『日本企業の経営課題2021』調査結果速報
【第6弾】コーポレートガバナンス
ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的な回答が9割ガバナンスコードの効果:「ステークホルダーとの協働」「サステナビリティへの対応」が進む
一般社団法人日本能率協会(会長:中村正己、JMA)は、企業が抱える経営課題を明らかにし、これからの経営指針となるテーマや施策の方向性を探ることを目的に、1979年から、企業経営者を対象に、「当面する企業経営課題に関する調査」を実施しています。今年は2021年7~8月に実施し、517社からの回答を得ました。
今回は第6弾として、コーポレートガバナンスに関連する調査結果をご報告します。なお、KAIKA研究所所長の近田による「調査結果を受けてのコメント」(本調査のまとめ)を最後に掲載しています。
■トピックス
- ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的な回答が9割
大企業では「既に一般的に広がっている」との回答が21.3%と高め - コーポレートガバナンスコードへの対応がもたらす中長期的な企業価値向上への効果:「ステークホルダーとの協働」「サステナビリティへの対応」が「機能している」との回答が7割超
「人的資本投資についての情報開示」「取締役のスキル・マトリックスの開示」は5割未満
■「2021年度(第42回)当面する企業経営課題に関する調査」概要
調査時期 :2021年7月20日~8月20日
調査対象 :JMAの法人会員ならびに評議員会社、およびサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,000社)
調査方法 :郵送調査法(質問票を郵送配布し、郵送およびインターネットにより回答)
回答数・回収率:回答数517社・回答率10.3%
■調査結果
1.ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的な回答が9割
大企業では「既に一般的に広がっている」との回答が21.3%と高め
・2019年8月に米国の経営者団体が、株主第一主義を見直し、多様なステークホルダーの利益を尊重した経営に取り組むという声明を発表したことを踏まえ、こうしたステークホルダー資本主義の考え方が、日本の産業界でも、今後、広がるかどうかを尋ねたところ、「既に一般的に広がっている」との回答が13.2%、「広がっていく」が47.4%、「ある程度、広がっていく」が29.4%ととなり、合わせると、ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的なの回答が90.0%に達する結果となりました。
・従業員規模別にみると、「既に一般的に広がっている」「広がっていく」「ある程度、広がっていく」の合計が、大企業では94.2%、中堅企業では90.7%、中小企業では84.7%となっており、規模に関わらず、ステークホルダー資本主義の考え方の広がりに肯定的な回答が大半を占めています。特に、大企業では、「既に一般的に広がっている」との回答が21.3%と高めになっており、多様なステークホルダーを尊重する意識が広がっていることがうかがえます。
2.コーポレートガバナンスコードへの対応がもたらす中長期的な企業価値向上への効果:「ステークホルダーとの協働」「サステナビリティへの対応」が「機能している」との回答が7割超。「人的資本投資についての情報開示」「取締役のスキル・マトリックスの開示」は5割未満
・本調査の回答企業のうち、上場企業(261社・全体の50.5%)に対して、コーポレートガバナンスコードへの対応が、中長期的な企業価値の向上の観点から効果的に機能しているかを尋ねたところ、「機能している」との回答(十分に ~ ある程度 の合計)が、「様々なステークホルダーとの協働に関する行動準則の策定・実践」で71.6%、「社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への対応」で70.1%となり、7割を超える結果となりました。
・一方で、「人的資本への投資等についての情報開示」では44.1%、「各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したスキル・マトリックスの開示」では43.3%となり、いずれも5割未満という結果でした。
・全般的に、「ある程度機能している」の比率が高くなっており、コーポレートガバナンスコードの本来の目的である企業価値向上に結び付けていくうえでは、まだまだ課題があることがうかがえます。
■調査結果を受けてのコメント 一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田高志
・今回は、日本能率協会が毎年実施している「経営課題調査」の2021年度の調査結果速報の第6弾として、コーポレートがバンスに関連する調査結果をご紹介しています。
・ステークホルダー資本主義の考え方については、日本には、もともと「三方よし」の考え方があるとの指摘がありますが、今回の調査にも、このような多様なステークホルダーを尊重するという考え方が根差しているということが表れていると言えるでしょう。
・一方で、コーポレートガバナンスコードへの対応を中長期的な企業価値向上に結び付けていくことについては、まだまだ課題があるという現状が見られています。多様なステークホルダーを大切にするという理念を大切にしながらも、ステークホルダーとのコミュニケーションを強化し、透明性を高め、説明責任を果たしていくことが、一層重要であると考えます。
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(一般社団法人日本能率協会 /10月13日発表・同法人プレスリリースより転載)