フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021(連合調べ)
「この1年間にフリーランスの仕事で トラブルを経験した」39.7%
経験したトラブルTOP3 「報酬の支払いの遅延」「一方的な仕事内容の変更」 「不当に低い報酬額の決定」
日本労働組合総連合会(略称:連合、所在地:東京都千代田区、会長:芳野 友子)は、フリーランスの声をあつめて「誰しもがもっと働きやすい環境」「ひとりひとりがもっと自由に輝ける社会」をめざす取り組みの一つとして、フリーランスで働く人の疑問や困りごとの解決をサポートするためのウェブサイト『Wor-Q(ワーク)』を運営しています。
この度、フリーランスとして働く人の意識と実態を把握するため、「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021」を2021年10月1日~10月5日の5日間でインターネットリサーチにより実施し、全国の20歳~59歳の男女でフリーランスとして働く人1,000名の有効サンプルを集計しました(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)。
[調査結果(一部抜粋)]
≪フリーランスとして働く人の仕事の実態≫
◆主要な取引先事業者からの書面による契約内容明示状況 「必ず明示がある」は29.9%にとどまる
◆主要な取引先から受ける仕事の報酬額の決め方
「双方で協議して決める」56.5%、「取引先が一方的に決める」34.2%
次に、全回答者(1,000名)に、主要な取引先事業者からは書面(メールを含む)による契約内容の明示があるか聞いたところ、「必ず明示がある」は29.9%、「明示がない時もある」は45.5%、「明示があったことはない」は24.6%となりました。契約関係が曖昧なまま業務が進行しているケースが大半を占めており、取引先事業者とフリーランスの間で認識の齟齬やトラブルが発生しやすい状況となっていることが懸念されます。
仕事内容別にみると、IT関連とコミュニケーション関連では「必ず明示がある」(順に47.3%、45.2%)が最も高くなり、営業・販売関連とものづくり・ものはこび関連では「明示があったことはない」(40.0%、38.5%)が最も高くなりました。
また、主要な取引先との仕事はどのように報酬額が決まることが多いか聞いたところ、「取引先と自分の双方で協議し決める」が56.5%で多数派となった一方、「自分が一方的に決める」が8.3%、「取引先が一方的に決める」が34.2%と、協議によらず決まっているケースも少なくないことがわかりました。
◆「この1年間にフリーランスの仕事でトラブルを経験した」39.7%
◆経験したトラブルTOP3 「報酬の支払いの遅延」「一方的な仕事内容の変更」「不当に低い報酬額の決定」
続いて、全回答者(1,000名)に、この1年間にフリーランスの仕事でトラブルを経験したか聞いたところ、「経験した」は39.7%、「経験しなかった」は60.3%となりました。契約関係の曖昧さもトラブル遭遇率の高さの一因となっているのではないでしょうか。
仕事内容別にみると、トラブルを経験した人の割合は、クリエイティブ関連(47.4%)とコミュニケーション関連(47.6%)では半数近くとなりました。
この1年間にフリーランスの仕事でトラブルを経験した人(397名)に、経験したトラブルの内容を聞いたところ、「報酬の支払いの遅延」と「一方的な仕事内容の変更」(いずれも29.5%)が高く、「不当に低い報酬額の決定」(26.4%)、「一方的な継続案件の打ち切り」(25.7%)、「報酬の不払い・過少払い」(23.4%)が続きました。報酬をめぐるトラブルに遭遇している人が多いようです。また、「納期や技術的になど無理な注文」(22.4%)や「作業開始前の一方的な仕事の取消し」(20.9%)、「一方的な報酬額の引き下げ」(20.2%)などが挙がり、フリーランスとして働く人のトラブルでの苦境や弱い立場に置かれている現実が浮き彫りとなりました。曖昧な契約関係のもとで働くフリーランスを保護するため、契約の締結や契約内容の明示、適正な報酬の支払い、契約内容の変更・終了などに関する法整備が急務ではないでしょうか。そのほか、「不当な修正・やり直しの要求」(18.9%)や「納期の急な前倒し」(13.6%)といったトラブルに遭遇している人もみられました。
≪フリーランスとしての働き方の満足度≫
◆フリーランスとしての働き方の満足度 「仕事全体」「仕事内容・質」「就業時間」は5割超が満足と回答、「働きがい」「働きやすさ」「プライベートとの両立」は6割超が満足も、「収入」に対しては僅か2割にとどまる
全回答者(1,000名)に、フリーランスとしての働き方について、どのくらい満足しているか聞いたところ、【仕事全体的に】では「非常に満足している」が13.3%、「やや満足している」が38.1%で、合計した『満足している(計)』は51.4%、「全く満足していない」が4.3%、「あまり満足していない」が10.1%で、合計した『満足していない(計)』は14.4%となりました。
仕事内容別にみると、満足している人の割合は、暮らし・学び関連(62.1%)とコミュニケーション関連(64.3%)では6割超となった一方、ものづくり・ものはこび関連(38.5%)では4割未満にとどまりました。仕事内容により、フリーランスとしての働き方の満足度に格差が生じている実態が明らかとなりました。
コミュニティへの参加状況別にみると、満足している人の割合は、コミュニティへ参加している人では60.6%、コミュニティへ参加していない人では49.2%と、参加している人ほど仕事全体の満足度が高くなりました。フリーランスのコミュニティの有用性が見て取れる結果となりました。
【仕事内容・質】では『満足している(計)』は53.6%、【就業時間】では『満足している(計)』は55.4%と半数を超えたのに対し、【収入】では『満足している(計)』は20.9%と2割にとどまりました。フリーランスとして働く人の収入満足度は低いことがわかりました。
また、【働きがい・やりがい】では『満足している(計)』は61.6%、【働きやすさ】では『満足している(計)』は67.5%、【プライベートとの両立】では『満足している(計)』は65.3%と、いずれも6割を超えました。フリーランスとして働く中で、働きがいや働きやすさ、ワークライフバランスに満足感を抱いている人は多いようです。
◆フリーランスがより働きやすくなるために必要だと思うことTOP4
「フリーランスが利用できる福利厚生」「所得が補償される制度・仕組み」
「雇用保険のような制度・仕組み」「フリーランスが団体扱いで加入できる共済・保険」
全回答者(1,000名)に、フリーランスがより働きやすくなるために必要だと思うことを聞いたところ、「フリーランスが利用できる福利厚生」(43.6%)が最も高くなり、「所得が補償される制度・仕組み(病気やケガで働けなくなった際の所得補償)」(35.7%)、「雇用保険のような制度・仕組み(失業中の生活の安定を図るための仕組み)」(32.9%)、「フリーランスが団体扱いで加入できる共済・保険」(29.7%)、「確定申告に役立つ情報の提供」(19.3%)が続きました。
男女・世代別にみると、20代女性では「フリーランスの妊娠・出産・育児に対する制度(給付金や休暇等)」(36.8%)が約4割となりました。
コロナ禍で日本のセーフティネットの脆弱性がより顕在化しました。フリーランスとして働く多くの人が安心して働き続けることができる環境の整備のために、法的保護の拡充やセーフティネットの機能強化が喫緊の課題ではないでしょうか。
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(日本労働組合総連合会/11月18日発表・同会プレスリリースより転載)