男女間賃金格差は業種によって著しい差異
~医薬品業は男性の報酬の86%、金融・不動産業は62%~
世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)が日本で実施した臨時調査によれば、男女間賃金格差は業種による差異が著しく、医薬品業が男性の報酬の86%であったのに対して、金融・不動産業は62%という結果になりました。
《 男女間賃金格差の開示義務化に伴う動向調査:調査結果 》
男性の賃金を100%とした場合の女性の賃金の割合
医薬品86%
素材・化学85%
情報通信・サービスその他79%
機械79%
自動車・輸送機78%
日本全体78%
電機・精密75%
鉄鋼・非鉄75%
食品75%
調査回答企業全体74%
商社・卸売67%
建設・資材65%
金融・不動産62%
その他業種73%
《 コメント 》
WTW Work & Rewards 日本代表 マネージングディレクター 森田 純夫
本調査では、女性の平均賃金はすべての業種で男性の平均賃金を下回る結果となった。また、その格差について、業種によって違いがあることが明らかになった。業種の違いの背景として、企業が工場労働者等、(相対的に低い賃金のもとで業務に従事する)ブルーカラーの男性人員を多く有する業種において、各社の男性平均賃金が低くなり、女性の賃金に接近している状況が想定される。典型的には製造業全般がこれに該当する。
今回の結果が示しているような著しい男女間賃金格差が生じている理由として、概して高い賃金が適用される、経営層や管理職等の高度・非定型業務に従事する職務を男性が占めていることがある。男性の平均賃金の引き下げ要因となり得るブルーカラー人材の占める比率が低い金融・不動産等の結果は、このような日本企業の実態をそのまま示しているといえよう。一方、今回格差が小さい結果となった業界では、上述のような人員構成上の要因により、全体平均の数字からは問題が捉えづらくなっている可能性がある。いずれにせよ、女性の一層の登用とそれによる賃金格差是正は、日本企業および日本社会共通の課題と捉えるべきである。
男女間賃金格差是正の議論は実は、採用・評価や登用を含めた処遇のあり方を人的資本という包括的視点からどう再定義するのかという問いを、企業およびその経営陣に投げかけている。しかし、今回の調査結果では、男女間賃金格差に関わる指標を役員の評価に反映している、もしくは取締役会等が差異をモニタリングしている企業は1割弱に留まっており1、各社の経営層を巻き込んだ取組みがまだ緒に就いたばかりであることを示している。多くの企業において改善の余地が大きいだけに、今後の各社の取組みには差が出るだろう。そうしたなかで、今般の開示義務化により求められる数値の開示のみといった消極的対応に終始すれば、女性人材から職場として敬遠され、将来の女性登用やそれにより実現される賃金格差是正がさらに遠のく、といった悪循環を招きかねない。取締役会の多様性 (Board Diversity) に加え、従業員の多様性 (Workforce Diversity) を重点課題と位置づけ、投資先に対応を求める機関投資家の動きも見られている。今こそ企業の本気度が問われているといえよう。
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(タワーズワトソン株式会社 / 5月9日発表・同社プレスリリースより転載)