コロナ5類移行前にリモートワークを「導入していた」と回答した企業は全体の57.4%で、現在の導入状況を聞くと66.2%となりました。8.8pt上昇する結果になり、5類移行後も「リモートワーク」を導入する企業が増えたことが分かります・
業種ごとでは、IT・通信の上昇幅が16.9ptでトップに、次いで小売・流通の14.8pt上昇、建設・不動産の13.8pt上昇と続きました。
一方で、「リモートワーク」の平均的な実施頻度を尋ねると、「週に1日程度」「週に2日程度」と回答した企業が増え、「リモートワーク」の実施頻度は低下していると推察できます。
<dodaキャリアアドバイザー解説①>
新型コロナ5類移行前・後の変化をみると、「リモートワーク」の週あたりの平均実施頻度は減少していましたが、導入企業割合は上昇という結果になりました。
「リモートワーク」が普及し出した当初は、感染防止の緊急措置としての導入が一定割合を占めていました。時間が経つにつれ「リモートワーク」制度の採用面でのメリットが高まり、戦略的に制度導入/継続する企業が増えていると考えられます。「リモートワークを導入している理由」を尋ねた質問でも、「多様性のある働き方の実現(52.8%)」「従業員満足度の向上(40.8%)」と、はたらき方の柔軟性に通じる回答が上位を占める結果になりました*6。
さらに、「doda」が発表した最新の転職求人倍率*7は2.42倍、求人数も過去最高値を示しており、労働力不足の状況がみてとれます。加えて、図2の上位業種などでは特に、「改正労働基準法」による労働時間の上限規制の適用業界が広がる「2024年問題」や、DX化の遅れにより起こりうる「2025年の崖(2025年問題)」といった業界特有の事情から、社員の定着率向上や新規の人材獲得ニーズが高まっています。リモートワーク導入企業の増加にもその一端が表れているといえるでしょう。
*6 3位以降の回答:業務効率の向上(36.8%)、従業員のエンゲージメント向上(28.8%)、固定費(交通費、オフィス賃料)の削減(25.6%)、通勤困難社員への対応(22.4%)、長時間労働の削減(22.4%)、採用競争力の強化(19.6%)、人材の育成・教育(16.4%)、その他(0.8%)。n=250、複数回答。
*7 doda転職求人倍率:dodaの会員登録者(転職希望者)1人に対して、中途採用の求人が何件あるかを算出した数値。中途採用市場における需給バランスを表すもの。最新の発表は、2023年11月21日付け。詳細はこちら。
8割以上の企業が「リモートワーク」導入を継続予定。未導入企業も約2割が導入予定
採用面に良い影響があると思う企業は、未導入企業でも6割を超える
今後のリモートワーク制度について尋ねると、導入企業の計85.2%が継続と回答し、未導入企業でも計19.2%が新設を予定していることが分かりました。
あわせて、採用面への影響を聞いたところ、導入企業の計92.4%がリモートワーク制度は「良い影響を与えると思う」と回答し(「思う」55.2%、「やや思う」37.2%)、未導入企業においても計60.4%(「思う」26.0%、「やや思う」34.4%)が良い影響を感じていることが分かりました
ビジネスパーソンの「リモートワーク」の捉え方
全年代で9割以上が、今後も「リモートワーク」ではたらきたいと回答
継続できなくなった場合、6割強が転職を検討
次に、「リモートワーク」をおこなっている「個人」に対し、今後も継続したいかを尋ねたところ、「そう思う」が計95.2%に上りました(「そう思う」64.6%、「ややそう思う」30.6%)。また、世代ごとの変化はなく、全ての年代で9割を超える結果になりました。
この結果を裏付けるように、継続できなくなった場合の転職意向を尋ねると、計65.4%(「検討する」34.8%、「やや検討する」30.6%)が検討することが分かりました。
<dodaキャリアアドバイザー解説②>
全年代の9割以上で「リモートワーク」の継続意向が確認されました。
あわせて尋ねたリモートワークで感じる「メリット」では、「通勤時間の削減(73.2%)」が第2位に大きな差をつけて最多に、以降「家族との時間が増えた(36.8%)」「健康管理がしやすい(30.8%)」「作業効率の向上(30.6%)」と続きました。この結果から、「リモートワーク」を活用することで、仕事とプライベートのバランスを高めたいという個人の心情がうかがえます。
転職希望者とキャリアカウンセリングをおこなうなかでも、仕事・プライベートどちらかを優先するのではなく、まさに“バランス”をとって双方を両立させたいという心情を持ち転職活動を進められるケースが増えています。
一方「デメリット」では、「コミュニケーション量・質の低下(35.0%)」が最多回答となりました。上述のリモートワーク就労意向で「そう思う」と回答した20代は、他年代よりやや低い割合になりましたが、この背景にも最多回答に挙がった「デメリット」が表れていると推測できます。リモートワークは、一定の“自律自走する力”が求められます。スキル習得期間でもある20代は、不明点やトラブル等の解決を非対面でおこなう難しさを特に感じる場面が多いのではないでしょうか。
リモートワークは、メリット・デメリットがありながらも、はたらき方の多様化が進むなかで重要な勤務スタイルとして浸透していると考えられます。これを表すように、継続できなくなった場合、6割強の個人が転職を検討すると回答しています。
リモートワークの柔軟性レベルで、ワークライフバランス満足度に23.1ptの差
次に現在のワークライフバランスへの満足度を尋ねたところ、「満足している(28.4%)」、「やや満足している(50.8%)」と、「リモートワーク」をおこなっている「個人」の計79.2%が満足していることが分かりました(【図10】参照)。
あわせて、頻度や曜日、時間など「リモートワーク」の柔軟性レベルごとに満足度の変化を比較すると、「裁量のある」個人の満足度は計89.1%であることに対し、「ある程度裁量がある」個人は計71.3%、「裁量がない」個人は計66.0%となりました。裁量が「ある」場合と「ない」場合の満足度の差は、23.1ptにものぼることが分かりました。
<dodaキャリアアドバイザー解説➂>
解説②と同様に、「リモートワーク」を求める背景にワークライフバランスへの意識があることかうかがえます。図11からは特に、リモートワークの裁量度が、ワークライフバランスの満足度に影響していると推察できます。
解説①でも取り上げたように「リモートワークを導入している理由」では、「多様性のある働き方の実現(52.8%)」「従業員満足度の向上(40.8%)」が上位を占めていますが、今後は「リモートワーク」制度の有無に加え、「リモートワークの柔軟性」が問われるようになるかもしれません。
doda編集長 総括 ~ビジネスパーソンは、はたらき方の変化をどう捉えるべきか~
今回は、新型コロナが「5類」に移行されて約半年のタイミングで、「リモートワーク」の実態を調査しました。
企業への調査からは、週当たりの「リモートワーク実施頻度」は減少傾向ながら、制度導入企業の割合は伸びていることが分かりました。その背景には、制度導入企業の9割超で、また未導入企業の約6割でも、採用面への好影響を感じていることがあげられます。
個人側は、「リモートワーク」の継続を希望する割合が9割に上り、実施できなくなった場合、6割を超える人が転職を検討すると回答しました。「リモートワーク」での就労ができなくなるなど、はたらき方の柔軟性低下をきっかけに、転職活動を始める例は少なくありません。同時に図2調査から分かるように、業界問わず、リモートワーク導入企業は増えつつあります。
ただ「リモートワーク」は、勤務スタイルの一つです。メリットもデメリットも存在します。そのためまずは、仕事へのやりがい・人間関係・将来の年収等にまで視点を広げ、自身がはたらき方にどのような価値観や希望を持つかを振り返りましょう。これを実現させるための1つの手段として、適した勤務スタイルをリモートワーク・オフィスワーク・リモートワークとオフィスワークのハイブリッド等から選択すると、自分らしいキャリア形成に繋がるのではないでしょうか。
調査概要:「リモートワーク」に関する調査
<個人向け調査>
対象者:3大都市圏/東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)で従業員規模10名以上の企業でリモートワークをおこなう20~60代男女、会社員(正社員・契約社員)※人事担当、取締役相当、代表取締役・社長相当、その他管理職、管理職ではないが管理職相当、今後働こうとは思わない方を除く
集計対象数:500名(性年代均等割付)
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年10月27日~10月30日
<企業向け調査>
対象者:3大都市圏/東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)で従業員規模10名以上の企業ではたらく20~60代の人事担当者
集計対象数:500名(リモートワーク実施企業250名、リモートワーク未実施企業250名)
調査手法:インターネット調査
調査期間:2023年10月27日~10月31日
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(パーソルキャリア株式会社 / 11月29日発表・同社プレスリリースより転載)