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ニュース 掲載日:2022/11/30

世界18カ国・地域の主要都市における就業実態・成長意識に関する調査結果を発表

就労先として「日本」が選ばれる割合は低下傾向
コロナ禍による働き方・価値観の変化も踏まえ、多様な人材が活躍しやすい環境づくりが急がれる
 
株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)および、欧米地域を含めた世界18カ国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施し、結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。パーソル総合研究所では、2019年8月にAPAC14カ国・地域を対象に行った「APACの就業実態・成長意識調査(2019年)」(以下、2019年調査)*を発表しており、本調査は2019年調査に新たに欧米地域を加えた18カ国・地域に調査対象を拡大。就業意識や職業生活について、3年前からの変化や新型コロナウイルスのパンデミックが及ぼした影響などについて調査しました。
* APACの就業実態・成長意識調査(2019年)
 
※本調査は、下記18の国・地域における主要都市で働く人を調査対象としています。
【東アジア 】 日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
【東南アジア】 タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)
 マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
【南アジア 】 インド(デリー、ムンバイ)
【オセアニア】 オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
【北   米】 アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
【ヨーロッパ 】 イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)
 

■ 調査結果(サマリ)

コロナ禍の影響による働く実態と意識変化

①   18カ国・地域全体的に、「テレワークが増えた」「所得が減少した」という変化が多い。また、「現在の会社で安定して働き続けたい」意識や「生産性向上」「デジタル化」への意識も高まる
 

18カ国・地域との比較で、より鮮明になった「日本」の特徴

②   今の会社で働き続けることや、出世することを望まない人が多い日本。一方、転職や起業を考えていない割合も多い。
③   働くことを通じて「幸せを感じている人」「成長が重要と考える人」「成長を実感できている人」の割合は、いずれも18カ国・地域の中で日本が最も少ない
④   勤務先以外での学習・自己啓発は、日本は「特に何もおこなっていない」割合が52.6%で最も多く、今後、そのような学習・自己啓発に「自己投資する予定がない」割合も42.0%と最も多い
⑤   組織文化の類似度によるマッピングでは、日本の組織文化の特徴は、「権威主義・責任回避」
⑥   日本のダイバーシティ&インクルージョンの実現度合いは全体平均より大幅に低い。また、「シニア層」の働きやすさが「若手」の働きやすさを上回る点が特徴的

 

働く場としての日本の魅力

⑦   タイ、ベトナム、台湾においては、日本が「働いてみたい国・地域」の上位に入るが、2019年調査からは10pt以上低下。日本は「自国のみで働きたい」人が最多

 

■ 調査結果(詳細)

コロナ禍の影響による働く実態と意識変化

①   18カ国・地域全体的に、「テレワークが増えた」「所得が減少した」という変化が多い。また、「現在の会社で安定して働き続けたい」意識や「生産性向上」「デジタル化」への意識も高まる

コロナ禍の影響で、『働く実態』にどのような変化があったかを聞いたところ、調査対象のほとんどの国・地域で「テレワークが増えた」「所得が減少した」といった変化が多く挙がった【図表1の赤枠】。「日本」は、「将来のキャリアに関する不安が増加した」や「仕事の生産性が下がった」が18カ国・地域の中で最も低く、雇用や業務への影響は比較的少ないようだ。他方、「上司や同僚とのコミュニケーションが減った」「職場における部下マネジメントが複雑になった/負担が増えた」が他国・地域に比べ上位に入り、マネジメントへの影響がうかがえる。
 
コロナ禍の影響で、『働く意識』にどのような変化があったかを聞いたところ、18カ国・地域全体で変化があったものとして多く挙がったのは、「現在の会社で安定して働き続けたい」(34.1%)、「仕事の生産性を上げたい」(29.2%)、「業務のデジタル化を進めたい」(27.5%)であった。「現在の会社で安定して働き続けたい」は、すべての国・地域でトップ3に入る。「業務のデジタル化を進めたい」という希望は、「タイ」で36.6%と特に高いほか、「韓国」、「シンガポール」、「マレーシア」、「インド」も高かった。「日本」では、「労働時間を減らしたい」(33.9%)、「副業・兼業を行いたい」(28.8%)という意識が他国・地域に比べて高く、「独立・起業したい」(11.6%)、「業務のデジタル化を進めたい」(21.2%)という意識は低い傾向であった
 
 
18カ国・地域との比較で、より鮮明になった「日本」の特徴
 
②   今の会社で働き続けることや、出世することを望まない人が多い日本。一方、転職や起業を考えていない割合も多い
 
現在の勤務先で『継続して働きたいか』をたずねると、全体平均が71.2%であるのに対し、「中国」と「インド」では8割強と高く、「日本」は56.0%で最も低い。
 
一般社員・従業員に対し、現在の勤務先で『管理職になりたいか』をたずねたところ、管理職になりたい割合が最も高いのは「インド」(90.5%)、次いで「ベトナム」(87.8%)、「フィリピン」(80.6%)と続く。「日本」は、19.8%で最下位である。
 
『他の会社に転職したいか』についてたずねると、転職したい人の割合は全体平均が35.2%である中、最も多いのは「インド」(56.8%)であり、最も少ないのは「インドネシア」(20.2%)、「日本」は25.9%で2番目に少ない。
 
『会社を辞めて独立・起業したいか』についてたずねると、独立・起業したい人の割合は全体平均が35.1%である中、「インド」(57.9%)と「インドネシア」(52.1%)は半数を超え、「フィリピン」(43.8%)、「アメリカ」(40.7%)、「中国」(40.4%)で4割を超えた。「日本」は20.0%で最も少ない。
 
 
③   働くことを通じて「幸せを感じている人」「成長が重要と考える人」「成長を実感できている人」の割合は、いずれも18カ国・地域の中で日本が最も少ない
 
『はたらくことを通じて、幸せを感じている』就業者の割合は、全体平均が74.7%であるのに対し、日本は49.1%と18カ国・地域の中で最も少ない。
 
また、『働くことを通じた成長を重要だと考える人の割合(成長志向度)』や、『仕事を通じた成長を実感できている人の割合(成長実感度)』も、調査対象の国・地域の中で日本は最も少ない結果となった。特に、「成長実感度」の低さが際立つ。
 
 
④   勤務先以外での学習・自己啓発は、日本は「特に何もおこなっていない」割合が52.6%で最も多く、今後、そのような学習・自己啓発に「自己投資する予定がない」割合も42.0%と最も多い
 
勤務先以外で自分の成長を目的に行っている『学習・自己啓発活動』についてたずねたところ、18カ国・地域において共通して実施率が高い学習・自己啓発活動は、「読書」(34.5%)、「研修・セミナー、勉強会等への参加」(30.4%)であった。特に、「フィリピン」、「インドネシア」、「マレーシア」、「ベトナム」、「インド」では勤務先以外での自己研鑽に意欲的な傾向が見られる。一方、「とくに何もおこなっていない」割合は、全体平均が18.0%であるのに対し、「日本」は52.6%で最も高く、自己研鑽意欲の低さが際立つ。
 
また、勤務先以外での学習・自己啓発に対する『自己投資』については、「既に自己投資している」という割合が全体平均で7割を超え、特に「インド」、「ベトナム」、「インドネシア」、「フィリピン」、「アメリカ」では8割を超えており、自己研鑽に意欲的な傾向が見られる。一方、「日本」における「既に自己投資している」割合は40.0%と最も低く、「現在は自己投資しておらず、今後も投資する予定はない」という割合も42.0%であり、他国・地域と比較して自己投資意欲の低さが目立つ。
 
 
⑤   組織文化の類似度によるマッピングでは、日本の組織文化の特徴は、「権威主義・責任回避」
 
「組織文化」の特徴(10分類※)を用いて、類似度により18ヵ国・地域をマッピングしたところ、「日本」は「韓国」と並び「権威主義・責任回避」に特徴づけられた。「オーストラリア」、「アメリカ」、「イギリス」、「ドイツ」、「スウェーデン」は個人を尊重した柔軟なマネジメント、「インドネシア」、「フィリピン」、「マレーシア」、「ベトナム」は組織の調和を重視した自由闊達な風土に特徴づけられる傾向があった。
 
 
⑥   日本のダイバーシティ&インクルージョンの実現度合いは全体平均より大幅に低い。また、「シニア層」の働きやすさが「若手」の働きやすさを上回る点が特徴的
 
職場における「女性」「若手」「シニア層」「人種的・民族的マイノリティ」「LGBTQ」「移民や外国人労働者」の働きやすさをたずねると、「日本」はいずれも全体平均点を下回り、ダイバーシティ&インクルージョンの実現度が低い。ただし、「シニア層」の働きやすさは、全体平均の3.7に対し、「日本」は3.6に迫っており、「若手」の働きやすさのスコア(3.4)を上回る。
 
 
働く場としての日本の魅力
 
⑦   タイ、ベトナム、台湾においては、日本が「働いてみたい国・地域」の上位に入るが、2019年調査からは10pt以上低下。日本は「自国のみで働きたい」人が最多
 
働いてみたい国・地域をたずねたところ、全体では「アメリカ」が1位、次いで「日本」、「イギリス」、「カナダ」、「シンガポール」が続く【図表13の赤枠】。「日本」では、今回の2022年調査も2019 年調査も「働きたい地域はない(自国のみで働きたい)」が47.2%と、他国・地域に比べ最も高い
 
東南アジアの「タイ」、「フィリピン」、「インドネシア」、「マレーシア」、「ベトナム」や、「台湾」、「香港」では、「日本」は働いてみたい国・地域の上位に挙がるが、2019年調査と比べると、「タイ」、「ベトナム」、「台湾」では日本を希望する割合が10pt以上低下している。
 
 
■分析コメント パーソル総合研究所 主任研究員 井上亮太郎

前回調査(2019年)では、日本の特徴的な傾向として、上昇志向や自己研鑽意欲の低さ、ダイバーシティ受容度の低さといった実態が確認されていた。2022年は、APACに欧米諸国を加えてより広範で多面的な比較分析を実施したところ、就労者の内向き志向やキャリア自律性の低さ、『はたらくことを通じた幸福度』の低さといった日本の労働観や就業実態に関する特徴がより鮮明に確認されることとなった。

世界に目を向けると、いずれの国・地域においても全体的にテレワークや在宅勤務が増え、働く場所が多様化している様子が見て取れた。コロナ禍の労働環境の変化を経て、就業者一人ひとりの労働観は大きく揺さぶられたことだろう。今後、日本国内においても「テレワークを継続したい」、「副業・兼業をしたい」、「地方や郊外に移住したい」といった多様な働き方を志向する動きも一定程度進むと考えられる。

他方で、就労先として「日本」や「日本企業」を選択する割合は、2019年調査時よりも低下している傾向が確認された。とりわけ、タイ、ベトナム、台湾において低下していた。深刻な少子化・労働力不足を背景に、外国人材への期待が寄せられる日本にとって憂慮すべき結果と言えよう。個人の働き方や価値観の多様化が進む中、現状のままでは優秀な外国人材の獲得はますます困難を極めることが予想される。

多様な人材が活躍しやすい労働環境や企業風土を整備することは、外国人材のみならず労働観の多様化が進む日本の就労者一人ひとりにとっても、職業生活のWell-beingを向上させることにつながると考える。2022年は日本の人的資本情報の開示元年とも言われるが、付加価値を生み出す源泉(資本)としての就労者が、働くことを通じて喜びや楽しみを感じ、公正な評価と魅力的な処遇が得られる社会(Well-being society)を実現すべく日本の雇用組織は変革を求められている。このためにも社内や国内の調査だけでなく、世界から見た現在の日本の就労実態にも向き合い、今後の組織変革の観点を模索することは意義があると考える。本調査がその一助となれば幸いである。

 
調査概要
調査名パーソル総合研究所 「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」
調査内容世界18ヵ国・地域の主要都市の人々の働く実態や働く意識、Well-being、働くことを通じた成長、グローバルな就業意向などを明らかにする。また、コロナ禍の影響による働く実態や意識の変化についても把握する。
調査対象18ヵ国・地域(調査都市)
【東アジア】日本(東京、大阪、愛知)、中国(北京、上海、広州)、韓国(ソウル)、台湾(台北)、香港
【東南アジア】タイ(グレーターバンコク)、フィリピン(メトロマニラ)、インドネシア(グレータージャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミンシティ)
【南アジア】インド(デリー、ムンバイ)
【オセアニア】オーストラリア(シドニー、メルボルン、キャンベラ)
【北米】アメリカ(ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス)
【ヨーロッパ】イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン、ミュンヘン、ハンブルグ)、フランス(パリ)、スウェーデン(ストックホルム)
調査時期
2022年2月10日-3月14日
 
調査方法
調査モニターを対象としたインターネット定量調査
 
サンプル数
各国・地域 約1,000サンプル
 
割付
性・年齢による均等割付、収入による緩やかな割付(ソフトクォータ)
 
対象条件
・20~69歳男女
・就業している人(休職中除く)
・対象国に3年以上在住
 
実施主体株式会社パーソル総合研究所
 
 

◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。

(株式会社パーソル総合研究所/11月8日発表・同社プレスリリースより転載)

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