働き方、まだ遠い改革。「できるだけ短時間で働きたい」が7割、でも恒常化する残業~全国意識調査から見える理想と現実:インテージリサーチ
株式会社インテージリサーチ(本社:東京都東久留米市、代表取締役社長:井上孝志)は、自主企画調査 「働き方に関する意識調査」を実施しました。全国の20~69歳の職に就く男女6467人を対象にしたインターネット調査で、働き方の意識を聞いたものです。
<調査結果のポイント>
1.「働き方改革」という言葉を「聞いたことがある」と回答した人は、91.8%でした。昨年度の調査結果を大幅に上回り、この一年で認知度が非常に高まったことがわかります
2.しかし、働き方改革について「自社で取り組みがされている」と回答した人は12.1%にとどまりました。「この一年で変化があった」とする取り組みのうち、最も多いのは「残業時間が減った」の38.9%。一方、「フレックス勤務」や「在宅勤務」など、政府が推進する取り組みの普及はそれぞれ約10%となっています
3.「理想とする働き方」として、74%が「できるだけ短い時間で働く」と回答しました。1ヵ月の残業時間が50時間以上の人でも、67.8%が「短い時間で働く」ことを希望。「働き方」の理想と現実に、依然として大きな乖離(かいり)があることが明らかになりました
<調査結果の詳細>
「働き方改革」の認知度は9割。昨年度から大幅に増加
20~69歳の職に就く男女に、「働き方改革」という言葉の認知を聞きました。「聞いたことがある」人は全体の91.8%に上り、昨年度の調査結果*における58.4%と比べると、この一年で認知が大幅に進んだことがわかります。
一方、職場での「働き方改革」の状況について、「取り組みがされている」と回答した割合は12.1%。言葉は認知されているものの、具体的な取り組みの実施は一部にとどまっていることがわかりました。
働き方改革に取り組む組織でも、テレワークなどの実施は約10%にとどまる
「働き方改革について、自社で既に取り組みがされている」と回答した人(12.1%)のうち、「この一年で感じた変化」として最も多く挙がったのは「残業時間が減った」の38.9%と、4割近くとなっています。
一方、「フレックス勤務など、勤務時間が調整できるようになった」「在宅勤務など、働く場所が調整できるようになった」は、それぞれ1割前後。政府は改革の一環として、柔軟な働き方が可能なテレワークの推進を掲げています。しかし、従業員の実感として、勤務制度に関わる取り組みは、まだ十分に行われていないのではないかといえます。
「早く帰りたい。でも…」残業が恒常化している現状
「36協定」で定められている残業時間は「原則月45時間、年360時間まで」。特別な事情などで、上限残業時間を超えて働かざるを得ない場合でも、認められるのは年間で最大6カ月と決められています。
しかし、普段の残業時間の分布を見ると、月50時間以上働いている人は全体の6%。特に40歳代男性では12.3%に上り、およそ10人に1人が高い頻度で、月50時間以上も残業している様子がうかがえます。
一方、「理想とする働き方」として、「できるだけ短い時間で働きたい」と答えた人はいずれの年代でも7割以上。一カ月当たりの残業時間が50時間以上の人であっても、6割に上ります。このことから、「早く帰りたい」という思いを抱えながらも、残業せざるを得ない状況にある人がいまだ多い現状が見えてきました。
*2017年3月に実施した自主企画調査と比較
ただし、17年調査と18年調査で、回答の選択肢の構成を変更している。17年調査では「聞いたことある/聞いたことはない」の二択で聴取。18年調査では、「聞いたことある/聞いたことはない」の分類を提示した上で、「聞いたことがある」場合、以下のうち当てはまる選択肢を回答する方式で聴収した。18年調査において、「聞いたことがある・計」は以下を合算した数値を用いている。
「18年調査における『聞いたことがある』に該当する選択肢」
新聞やテレビで見聞きする程度/具体的に他社で取り組んでいるという話を聞いたことがある(自社では取り組んでいない)/今後自社で取り組みがされようとしている(自分は直接推進の担当者ではない)/自社で既に取り組みがされている(自分は直接推進の担当者ではない)/今後自社で取り組みがされようとしている(自分は直接推進する担当である)/自社で既に取り組みがされている(自分は直接推進する担当である)
<考察>
「一億総活躍社会の実現」に向け、「働き方改革」が提唱され始めてから、一年以上が経ちます。今回の意識調査で言葉の認知度は9割を超えましたが、具体的な取り組みの浸透が進んでいるとは言い難い現実が明らかになりました。
「職場で具体的な取り組みがされている」と回答した人は12.1%にとどまり、いまだ改革への道のりは遠いと言えます。「この一年で変化があった」とする取り組みのうち、「残業時間の削減」が最も高い38.9%。「働く時間、場所を調整できるようになった」は約10%でした。政府はテレワークなどの推進を掲げていますが、勤務制度を含めた改革はあまり進んでいない現状がうかがえます。
さらに、残業の実態からは厳しい現状が見えてきます。「36協定」で一カ月当たりの残業時間の限度は原則45時間と規定されているものの、「普段の残業時間が月50時間以上」と回答した人が全体の5.9%。40歳代男性では12.3%に上ります。性・年代や普段の残業時間の長さに関わらず、「より短い時間で働く」ことを理想とする人が約7割と大半を占める中、残業せざるを得ない状況は依然として変わっていません。働き方の理想と現実の乖離をどう埋めるか。今後、より内実を伴った改革が求められると言えそうです。
分析者: 中田 絢子 (公共サービス事業部 ソーシャル事業推進部)
<調査概要>
調査方法:インターネット調査
調査地域:全国
調査対象者:インテージ・ネットモニター 全国16歳以上79歳までの男女個人
サンプル構成:平成27年国勢調査ベース(性別×年代別×居住エリア×未既婚)母集団準拠
設計数10000サンプル(うち、20~69歳の有職男女個人のデータ(6467サンプル)を使用して分析)
調査期間:2018年3月23日(金)~3月26日(月)
調査内容:普段の労働時間、働き方に関する意識
調査実施機関:株式会社インテージリサーチ
◆本リリースの詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。
(株式会社インテージリサーチ http://www.intage-research.co.jp/ /5月31日発表・同社プレスリリースより転載)