潜在保育士の6割が保育士としての就労を希望。働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を最も重視~「保育士の就労に関するアンケート調査」結果報告:野村総合研究所
株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:此本 臣吾、以下「NRI」)は、全国の保育士資格を持つ女性7,210人に対して、保育士としての就労状況や就労意向に関するアンケート調査を実施しました。
調査の結果、保育士資格を保有しているが現在保育士として働いていない人(以下、「潜在保育士」)の過半数が、職種を問わず調査時点では働いておらず(以下、「非就労」)、その多くが今後保育士として働く意欲を持っていることが分かりました。また、保育士として就労意欲を持つ非就労の潜在保育士の多くが、「金銭的報酬の高さ」ではなく、「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方で働き始められること」を、保育士として働き始める上で最も重視していることが分かりました。
保育士の確保に向けては、「潜在保育士が希望に合った働き方で働き始められる職場環境」を具体的に検討することが有効であると考えます。
主な調査結果は、以下の通りです。
1.67.1%の資格保有者が潜在保育士で、そのうち過半数が非就労
本調査に回答した保育士資格保有者のうち、32.9%が現在保育士として就労していた。29.5%は保育士以外の職種で就労しており、37.6%が非就労であった。
回答者のおよそ3人に2人(67.1%)が、保育士資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士であり、その過半数(56.1%)は働いていない。
2.非就労の潜在保育士のうち、60.5%が「今後保育士として働いてみたい」
現在非就労の潜在保育士のうち、「今もこの先も保育士として働きたいとは思わない」と回答した人は20.3%にとどまり、60.5%が「今後保育士として働いてみたい」と回答した。今後保育士として働いてみたいと考える理由として最も多かったのが、「子どもと接することが好きだから(72.5%)」、次いで「子どもと関わる仕事がしたいから(55.2%)」であった(複数回答)。
現在は保育士として働いていない潜在保育士であっても、子どもに関わる仕事に強い関心を持っている様子がうかがえる。
3.就労意欲を持つ非就労の保育士の3人に2人は、働く上で「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方」を特に重視
保育士として就労意欲を持つ非就労の潜在保育士において、保育士として働き始める上で「金銭的報酬(給与・賞与や手当など)が高いこと」以外を最も重視すると回答した人の割合は64.9%であった。そのうち過半数(54.2%)が、「勤務時間や勤務日など希望に合った働き方で働き始められること」を最も重視している。内訳を見ると、「1日あたり短い時間から働けること(22.3%)」、「土日祝日が完全に休みであること(16.8%)」が上位であり、保育士として多様な働き方で働くことができる就労環境を整えていくことが、保育士確保の鍵を握ると推察される。
4.保育士の就業形態の多様化と、働き方の多様な保育士を活用できる保育現場のあり方について、検討が望まれる
今後、保育士の確保策を検討する上では、現在非就労の潜在保育士の中に「希望する働き方で働き始められるなら保育士として働いてみたい」とする人が多いことに着目する必要がある。そのような潜在保育士の保育士就労を促すため、例えば「短時間勤務保育士」など保育士の就業形態のさらなる多様化や具体化を図るとともに、そうした働き方の多様な保育士を活用できる保育現場の実現が望まれる。
また、保育所運営事業者や保育現場が、人手不足の解消や既存職員の就労環境改善、ひいては保育の質のさらなる向上を目的として、働き方の多様な保育士の活用に前向きになれるような環境整備も期待される。
5.就労意欲の高い非就労の保育士5.6万人の就労が実現すれば、16.9万人の子どもの保育の受け皿確保につながる
調査結果を基に、保育士として就労意欲の高い現在非就労の潜在保育士※1の数を推計した結果、全国で約5.6万人いるとみられる※2。その5.6万人の保育士就労が実現した場合、それぞれが1日あたり短時間で働くことを加味しても、約16.9万人の子どもの保育の受け皿確保につながる※3。
深刻な保育士不足を踏まえ、様々な対策が展開されている中、保育士の就業形態の多様化を進め、働き方の多様な保育士を活用できる保育現場を増やしていくことが、多くの潜在保育士の保育士就労を促し、結果として充実した保育の受け皿確保につながる。
※1「条件等が合えば、今すぐにでも保育士として就労してみたい」と考える現在非就労の保育士資格保有者を指す。
※2現在の保育士資格保有者数が、厚生労働省が発表している保育士登録者数(平成25年)の118.6万人と同程度と仮定して推計した。
※3厚生労働省「保育士確保プラン」(平成27年1月14日発表)において公表されている「新たに必要となる保育士の数」などから、保育士1人を配置することにより新たに整備できる保育の受け皿量(平均)を推計。さらに、潜在保育士の多くが希望に合った働き方を希望していることを踏まえ、保育士1人を配置することにより新たに整備できる保育の受け皿量を従来の1/2として算出した。
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株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 十河、水谷
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E-mail:kouhou@nri.co.jp
本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社野村総合研究所 http://www.nri.com/jp//10月3日発表・同社プレスリリースより転載)